2002年。ジャック・ジョンソンはアメリカ・ハワイ出身のボーカル兼ギター。ギターはアコースティックギターがほとんどで、ギター、ベース、ドラムだけで演奏される曲がほとんど。ミドルテンポでリラックスした曲調だ。バンド編成だがロックではなく、ヒーリングの要素があるボーカルポップスだ。一部でピアノ、パーカッションが使われる。パーカッションは甲高い音で、南洋音楽を思わせる。「フレイク」でベン・ハーパー参加。
2003年。前作よりシンプルになり、ピアノは使われず、ゲスト参加もない。1曲を除きすべてジャック・ジョンソンが作曲。ギターの弾き語りにベースとドラムが入った感じだが、小難しさが全くない。ロック的男性性がないから男性よりも女性に受け入れられやすいと思われる。16曲で44分。
2005年。これまでよりリズミカルになり、ドラム、パーカッションが活躍する。ジャック・ジョンソンのソロアルバムというよりはバンドサウンドになっている。「ステイプル・イット・トゥゲザー」「クライング・シェイム」は「カリフォルニケイション」以降のレッド・ホット・チリ・ペッパーズのようなサウンドだ。
2006年。映画のサウンドトラック。ジャック・ジョンソンが全曲に参加しているので、ジャック・ジョンソンのアルバムという解釈もできる。どの曲がどうというよりも、アルバム全体の雰囲気として、何もする予定がない休日の午後という感じだ。「ウィ・アー・ゴーイング・トゥ・ビー・フレンズ」はホワイト・ストライプスのカバー。
2008年。バンドサウンドを保ちながら、ピアノの量が増えている。同時演奏する人数も増えた。デビュー当時にあった甲高いパーカッションよりもドラムセットによるサウンドが中心になり、南洋風ではなくなった。曲の最初から最後までバンドサウンドというのは少なく、最初はアコースティック・ギターの弾き語りで入ることが多いので、曲の柔らかさは変わらない。
2010年。アルバムタイトル曲や「アット・オア・ウィズ・ミー」はエレキギターを使い、7曲目まではアコースティックな曲とエレクトリックな曲が交互に出てくる。バンジョーやバイオリンを使う白人音楽が(陸の)カントリーであるならば、ウクレレとパーカッション、スチールパンなどを使うのがサーフ・ミュージック、すなわち「海のカントリー」と言える。
2013年。アコースティックギター、ベース、ドラムまたはカホンを基本に録音し、アコースティックギターあるいはウクレレが重ね録りされる。エレキギターは少なくなり、ロック寄りの曲は「ウォッシング・ディッシズ」「ショット・リヴァース・ショット」「テープ・デッキ」「レディエイト」等。1970年代、80年代の英米ロックにみられる、より激しく、より新しく、より対抗的で、機器依存的なサウンドに対置するのが90年代の(広義の)オルタナティブ・ロック、サーフ・ミュージック、ジャムバンド等の新しくない、激しくない、ブリコラージュ的なサウンドとするならば、ジャック・ジョンソン(の成功)は時代の変化の象徴と言える。90年以前には主流でなかったものが、90年以降に主流の一部となっていく過程は、ロックが依然として反体制的なものに価値を置く文化であることも示している。
2017年。10曲のうち5曲はジャック・ジョンソンが1人で多重録音している。ひところに比べると、バンドサウンドよりも弾き語りの傾向が大きく、ドラムセットによるリズムは少ない。カホンやパーカッションも少なく、アコースティックギター、エレキギター、ウクレレを重ねた録音が中心。「マイ・マインド・イズ・フォー・セール」は明確にアメリカの政策転換を批判している。砂浜に流れ着いたごみを並べたジャケットは環境汚染を示しており、メッセージ性が大きい。