KREATOR

  • ドイツのスラッシュメタルバンド。デストラクション、ソドムとともに、80年代から活動する代表的なドイツのスラッシュメタルバンド。
  • 中心人物はボーカル兼ギターのミレ・ペトロッツァ。
  • 80年代は剛直なスラッシュメタル、90年代は「リニューアル」「エンドラマ」などでオルタナティブ風になり、2000年代以降は再びスラッシュメタルとなった。2000年代後半は世界的にヒットするようになっている。
  • 代表作は「エクストリーム・アグレッション」「ホーデス・オブ・ケイオス」。

1
ENDLESS PAIN

1985年。ボーカル兼ギターを含む3人編成。西ドイツ出身。ソドム、ディストラクションと並び、ドイツのスラッシュ・メタル・バンドでは早くから活動している。中心はボーカル兼ギターのミレ・ペトロッツァ。ヴェノムのようなサウンドで、当時はロックの中で最もハードな音楽だった。すべての曲が突進する。このころ、メタリカは「ライド・ザ・ライトニング」を出していたが「メタル・マスター」はまだ出ていなかった。スレイヤーは「ヘル・アウェイツ」を出したころで、「エンジェル・オブ・デス」が収録された「レイン・イン・ブラッド」は出ていない。

2
PLEASURE TO KILL

1986年。ギターが加入し4人編成。このアルバムではミレ・ペトロッツァがすべてのギターを弾いている。曲によっては2本のギターが交互にソロをとることもあり、2人いないと再現できない。前作と同路線。1曲目はイントロがついている。6分を超える曲があるが、ハードさは他の曲と変わらない。日本盤は1991年発売。

 
FLAG OF HATE

1986年。シングル盤。3曲入っているが、6分と7分の曲があり、編曲能力が上がっている。「アウェイクニング・オブ・ザ・ゴッズ」のイントロはスラッシュ・メタルというよりはヘビーメタルに近い。日本盤は「プレジャー・トゥ・キル」に同時収録。

3
TERRIBLE CERTAINTY

1987年。ギターの音の切れ、ドラムの音の粒立ちが明瞭になり、ボーカルも演奏も大きく飛躍した。西ドイツのスラッシュ・メタルの頂点に立ったといえる。メタリカの「メタル・マスター」がヒットしたことにより、スラッシュ・メタルが世界的に注目されて以降、同系統のバンドが多数デビューした。その中では実力が上位にあったバンド。この年はハロウィンが「守護神伝・第一章」を出したこともあり、西ドイツのヘビーメタルそのものが成長した年でもあった。日本盤は1991年発売。

 
OUT OF THE DARK...INTO THE LIGHT

1988年。新曲1曲、レイヴンのカバー、ライブ3曲のミニ・アルバム。アナログ盤は以上の5曲収録、CDは「フラッグ・オブ・ヘイト」のライブ、スタジオ録音2曲を追加収録。スタジオ録音はアルバム収録曲と同じ。日本盤は「テリブル・サートゥンティ」に同時収録。

4
EXTREME AGGRESSION

1989年。レコード会社が変わり、音質が向上した。スラッシュ・メタルが最も盛り上がった時期だったので予算も割かれている。スレイヤーに近いサウンドで、「ビトレイヤー」は当時の代表曲として認識された。「ファタル・エナジー」はメロディアスなギター・ソロを取り入れている。そのほかの曲は典型的なスラッシュ・メタル。このアルバムで日本デビュー。

5
COMA OF SOULS

1990年。ギターが交代。メロディアスなギターが多くなり、典型的なスラッシュ・メタルの曲は減っている。全体としてはヘビーメタルに近いスラッシュ・メタルであることに変わりはなく、ハードなサウンドを求めるヘビーメタル・ファンから支持を得た。ジャケットは中世の画家、ボッスを意識していると思われる。

6
RENEWAL

1992年。曲のテンポが遅くなり、メロディアスになった。ボーカルも明らかにメロディーを歌っており、サウンドの方向転換を試みている。ただちにスラッシュ・メタルだとは言えない音。メタリカが「METALLICA」を出し、ニルヴァーナが「ネヴァーマインド」をヒットさせたことに伴い、スラッシュ・メタルが時代遅れの音楽になっていたため、クリーターも独自の路線を模索した。5分台が2曲、6分台が2曲ある。

