JUDAS PRIEST

  • イギリスの代表的なヘビーメタルバンド。5人編成。ヘビーメタルのイメージを決定づけた重要バンド。
  • ロブ・ハルフォード(ボーカル)、グレン・ティプトン(ギター)、KK・ダウニング(ギター)、イアン・ヒル(ベース)、ドラムは不定。
  • 「ステンド・クラス」「殺人機械」でヘビーメタルの金属的なイメージを確立する。
  • 80年代は「復讐の叫び」「背徳の掟」でアメリカでもヒット。「ペインキラー」は集大成的なサウンドとなった。
  • ロブ・ハルフォードは90年代に一時脱退しファイトを結成。ティム・リッパー・オーウェンズがボーカルとなっている。

1
ROCKA ROLLA

1974年。ジューダス・プリーストの魅力は、個人的にはグレン・ティプトンとKKダウニングのツインリード・ギターだ。「ロッカ・ローラ」はその片鱗が見える。「ラン・オブ・ザ・ミル」もよい。音質はよくない。2枚目以降と比べると見劣りするのは否めない。

2
SAD WINGS OF DESTINY

1976年。邦題「運命の翼」。飛躍的成長を遂げた。「切り裂きジャック」「独裁者」など名曲多数。「墓碑銘(エピタフ)」は異色。アメリカのビルボード・チャートでは唯一ベスト10に食い込んでいるアルバム。「夢想家I」収録。「復讐の叫び」がヒットした83年に再発され、全米10位。

3
SIN AFTER SIN

1977年。邦題「背信の門」。大手レコード会社のエピックに移籍。「ダイヤモンズ・アンド・ラスト」「危害者」がよい。ギター同士、ボーカルのハーモニーの美しさはシン・リジーと双璧だ。「罪業人(つみびと)」収録。83年に再発売され全米15位。全英23位。

4
STAINED CLASS

1978年。「エキサイター」収録。「ベター・バイ・ユー・ベタ・ザン・ミー」「死の国の彼方に」など初期の傑作が多い。バンドのロゴも変わり、ここから「背徳の掟」まで全盛期を迎える。来日に合わせた記念シングルでは「エキサイター」の短縮バージョン(シングル・バージョン)が発表された。全米173位、全英27位。

THE BEST OF JUDAS PRIEST

1978年。ベスト盤。来日記念盤のためジャケットも日本向けとなっている。

5
KILLING MACHINE

1978年。邦題「殺人機械」。既にアメリカでも通用するような音になっている。「ビフォー・ザ・ドーン」は前作に引き続き珠玉のバラード。「殺戮の聖典(バイブル)」「グリーン・マナリシ」収録。「ユダへの貢物」収録。全英32位。「テイク・オン・ザ・ワールド」は全英14位、「イブニング・スター」は53位。

 
PRIEST IN THE EAST

1979年。初のライブ盤。日本と英米ではアルバム・タイトルが違う。全米70位、全英10位。

6
BRITISH STEEL

1980年。ジューダス・プリーストの代名詞である「メタル・ゴッド」収録。ギターの音が徐々に鋭角的になってきている。1曲はヒット性のある曲が入るようになってきたが、本作は「リビング・アフター・ミッドナイト」を収録。全米34位、全英4位。イギリスではバンド史上最高チャート成績で、明らかにニュー・ウェイブ・オブ・ブリティッシュ・ヘビーメタルの影響を受けている。「リビング・アフター・ミッドナイト」と「ブレイキング・ザ・ロウ」はともに全英12位でシングル最高成績。「ユナイテッド」は26位。

7
POINT OF ENTRY

1981年。邦題「黄金のスペクトル」。これまでのジューダス・プリーストらしさはほとんどない。ツイン・リードの応酬や疾走感のある曲は皆無。ジューダス・プリーストがやる必然性は感じられない。全米39位、全英14位。「ドント・ゴー」は全英51位、「ホット・ロッキン」は60位。

HERO,HERO

1981年。「ロッカ・ローラ」と「運命の翼」から選曲したベスト盤。「ロッカ・ローラ」は全曲、「運命の翼」は9曲のうち6曲が収録されている。「ダイアモンズ・アンド・ラスト」は「背信の門」収録曲だがミックスが違うという。

8
SCREAMING FOR VENGEANCE

1982年。邦題「復讐の叫び」。オープニングの「ヘリオン」「エレクトリック・アイ」は絶妙の流れ。B面1曲目となる「復讐の叫び」もすばらしい。アメリカでの最大のヒット曲「ユーヴ・ガット・アナザー・シング・カミング」収録。「フィーバー」「ブラッドストーン」収録。全米17位、全英11位。「ユーヴ・ガット・アナザー・シング・カミング」は全米67位、全英66位。

9
DEFENDERS OF THE FAITH

1984年。邦題「背徳の掟」。A面の質は高い。B面は動と静のコントラストを考慮に入れるとしてもテンションは下がる。「ホイール・バーニング」「ジョーブレイカー」「鋼鉄の魂」「死の番人」収録。全米18位、全英19位。「ホイール・バーニング」は全英42位。

