KORN

KORN(コーン)は90年代以降のオルタナティブ・ロック、ラウドロック、ニューメタルの代表的なバンド。ボーカルのジョナサン・デイヴィスが中心。ギター2人の5人編成。アメリカ出身。アメリカでは「ライフ・イス・ピーチィ」、世界では「フォロウ・ザ・リーダー」からヒットしている。80年代のヘビーメタルの主流とは異なり、苦悩、疎外、心的外傷といった内面を描くことが多い。ファンク、ヒップホップに影響を受けている。

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KORN

1994年。ギター2人の5人編成。アメリカ・カリフォルニア州出身。ニューメタルの代表的アルバム、かつニューメタルを新しいジャンルとして認知させたアルバム。多様なアーティストを含むオルタナティブ・ロックの、主要なアーティストと認識されることになった。演奏は低音中心で、それほど目立ったメロディーを演奏するわけではない。ボーカルのジョナサン・デイビスはいわゆるラウド・ロックでよく使われる咆哮型の声とそうでない声を使う。この咆哮型でない声が、普通の歌唱のための声ではなく、精神的に高揚したまま独白しているような声。その声が徐々に、あるいはフレーズの節目に咆哮型に切り替わる。ギターやキーボードなどでは、階段のように音階の境目を作らず坂道のように低音から高音まで音程を上げ、それによって聞き手の高揚を生み出す手法がある。KORNはこれをボーカルで、エネルギーを大きく放出しながら行っている。このアルバムは、健全な青年像との乖離に苦しむ90年代の若年層から大きな支持を得た。80年代はピューリタニズムの理想を反映したメディアが、媒体を通じてあるべき青年像や家族像を流布したが、そのような像からかけ離れた人々はなきものとして扱われてきた。社会的威信に不足がない自己肯定的な青年という理想像は、80年代共和党の「強いアメリカ」の流布を反映していたが、それを虚像として批判したのが90年代前半のニルヴァーナであり、90年代後半のKORNをはじめとするオルタナティブロックだったと言える。バグパイプを使用。全米72位、200万枚。

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LIFE IS PEACHY

1996年。前作よりも音楽面で充実している。キーボードやバグパイプを使うことなく、ほとんどの曲がラウドロック。「ウィキッド」はアイス・キューブの、「ロウライダー」はウォーのカバー。全米3位、200万枚。

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FOLLOW THE LEADER

1998年。前2作が売れたことによりサウンドがよくなり、一つ一つの効果音やサウンド処理がきれいに響く。アイス・キューブとリンプ・ビズキットのボーカルのフレッド・ダーストが参加しており、曲によってはラップらしいラップが聞ける。ラップの量はかなり多い。最後の曲の次に出てくる隠しトラックはチーチ&チョンのアルバムにも出てくる曲で、アメリカでは有名。全米1位、400万枚。

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ISSUES

1999年。「KORN」と「フォロウ・ザ・リーダー」でも出てきたが、今回はオープニング曲のイントロからバグパイプが出てくる。前作とは変わり、ほとんどの曲に明確な、陰鬱なメロディーがあり、ラップは少なくなっている。ハードさも以前ほどではない。明るくなることはないが、このアルバムが最も親しみやすいと言う人は多いのではないか。日本盤は2枚組で、2枚目には「KORN」のころのアウトテイクやライブ、「ジングル・ベル」などが収録されている。全米1位、200万枚。

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UNTOUCHABLES

2002年。前作からさらにメロディアスになり、キーボードやコーラスも適度に使っている。このアルバムから衝動的なハードさを感じることはあまりなく、デヴィン・タウンゼンドの「テリア」のような静かさの方が先にたつ。ボーカルが交代したのかと思うほど歌い方も変わり、きちんとメロディーを追うように朗々と歌い上げる。デビューしたときからは想像できないようなサウンドになり、最後の曲などは壮大とも言える作風だ。

