HELLOWEEN

ハロウィンはドイツのヘビーメタルバンド。5人編成。1987年の「守護神伝パート1」、88年の「守護神伝パート2」によってヨーロッパ型ヘビーメタル、いわゆるジャーマンメタルを切り開いた。ボーカルは「ジューダス」までがカイ・ハンセン、「守護神伝」から「カメレオン」までがマイケル・キスク、「マスター・オブ・ザ・リングス」以降はアンディ・デリス。代表作はカイ・ハンセン期が「ウォールズ・オブ・ジェリコ」、マイケル・キスク期は「守護神伝パート1」「パート2」、アンディ・デリス期が「タイム・オブ・ジ・オウス」。代表曲は「ライド・ザ・スカイ」「イーグル・フライ・フリー」「守護神伝」「パワー」。

 
HELLOWEEN

1985年。ミニ・アルバム。ギターのカイ・ハンセンがボーカルを兼任する4人組。「スターライト」「マーダラー」は今でもライブで演奏されることがある。「ヴィクティム・オブ・フェイト」収録。現在はオリジナル・ジャケットで発売されている。このミニ・アルバム単独の日本盤CDが1994年に発売されている。ピクチャー・レコードに収録されているという「サプライズ・トラック」は日本盤CDに収録されていない。

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WALLS OF JERICHO

1985年。ミニ・アルバムから大幅にドラマチックになり、サウンドも大仰だ。「ライド・ザ・スカイ」「ヘビー・メタル(イズ・ザ・ロウ)」「ハウ・メニー・ティアーズ」を収録。「ハウ・メニー・ティアーズ」は急-緩-急の形式となっている。日本でも国内盤が出ていない段階で人気が出た。同じ年にアクセプトの「メタル・ハート」が発表されている。

 
JUDAS

1986年。シングル盤。日本盤は1991年発売で、世界最初のCD化。「ライド・ザ・スカイ」「ガーディアンズ」はライブ収録した場所も日も記載されているが、スタジオ・バージョンの曲の前後に歓声を入れただけのように聞こえる。

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KEEPER OF THE SEVEN KEYS Part 1

1987年。邦題「守護神伝・第一章」。専任ボーカルにマイケル・キスクを迎えて制作された。ドイツ人、あるいはゲルマン民族の独自性を見せた作品としてヨーロッパ・ヘビーメタル史に大きな足跡を残す。英米追従型のアクセプトとは異なり、大陸ヨーロッパ人の神秘性、物語性を前面に出している。「アイム・アライブ」のイントロになる「序章」は最初に角笛の音があり、最後に壁が崩れる音が入っていることから、エリコの壁が崩れたことを示しているとみられる。このアルバムが「ウォールズ・オブ・ジェリコ」を引き継いだアルバムであることも示している。「アイム・アライブ」「フューチャー・ワールド」収録。このアルバムで日本デビュー。全米104位。

 
FUTURE WORLD

1987年。シングル盤。カイ・ハンセン作曲。「スターライト」のボーカルはマイケル・キスク。

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KEEPER OF THE SEVEN KEYS Part 2

1988年。邦題「守護神伝・第二章」。ジャーマンメタルの金字塔。「イーグル・フライ・フリー」はバンドだけでなくジャンルにおいても代表曲。アルバムタイトル曲はヨーロッパの吟遊詩人が語りながら歌うような大作で、英米のヘビーメタルのアーティストには思いつかない作風だ。「DR. STEIN」「アイ・ウォント・アウト」収録。全米108位、全英24位。イギリスではアクセプトの「メタル・ハート」の50位を大きく超えるチャート成績で、同じ年に出たスコーピオンズの「サヴェージ・アミューズメント」の18位に迫るヒットだった。発売当時ボーナストラックだった「セイブ・アス」は当初アルバムの最後に収録されていた。現在はアルバムの真ん中に配置されている。

 
I WANT OUT

1988年。シングル盤。カイ・ハンセン作曲。同時収録の2曲は「守護神伝・第二章」の日本盤ボーナストラックだった。全英69位。

 
DR.STEIN

1988年。シングル盤。マイケル・ヴァイカート作曲。「サヴェッジ」はアルバム未収録ながら人気が高かった。全英57位。

 
KEEPERS LIVE

1989年。ライブ盤。88年のイギリス公演から7曲。イギリスでは「ライブ・イン・UK」として発売され、全英26位。

 
THE BEST,THE REST,THE RARE

1991年。その名の通り、ベスト曲とシングルのB面曲などを集めた企画盤。

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PINK BUBBLES GO APE

1992年。カイ・ハンセンが脱退し、ローランド・グラポウが加入。さっそくローランド・グラポウは4曲書いている。マイケル・キスクも4曲。マイケル・ヴァイカートは2曲だけ。大仰なイントロからスピーディーな曲に移行といった前作までのスタイルは踏襲していない。「キッズ・オブ・ザ・センチュリー」収録。全米123位、全英41位。