10
TURBO

1986年。日本では問題作とする人もいるが、アメリカではそうでもなく、前作並みに好意的に受け入れられている。「黄金のスペクトル」に比べればメロディーに起伏がありハードロックとしてはかなりいい作品だ。記憶に残るメロディーが多い。全米17位、全英33位。

 
PRIEST...LIVE

1987年。観客の声援がすごい。「ターボ」のツアーから収録しているが、「ターボ」の曲はライブ・バージョンの方がはるかに栄える。全米38位、全英47位。

11
RAM IT DOWN

1988年。オープニング曲はヘビーメタルの手本のような曲。「ハード・アズ・アイアン」はとてもかっこいい。「ターボ」で使ったシンセサイザー・ギターの音はこのアルバムでも若干聞かれる。前半と後半で曲の雰囲気を変えるやり方は次作の「ペインキラー」にも続く。全米31位、全英24位。「ジョニー・B・グッド」は全英64位。

12
PAINKILLER

1990年。怒濤のドラムで始まる「ペインキラー」をはじめ、すべての曲が高品質な後期の傑作。詩までメタリックだ。全米26位、全英26位。「ペインキラー」は全英74位、「ア・タッチ・オブ・イーブル」は58位、「ナイト・クローラー」は63位。

METAL WORKS 73-93

1993年。活動約20年で初のベスト盤。全米155位、全英37位。

13
JUGULATOR

1997年。ボーカルのロブ・ハルフォードが脱退し、ティム・リッパー・オーウェンズを起用した復活作。パンテラ型ヘビーメタルの影響が感じられる。ジューダス・プリーストがそのような音を指向する必要はない。全米82位。

 
BULLET TRAIN

1998年。シングル盤。「ラピッド・ファイアー」と「ザ・グリーン・マナリシ」は98年バージョン。「ラピッド・ファイアー」はロブ・ハルフォードによく似た声で、サビだけ聞けばロブ・ハルフォードと間違う。

 
PRIEST,LIVE&RARE

1998年。過去に発売されたシングル盤のB面に入っていたライブを一枚にまとめた企画盤。日本のみの発売。「ブレイキング・ザ・ロウ」は2バージョンが収録されている。「ターボ・ラバー」のバージョン違いも収録。

'98 LIVE-MELTDOWN

1998年。ほどよい間隔で出てくるライブ盤。

14
DEMOLITION

2001年。現在のヘビーメタルにあっては、他の作品に埋没している作品。話題性に欠け、快作とはいかなかった。

METALOGY

2004年。ボックスセット。

15
ANGEL OF RETRIBUTION

2005年。ボーカルがロブ・ハルフォードになった。「ペインキラー」のようなハードでスピーディーな曲はないが、ミドルテンポの曲はヘビーメタルらしさを保つ。ボーカルの音域の広さを駆使する曲がもっとあればよかったのと、全体的な曲調が統一されすぎて解放感のあるメロディーが少ないのが難点か。ロブ・ハルフォードが復帰し、聞き手が希望するサウンドの範疇に収まっているので、特に厳しい評価は聞かれないだろう。最後の曲は13分半。

16
NOSTRADAMUS

2008年。コンセプト盤の体裁を取っている。2枚組で24曲入っているが、このうち9曲は1分弱から2分強のイントロになっているので、実質は15曲。全体的にミドルテンポが多い。ハードな曲は「迫害」、その他曲の一部がヘビーメタルになるという曲が何曲かある。キーボードを多用しているが、技術を見せる弾き方ではなく、雰囲気を出すために曲を覆うという弾き方。キーボードを多用しても、サウンドはまぎれもなくヘビーメタルで、曲もよくできている。コンセプト盤でなくても評価は高い。

A TOUCH OF EVIL

2009年。ライブ盤。

17
REDEEMER OF SOULS

2014年。邦題「贖罪の化身」。ギターのKK・ダウニングが抜け、代役が加入。マノウォーと変わらないくらいにヘビーメタルへの忠誠心を前面に出す。対象から距離を取らない、客観化しないという意味においては信心、宗教と同じだ。ヘビーメタルファンはこれを屈強な精神と呼んで賞賛し、あるべき姿として解釈するため、アーティストと聞き手が互いにその態度を賞賛するという構造を作っている。デビュー40年でヘビーメタルへの忠誠心を示すアルバムを出すことは、本心なのか作為なのかを確認せざるをえない。ロブ・ハルフォードとギター2人が作曲しているが、ロブ・ハルフォードの声の衰えに合わせて曲が作られているため、メロディーの幅が狭くなっている。サウンド、曲調ともバンド存続の意味を問われる。特にドラムのスコット・トラヴィスはこのバンドにいることがもったいない。

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FIREPOWER

2018年。90年代以降に出てきた音楽的意匠をできるだけ使わないようにしながら、2000年代以降の伝統的ヘビーメタルを再現する。ハードさを重要な要素とするジャンルのためか、80年代、90年代のエネルギーが現在も持続していることに重点を置いている。経歴が長くなっているアーティストの場合、必ずしもハードさを前面に出さなくてもよい。ジューダス・プリーストの場合、バラードの質は定評があるため、バラードが複数あってもよかった。「チルドレン・オブ・ザ・サン」「ライジング・フロム・ルインズ」「シー・オブ・レッド」のような、ミドルテンポの曲の方が印象的だ。