1988年。邦題「ラッキー・ラブ」。キーボードとエレクトロニクスを中心に制作されたポップス。オープニング曲の「ラッキー・ラブ」は覚えやすいメロディーで、「ロコモーション」はリトル・エヴァのカバーなので、売れる要素が大きい。リズムも軽やかだ。「恋は焦らず」収録。10曲で35分半。
1989年。アップテンポな曲ばかりでなく、ミドルテンポの曲も含まれる。曲の幅が広がっているが、作曲しているのはプロデューサーの3人。「いつわりのハート」「ドリーミング」など、ボーカルから始まる曲が4曲ある。10曲で33分。
1990年。11曲のうち4曲をカイリー・ミノーグが作曲。「ラッキー・ラブ」のようなアップテンポの曲が中心。「ステップ・バック・イン・タイム」はアメリカらしいイントロ。「シークレット」はギターソロ、「時は止まらず」はサックスソロが入る。「ショック!」はワイルドチェリーの「プレイ・ザット・ファンキー・ミュージック」を思い起こさせるが、ほかにも同様の曲があり、上の世代の聞き手を開拓する意図が読み取れる。
1991年。邦題「あなたも、M?」。ホーン・セクションとパーカッション、コーラスが多い。本物のホーン・セクションが使われるのはオープニング曲の「ワード・イズ・アウト」だけのようだ。「さよならの行方」は初のデュエット曲。「ギヴ・ミー・ジャスト・ア・リトル・モア・タイム」はチェアメン・オブ・ザ・ボードのカバー。「貴方なしでは…」はアコースティック・ギターだけで演奏される。「アイ・ライク・イット」はエレクトロ・ダンスで、カイリー・ミノーグとしては長い6分。
1991年。日本盤はジャケット違い。
1992年。ベスト盤。「ホワット・カインド・オブ・フール」「ウェアー・イン・ザ・ワールド?」は新曲。「セレブレーション」はクール&ザ・ギャングのカバー。「ホワット・カインド・オブ・フール」はアップテンポのポップな曲。「ウェアー・イン・ザ・ワールド?」はアバのようなメロディアスな曲。
1994年。オープニング曲からこれまでと趣向が大きく変わっている。3曲目までヒップホップのざらついたビートを引きずる。「ホエア・イズ・ザ・フィーリング」は前作までのポップな曲。アップテンポにしろミドルテンポにしろ、メロディーを作るサウンドが抑え気味になっている。ボーカルの表現の幅は広がっている。ボーカルの表現力のためには、サウンドの変化が必要だったとも言える。
1997年。邦題「インポッシブル・プリンセス」。ロックとダンスとポップスが比較的明快に分かれており、ロックが新たなサウンドとして入ってきた。「サム・カインド・オブ・ブリス」と「アイ・ドント・ニード・エニワン」はマニック・ストリート・プリーチャーズのメンバーがプロデュースしており、サウンドがロックになっている。前作の雰囲気を引き継いだ曲もあり、連続性が保たれている。
2000年。全編がポップス、ダンス、ディスコで、80年代に戻ったようなサウンドだ。エレクトロニクスとキーボードがほとんどだった80年代に比べ、楽器のイメージが明確なサウンドが多い。「ユア・ディスコ・ニーズ・ユー」はジンギスカンやヴィレッジ・ピープルのようなミュンヘン・ディスコ。
2001年。ほとんどがエレクトロニクス、キーボードによるサウンド。前作が20世紀のディスコの総括、このアルバムが21世紀のクラブ・ミュージックの本流として提示されている。「ダンスフロア」は70年代ディスコ風。「熱く胸を焦がして」は世界的にヒット。メロディーは抑え気味で、ビートが強調されている。
2003年。声をはっきり出して歌うのではなく、抑えるような、あるいはささやくような歌い方だ。ボーカルに関して最も大きな変化になった。表現の幅を広げたといえるが、全曲をそのような歌い方にする必要はなかったのではないか。「シークレット(テイク・ユー・ホーム)」「レッド・ブラッディッド・ウーマン」はヒップホップのサウンドが使われる。
2007年。最新のエレクトロ・ポップスになっており、曲の良さはデビュー当初に並ぶだろう。歌い方も以前に戻り、若い聞き手に訴えるサウンドだ。オープニング曲の「2・ハーツ」はバンドのようなサウンド。「イン・マイ・アームズ」「ノー・モア・レイン」はエレクトロ・ロックにいいメロディーが乗っている。「ハート・ビート・ロック」は「ワウ」はニューレイヴ風。
2010年。アップテンポの曲が多く、メロディーが若い。エレクトロ・ポップとロックがほとんど境目がなくなっている時代のサウンドだ。曲調がロックやロックンロールそのままの曲もある。前作からの高品質なポップスが維持されており、第2の全盛期を迎えている。
2011年。ライブ盤。