 
KIDS OF THE CENTURY

1992年。シングル盤。マイケル・キスク作曲。エルヴィス・プレスリー、カール・パーキンスの「ブルー・スエード・シューズ」のカバー収録。

 
NUMBER ONE

1992年。シングル盤。マイケル・ヴァイカート作曲。

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CHAMELEON

1993年。北ヨーロッパ的な陰鬱さが薄くなり、バンドの独自性が問われることになった。従前のスタイルを大きく変えた作品をそのまま世に問う姿勢はドイツ人的と言える。ファンク風ホーンも大きく取り入れているが、ハードロックとしては上質だ。7曲目の「レヴォリューション・ナウ」は、1968年のフラワー・ムーブメントについて歌った部分でスコット・マッケンジーの「花のサンフランシスコ」のメロディーが登場する。「レヴォリューション・ナウ」のタイトルはビートルズの「レヴォリューション9」を意識したか。

 
WHEN THE SINNER

1993年。シングル盤。マイケル・キスク作曲。

 
I DON'T WANNA CRY NO MORE

1993年。シングル盤。ローランド・グラポウ作曲。

 
STEP OUT OF HELL

1993年。シングル盤。ローランド・グラポウ作曲。

KEEPER OF THE SEVEN KEYS PART1&2

1994年。邦題「守護神伝完全版」。「守護神伝」の「第一章」と「第二章」を合わせ、シングル盤のB面曲などを追加した2枚組。1枚目は「第一章」のみ、2枚目は「第二章」の最後に4曲を追加しているので、曲順としては当初予定に最も近い。

 
WHERE THE RAIN GROWS

1994年。シングル盤。マイケル・ヴァイカート作曲。アンディ・デリスが初めてハロウィンのメンバーとして出したシングル。

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MASTER OF THE RINGS

1994年。マイケル・キスク、インゴ・シュヴィヒテンバーグが脱退。ボーカルに元ピンク・クリーム69のアンディ・デリス、ドラムに元ガンマ・レイのウリ・カッシュが加入。「守護神伝」時代のドイツ的スタイルから脱皮し、新たなハロウィン・サウンドを確立した。特にアンディ・デリスの作曲能力はすばらしく、曲の親しみやすさが格段に上がった。「ソウル・サバイバー」「パーフェクト・ジェントルマン」収録。

 
PERFECT GENTLEMAN

1994年。シングル盤。アンディ・デリス作曲。「コールド・スウェット」はシン・リジーのカバー。

 
SOLE SURVIVOR

1995年。シングル盤。マイケル・ヴァイカート作曲。「アイ・ストール・ユア・ラブ」はキッスの、「クローサー・トゥ・ホーム」はグランド・ファンク・レイルロードのカバー。

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THE TIME OF THE OATH

1996年。アンディ・デリスの持つポップ・センスとハロウィン(マイケル・ヴァイカート)の個性がうまく結実。イントロはモーツァルト的明るさが感じられる。発売前から傑作との評価を得ていた。「ウィ・バーン」「ウェイク・アップ・ザ・マウンテン」「ビフォー・ザ・ウォー」「エニシング・マイ・ママ・ドント・ライク」「キング・ウィル・ビー・キングス」収録。

 
POWER

1996年。シングル盤。非常に覚えやすいサビを持った曲。「レイン」はステータス・クオーのカバー。

 
THE TIME OF THE OATH

1996年。シングル盤。ローランド・グラポウ作曲。「エレクトリック・アイ」はジューダス・プリーストのカバー。イントロの「ヘリオン」も含まれている。

 
FOREVER AND ONE

1996年。シングル盤。アンディ・デリス作曲。バラード。新曲2曲はアコースティックな曲。

 
HIGH LIVE

1996年。2枚組ライブ盤。日本公演の前に発売されて予習用となった。「ジューダス」以前と「カメレオン」からは選曲されていない。

 
12 YEARS IN METAL&BEYOND...

1996年。ドイツ初のヘビーメタル専門レーベル「Noise」が制作したアルバム「Death Metal」にハロウィンは2曲を提供している。このアルバムがハロウィンの最初のレコード。このうち「Oenest Of Life」はこの企画盤に収録されている。もう一曲の「Metal Invaders」は「ウォールズ・オブ・ジェリコ」に収録。もともと「Death Metal」はランニング・ワイルドを売り出す目的で制作されたという。「12イヤーズ・イン・メタル&ビヨンド」はノイズ・レコードの歴史を振り返る2枚組アルバム。