7
CAUSE FOR CONFLICT

1995年。ベースとドラムが交代。「コーマ・オブ・ソウルズ」の路線に戻り、曲も短くなった。「ステイト・オプレッション」はパンクのカバー。

 
SCENARIOS OF VIOLENCE

1996年。ベスト盤。「リニューアル」までのアルバムから選曲され、時代が近づくにつれ選曲数が増えている。「リッピング・コープス」と「トーメンター」はライブ。「スーサイド・イン・スワンプス」と「リミッツ・オブ・リバティー」は新曲。

8
OUTCAST

1997年。ギターとドラムが交代。ドラムは「リニューアル」以前にメンバーだった人。「リニューアル」のような曲からスラッシュ・メタルまで、タイプの異なる曲が入る。もはやスラッシュ・メタルそのものが時代遅れとなっているので、ハードな音を出すヘビーメタルになるだろう。「フォビィア」はすばらしい出来。「フォエヴァー」はブラック・サバスのようなサウンド。全体の出来もこれまでで最もよい。

9
ENDORAMA

1999年。「リニューアル」以来のメロディアスなサウンド。キーボードも取り入れ、ボーカルはメロディーを追うように歌う。ギターやドラムは音を詰め込まない。「リニューアル」よりも個別の曲がやや短いので、コンパクトにまとまっている。ボーカルの表現力も上がった。「パンデモニウム」は「アウトキャスト」収録曲の「フォビィア」をメロディアスにしたような曲。ジューダス・プリーストを思わせるギターのメロディーもあり、ヘビーメタルから遠ざかったわけではない。

10
VIOLENT REVOLUTION

2001年。ギターが交代。「コーズ・フォー・コンフリクト」のようながなり立てるボーカルで、ギターはメロディアス。ドラムはスラッシュ・メタルだったころのように高速で演奏する。バスドラムを踏む回数が多いだけでスピーディーな曲ばかりではない。80年代のスラッシュ・メタルと比べれば、ギターのメロディーが豊富になり、それが曲の起伏につながっている。

LIVE KREATION

2003年。ライブ盤。

11
ENEMY OF GOD

2005年。スレイヤー並みのサウンドで全編を貫き、これまでのアルバムで最もハード。最後の「アンダー・ア・トータル・ブラックンド・スカイ」はアイアン・メイデンのような構成を持つ曲。サウンドはあくまでもクリーターで、クリーターの個性の完成形がある。「マーダー・ファンタジー」でアーク・エネミーのマイケル・アモットが参加。

12
HORDES OF CHAOS

2009年。前作の路線。オープニング曲は序曲のような前奏があり、最後の曲にも序曲がある。最後の曲は序曲を含めると6分あるが、アルバム全体としては10曲で38分。「ウォーカース」はスレイヤーの「ウォー・アンサンブル」を思い出す。20年前のスレイヤーのサウンドと似ているが、ギターの切れ、曲の構成力は勝っている。

13
PHANTOM ANTICHRIST

2012年。2010年代のヘビーメタルでは、クリーターのサウンドはハードであることに変わりないものの、驚くほどのサウンドではなくなっている。2010年代の分類で言えばスラッシュメタルに近いパワーメタルか。少なくともスラッシュメタルの前のめりな勢いよりは、整合性のあるバンド演奏を聞かせようとしている。ジャケットは黙示録に出てくる4騎士をモチーフにしている。

14
GODS OF VIOLENCE

2017年。前作と基本的なサウンドは変わらないが、迫力や勢いよりもメロディーで組み立てる曲が多い。それほど目立たないがオーケストラも使っている。「ヘイル・トゥ・ザ・ホーズ」はアイルランド風のメロディーを取り入れる。4分、5分台が続き、最後の「デス・ビカムズ・マイ・ライト」だけが7分台。2000年代に入り、「ヴァイオレント・クリエイション」でスラッシュメタルに回帰したのは新しい領域に踏み込まないことの宣言であり、このアルバムでオーケストラを使ったりメロディーを重視したりするのもその流れの中にある。保守志向はしばらく続くだろう。