 
HERE TO STAY

2002年。シングル盤。1曲収録。

 
DID MY TIME

2003年。シングル盤。映画の挿入歌でアルバム未収録曲。メタリカの「ワン」をライブ・バージョンでカバー。

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TAKE A LOOK IN THE MIRROR

2003年。ボーカルのメロディアスさは失わず、全体的にハードになった。「フォロウ・ザ・リーダー」からラップと過剰なサウンド処理を除き、ボーカルとギター中心にしたようなサウンド。コーラスの仕方にも技術が見られる。大物の雰囲気が漂い、ヘビーメタル・ファンになじみやすい。「プレイ・ミー」はナズが参加している。ジョナサン・デイヴィス以外の4人は全員名前を変更。隠しトラックでメタリカの「ワン」をライブでカバー。

GREATEST HITS VOL.1

2004年。ベスト盤。

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SEE YOU ON THE OTHER SIDE

2005年。ギターが1人抜け4人編成。ハードでラウドロック風のサウンドから変わり、メロディアスだ。人工的な音のリズムを若干取り入れ、一般のロックファンにもなじみやすくなった。アルバム全体に漂う陰鬱さや悲壮感、絶望といったイメージは薄い。聞き手に緊張感を持たせないサウンドになったことは大きく、このアルバムで飛躍することは間違いない。

8
 

2007年。邦題「無題」。ドラムは録音に参加せず、テリー・ボジオが6曲、バッド・レリジョンのブルックス・ワッカーマンが4曲、ボーカルのジョナサン・デイヴィスが2曲で演奏している。インダストリアル・ロックのサウンド。「エヴォリューション」「ラヴ・アンド・ラグジュアリー」はヒット性がある。アルバムの後半はハードな曲が多く、最後の「アイ・ウィル・プロテクト・ユー」はテリー・ボジオのドラムが聞きどころ。

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KORN III-REMEMBER WHO YOU ARE

2010年。ドラムが交代。プロデューサーがデビュー時のロス・ロビンソンになった。ボーカルを含めた各楽器の音をそのまま聴かせており、ギターやベースを低めに調音するロス・ロビンソンの手法もデビュー時と変わらない。前作が音を加工したインダストリアル・ロックだったので、音の生々しさ、ボーカルの表現力が明確に伝わってくる。ボーカルが力強く歌う部分はギター、ベースも同時に大きくなり、繊細に歌う部分では小さく、楽器の数も少なくなる。「フィア・イズ・ア・プレイス・トゥ・リヴ」はキーボードが使われ、比較的一般性がある。

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THE PATH OF TOTALITY

2011年。曲ごとにプロデューサーが変わり、エレクトロニクスを中心にした「シー・ユー・オン・ジ・アザー・サイド」のサウンドだ。ギターやドラムは実際の楽器を演奏しているのだろうが、エレクトロ・ロックとも言えるような音に編集、加工されている。ロックとエレクトロ音楽との境界が曖昧になってきたことを示すアルバム。

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THE PARADIGM SHIFT

2013年。ギターが1人復帰し5人編成。ヘビーロック風のギターの音が戻り、エレクトロニクス、ダブ風に加工した音が減った。ギターがデビュー時の2人に戻ったことをサウンドで示している。ボーカルメロディーも明快だ。「ホワット・ウィ・ドゥ」「パラノイド・アンド・アラウズド」はヘビーロックとダブがいいバランスで混合している。後半は曲の緊張感がやや下がる。ボーナストラックはいい曲だ。

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THE SERENITY OF SUFFERING

2016年。ギターを中心とするハードな曲が多く、前作の反動でエレクトロニクスが抑えられている。近年のアルバムでは最もハードだ。「ブラック・イズ・ザ・ソウル」「テイク・ミー」など、メロディーが優れた曲も多い。

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THE NOTHING

2019年。「ザ・パス・オブ・トータリティ」から「ザ・セレニティー・オブ・サファリング」は音の方向が大きくぶれており、アルバムを出しながら模索していたと言える。このアルバムはハードさと適度のメロディアスさ、ギターとシンセサイザーのバランスがこれまでになくいい。「イディオシンクラシー」「ファイナリー・フリー」「ザ・リングマスター」はそのバランスのよさが出ている。オープニング曲はジョナサン・デイヴィスのバグパイプ演奏。