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BETTER THAN RAW

1998年。全体的に陰鬱だ。しかし曲のレベルは他のバンドよりもはるかに高く、もはやメロディック・パワー・メタルなどという言葉を超越したところまで来ている。ウリ・カッシュの曲が増え、ローランド・グラポウの曲はない。「プッシュ」収録。

 
I CAN

1998年。シングル盤。アンディ・デリス、マイケル・ヴァイカート作曲。

 
HEY LORD !

1998年。シングル盤。アンディ・デリス作曲。「パーフェクト・ジェントルマン」のブートレッグ・バージョンとはライブ・バージョンのこと。「もしもし!~四季の歌」は約4分のドラム・ソロのあと、荒木とよひさ作曲の「四季の歌」のメロディーが出てくるインスト。名古屋でのライブ。

 
METAL JUKEBOX

1999年。カバー曲集。オリジナルは1.スコーピオンズ、2.ジェスロ・タル、3.アバ、4.デヴィッド・ボウイ、5.フェイス・ノー・モア、6.ビートルズ、7.フォーカス、8.ザ・センセーショナル・アレックス・ハーヴェイ・バンド、9.フランク・マリノ、10.クリーム、11.ベイブ・ルース、12.ディープ・パープル。興味を引く選曲は8、11。アンディ・デリス選曲はスコーピオンズ、マイケル・ヴァイカート選曲はアバ、ビートルズ、フランク・マリノ、ディープ・パープル、マーカス・グロスコフ選曲はジェスロ・タル、デヴィッド・ボウイ、ベイブ・ルース、ウリ・カッシュ選曲はデヴィッド・ボウイ、ベイブ・ルース、ローランド・グラポウ選曲はフォーカス。5と8は全員の合意。トミー・ハンセンと別れ、セルフ・プロデュースに挑んだ点の方が重要か。

 
LAY ALL YOUR LOVE ON ME

1999年。シングル盤。ABBAのカバー。この曲をカバーするヘビーメタル・バンドが必ず出てくるだろうと思っていたら、大物バンドがカバーした。曲のドラマチックさを出すためにイントロが原曲よりもゆっくり演奏されている。ビートルズのカバー「サムシング」はアルバム未収録。

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THE DARK RIDE

2000年。リリース当時、印象的なメロディの一曲目がさほど話題にならず、それほど他の曲のクオリティが高かったことを物語っている。「オール・オーバー・ザ・ネイション」「ミスター・トーチャー」「イフ・アイ・クッド・フライ」収録。

 
MR.TORTURE

2000年。シングル盤。ウリ・カッシュ作曲。ドラマーがこんなに広い音域の曲を書けてしまうとは。

 
TREASURE CHEST

2002年。2枚組ベスト盤。3枚組もあり、3枚目はシングルのB面集。「スターライト」「マーダラー」「ライド・ザ・スカイ」「守護神伝」「ドクター・ステイン」の5曲がリミックスされている。

 
JUST A LITTLE SIGN

2003年。シングル盤。ギターのローランド・グラポウとドラムのウリ・カッシュが脱退。ガンマ・レイのヘンニュ・リヒターとメタリウムのマーク・クロスが加入するという話は伝わってきていた。その後曲折あってフリーダム・コールのサシャ・ゲルストナーと元ランニング・ワイルド、アクセプトのステファン・シュヴァルツマンが参加することになった。新作に入ると思われる2曲とクイーンの「シアー・ハート・アタック」のカバーを収録。新曲はこれまでのハロウィンのサウンドを踏襲している。

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RABBIT DON'T COME EASY

2003年。覚えやすいメロディーを考えることは、普通のヘビーメタルの曲を作るよりも難しい。印象に残るということは、メロディーやリズムが心にひっかかるところがあるということで、アルバムを出すたびにそうした曲がいくつも出てくることは驚異的創造力だ。「ジャスト・ア・リトル・サイン」収録。

 
MRS. GOD

2005年。シングル盤。これまでの経緯からいえば、ミドルテンポのタイトル曲よりもスピーディーな「マイ・ライフ・フォー・ワン・モア・デイ」の方をメーンにしたであろうが、それをあえて逆にして、さまざまなもくろみを示唆させる曲順にしている。

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KEEPER OF THE SEVEN KEYS THE LEGACY

