インペリテリはギターのクリス・インペリテリを中心とするヘビーメタルバンド。5人編成。イングヴェイ・マルムスティーンに続く高速ギタリストとして注目された。デビュー盤のボーカルはアルカトラス、レインボーのグラハム・ボネット。2枚目からボーカルがロブ・ロックとなり、メロディアスなヘビーメタルとして人気を獲得した。2002年の「システム・X」以降はボーカルが不定。2009年にロブ・ロックが復帰している。
1988年。ギターのクリス・インペリテリを中心とするキーボード入りの5人編成バンド。ボーカルはレインボー、アルカトラスのグラハム・ボネット、ドラムはMR.BIGのパット・トーピー、ベースはハウス・オブ・ローズのチャック・ライト。レインボーの「シンス・ユー・ビン・ゴーン」をカバーしている。「オーバー・ザ・レインボー」もインストでやっている。演奏能力の高さゆえに、クリス・インペリテリの個性を尊重されることなくイングヴェイ・マルムスティーン風のサウンドを要求され、あげくレインボーに影響を受けたかのような印象を持たされている。技術はあくまで表現の手段であって、表現の内容まで拘束される必要はなかった。こうしたデビューの仕方は、フォロワーのような扱いをされるため、アーティストにとって不幸だ。
1992年。ボーカルがロブ・ロックに交代、キーボード奏者が脱け4人編成になった。前作のイメージで語られるため、本来の評価は得られていない。前作のイメージはまったくなく、キーボードのないオーソドックスなハードロック。
1993年。ミニ・アルバムとは言え質の高い作品。技術とメロディーと親しみやすさがうまく出ている。クリス・インペリテリの個性がやっとここから発揮されていく。
1994年。ミニ・アルバムよりはヘビーメタル寄りになった。イングヴェイ・マルムスティーンのようにアルバム全曲で技術を見せるのではなく、必要に応じてそれなりの演奏ををしている。ジャケットは1483年のパッハーによる名画「聖人と悪魔」。
1996年。キーボードが加入して再び5人編成に。コーラスもうまく、このあたりはロブ・ロックのセンスがインペリテリのサウンドに合ったということか。「ラット・レース」は代表曲。よく似たイントロの曲が多いが、シンプルなのでトレードマーク的に好感をもって受け入れられることは少なかった。このくらいのハードさを備えたバンドとしては、サビの覚えやすさは群を抜いている。最高傑作。
1996年。インペリテリが87年に出していた4曲入りデビュー盤の再発売。ボーカルはロブ・ロック。デビュー盤なので持てる技術をふんだんに発揮し、勢いに任せたスピーディーな演奏が聞ける。音質はそれなり。サウンド傾向はいかにも80年代。
1997年。精神的にも安定したのか、これまでになかったタイプの曲が入っている。「オン・アンド・オン」は終始アコースティック・ギターを使った曲で、ドラムは出てこない。前作ではストレートに曲が始まることが多かったが、このアルバムでは比較的長いイントロを置いて、途中でいつものインペリテリらしいスタイルに持っていく曲が複数ある。最後の曲がバラードというのも新しい試みで、「パラダイス」というタイトルも曲の感じもスティクスを意識したようだ。クリス・インペリテリの作曲能力の高さを知るアルバム。
2000年。前作を踏襲。バラードも入っている。「ウェイステッド・アース」は流行のヘビーロック調でスクラッチも入る。以前と違うのはその曲くらいで、ヘビーロック風にしたという最後の曲もサビの部分は完全にこれまでのインペリテリのメロディーだ。むしろ全体的にボーカルコーラスが厚くなり、基本的なところは何も変わらない。新機軸を打ち出しつつ個性も保っている。
2002年。ボーカルがグラハム・ボネットになった。「スタンド・イン・ライン」のようなばかなことはせず、これまでのインペリテリの曲を違うボーカルでやっている。ロブ・ロック時代はボーカル部分の多くで音を重ね、サビでコーラスを多用したが、グラハム・ボネットは1人で一本の声でレコーディングされている。
2004年。ボーカルが無名のカーティス・スケルトンに交代。キーボード奏者はいないが、曲によってキーボードが使われている。10曲のうち6曲はカーティス・スケルトンが作詞、3曲はカーティス・スケルトンとクリス・インペリテリが共作、残りの1曲「パンク」はクリス・インペリテリが単独で作詞している。「パンク」はエミネムやドクター・ドレー、リンプ・ビズキットのフレッド・ダーストなど、ヒップホップの有名アーティストを出してきて、ヘビーメタルの時代が来ることを歌っている。ボーカルにもラップが出てくるが、ポピュラー音楽の世界で圧倒的に知名度の低いインペリテリがそのような詞を書くと失笑を買う。ギターの演奏は以前と変わらず、ボーカルが変わったことでアルバムの印象が変わっている。
2009年。ボーカルにロブ・ロックが復帰した。「スクリーミング・シンフォニー」や「アイ・オブ・ザ・ハリケーン」を想像すると、その通りのサウンドが楽しめる。キーボード奏者がいるのと変わらないようなバンドサウンドで、コーラスもロブ・ロックの多重録音によって厚い。作詞はすべてロブ・ロック、作曲はすべてクリス・インペリテリ。
2015年。10曲で34分と短く、キーボードを使わないギター中心のサウンド。全曲をクリス・インペリテリが作曲し、ロブ・ロックが作詞している。90年代後半のサウンドのイメージを継承し、コーラスはロブ・ロックが多重録音している。日本人が制作に関わっており、当初は日本のみの発売。現代的なサウンドに更新されているわけではなく、曲調を変えてきているわけでもないので、時代錯誤の感は否めない。クリス・インペリテリが高速演奏から脱する決断をしない限り、バンドの低迷は打開できないだろう。
2018年。11曲のうち、4曲目にアンドリュー・ロイド・ウェバーの「オペラ座の怪人」、8曲目にブラック・サバスの「悪魔のしるし」を挟み、これまでのインペリテリの曲を3曲ずつ並べる。カバーではない曲は、前作、前々作と同じ曲調。