2005年。邦題「守護神伝・新章」。2枚組。ドラムが交代。1980年代後半の「守護神伝」の続編の体裁を取っている。2枚とも1曲目が長く、1枚目は14分、2枚目が11分。ドラム以外の4人が作曲でき、作詞作曲を1人でやっている曲が多い。過去の「守護神伝・第一章」、「守護神伝・第二章」を制作上の規範にしているため、まじめさやひたむきな姿勢、メッセージ性はこのアルバムにも引き継がれている。しかし、このアルバムでバンド側が想定している「守護神伝」とは「イーグル・フライ・フリー」「ハロウィーン」「守護神伝」のことのようだ。彼らの想定には「DR.STEIN」や「ライズ・アンド・フォール」や「ア・リトル・タイム」のようなポップな曲は含まれていない。80年代後半当時は、これらの曲を含めて「守護神伝」が成り立っていたのであるが、「イーグル・フライ・フリー」や「ハロウィーン」のような曲が強力であったためにヨーロッパでジャーマンメタル・ブームが起きた。その後、聞き手の求める「イーグル・フライ・フリー」のようなサウンドと、バンドが作る新しいサウンドにギャップが生じ、賛否を巻き起こした。マイケル・キスク時代からの聞き手がいう「守護神伝」とはドラマチックで物語性が強い曲のことであって、80年代以前からの聞き手はアンディ・デリスが加入したあともそうした曲の幻影を求めてきた感がある。アンディ・デリスを擁するハロウィンは、「マスター・オブ・ザ・リングス」以降、マイケル・キスク時代のハロウィンとサウンド的に決別し、新しいハロウィンのサウンドを提示し続け、新しい聞き手を多数獲得してきた。このアルバムは、「守護神伝」的サウンドを求める古い聞き手への最後のサービスとも言える。

 
WALLS OF JERICHO:EXPANDED EDITION

2006年。7曲入りボーナスCDがついたリマスター盤。「マーダラー」「ライド・ザ・スカイ」は「トレジャー・チェスト」に収録、「オーンスト・オブ・ライフ」「メタル・インヴェイダーズ」は「メタル・アンド・ビヨンド・・・12イヤーズ・イン・ノイズ」に収録、「イントロ/ライド・ザ・スカイ(ライヴ)」「ガーディアンズ(ライヴ)」は「JUDAS」に収録。この6曲は日本盤CD化済み。「サプライズ・トラック」はミニ・アルバム「ハロウィン」のピクチャー盤に収録されているというが、日本盤CDで単独発売されたときには収録されていなかったので、この曲のみ初登場。

 
KEEPER OF THE SEVEN KEYS Part 1:EXPANDED EDITION

2006年。ボーナストラックが4曲入ったリマスター盤。4曲とも既発曲。

 
KEEPER OF THE SEVEN KEYS Part 2:EXPANDED EDITION

2006年。ボーナストラックが5曲入ったリマスター盤。5曲とも既発曲。「ドント・ラン・フォー・カヴァー」は「アイ・ウォント・アウト」に収録されている曲として記載されているが、それ以前に「守護神伝・第二章」が発売されたときのボーナストラックだった。

 
PINK BUBBLES GO APE:EXPANDED EDITION

2006年。ボーナストラックが4曲入ったリマスター盤。いずれもシングル盤の同時収録曲で、4曲とも既発曲。

 
LIGHT THE UNIVERSE

2006年。シングル盤。タイトル曲はブラックモアズ・ナイトの女声ボーカル、キャンディス・ナイトとアンディ・デリスがデュエットしているバージョンと、アンディ・デリスが1人で歌っているバージョンを収録。「イフ・アイ・クッド・フライ」はライブ。

 
KEEPER OF THE SEVEN KEYS THE LEGACY WORLD TOUR 2005/2006 LIVE IN SAO PAULO

2007年。2枚組ライブ盤。「守護神伝・新章」のブラジル公演を収録。ヘビーメタル人気の強い南米なので、一緒に歌う聴衆の声が大きい。オアシスやグリーン・デイのイギリス公演ライブ盤でもこのくらいの歓声が聞こえるので、南米のヘビーメタル・ファンが特に大歓声ということではない。2枚で13曲あるが、「守護神伝」の第一章、第二章からは6曲。シングルになった3曲と「イーグル・フライ・フリー」「守護神伝」「ア・テイル・ザット・ウォズント・ライト」。新章からは3曲。残り3曲は「タイム・オブ・ジ・オウス」から1曲、「ザ・ダーク・ライド」から2曲。ボーナストラックとして「ハロウィーン」「オケイジョン・アヴェニュー」収録だが、ブラジル公演ではない。

 
AS LONG AS I FALL

2007年。シングル盤。1曲目に入っているのはアルバムより短いバージョン。アルバム未収録曲は7分近くもあるハードな曲。

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GAMBLING WITH THE DEVIL

2007年。「ザ・ダーク・ライド」や「ラビット・ドント・カム・イージー」のサウンド。ドラム以外の4人が作曲にかかわり、多くが単独での作曲だ。マイケル・ヴァイカートは2曲の作曲だが、その2曲がすばらしい。「ザ・セインツ」は7分を超え、高速で進みながら覚えやすいメロディーが乗る。「ザ・ダーク・ライド」の「オール・オーバー・ザ・ネイション」、「ラビット・ドント・カム・イージー」の「ジャスト・ア・リトル・サイン」のイメージ。「キャン・ドゥ・イット」はこれまでにないポップなメロディー。

 
UNARMED

2009年。「守護神伝」のころから現在までの有名曲をアコースティック・バージョンやオーケストラ・バージョンなどに再編曲した企画盤。「ハロウィーン」と「守護神伝」と「ザ・キング・フォー・ア・1000イヤーズ」は「ザ・キーパーズ・トリロジー」としてメドレーになっている。11曲のうち、「ザ・キーパーズ・トリロジー」を含め5曲が「守護神伝」時代の曲。ボーカルはすべてアンディ・デリス。再編曲とはいえ、多くがアコースティック・バージョンになっており、ヘビーメタルとして編曲されている曲はない。もっと冒険して驚きやスリルを引き出してもよかったか。

 
ARE YOU METAL?

2010年。シングル盤。タイトル曲はオーケストラヒットを多用したアンディ・デリスの曲。「アイム・フリー」はスピーディーなアルバム未収録曲。

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7 SINNERS

2010年。全体的にこれまでと同じメロディアスなヘビーメタルだが、曲順で変化を狙ったようだ。オープニング曲から3曲目の「フー・イズ・ミスター・マッドマン?」までは、ハロウィンとしてはアレンジ優先の曲ばかりだ。これらの曲が4曲目以降の中にまぎれていれば、「ザ・ダーク・ライド」や「ラビット・ドント・カム・イージー」とあまり変わらない作風になっていただろう。それはそれで質の高いアルバムということになるが、いい曲を常に作れるアーティストだけの苦労と言える。「ザ・スマイル・オブ・ザ・サン」はアンディ・デリス特有のメロディアスなバラード。「フー・イズ・ミスター・マッドマン?」はかつての「パーフェクト・ジェントルマン」のメロディーを差し挟んでいる。

BURNING SUN

2012年。シングル盤。「アナザー・ショット・オブ・ライフ」はアルバム未収録曲。

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STRAIGHT OUT OF HELL

2013年。オープニング曲が最も長く、曲のテンポも曲調もよく変わるが、アルバムを最後まで聴くとこの曲がメーンの曲ではないことが分かる。それほど2曲目以降の出来がよく、ここが「守護神伝パート2」の「イーグル・グライ・フリー」とは異なるところだ。ドラム以外の4人が複数の曲を作曲しており、いずれも個性を出しながらすばらしい曲を提供している。「ワールド・オブ・ウォー」は「マーチ・オブ・タイム」の2000年代版。「ウェイティング・フォー・ザ・サンダー」はキーボードを前提にしたアンディ・デリスらしい曲。「ワナ・ビー・ゴッド」はクイーンの「ウィ・ウィル・ロック・ユー」を意識した短い曲。ハイライトはマイケル・ヴァイカートが作曲した「バーニング・サン」と「イヤーズ」だろう。「バーニング・サン」は感想にも物語が設定されているような構成。全体的にアンディ・デリスは高音を酷使しており、サビでは多重録音によるコーラスになる。キーボード奏者をメンバーに加えた方がいいようなサウンドとなっている。

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MY GOD-GIVEN RIGHT

2015年。近年のハロウィンのアルバムを踏襲しており、ハロウィンがドイツのメロディアスなヘビーメタルの基本形式を確立したバンドであることが分かる。「バトルズ・ウォン」は「ジャスト・ア・リトル・サイン」「オール・オーヴァー・ザ・ネイション」に当たる曲。タイトル曲は「パワー」、「ロスト・イン・アメリカ」は「フューチャー・ワールド」を思い出させる。アンディ・デリスのボーカルは高音を可能な限り使っており、さらに重ねて補強しているところがある。ライブでの再現はそのままでは難しいだろう。今回はバラードの「ライク・エヴリバディ・エルス」がやや弱いので、その前後の曲を引き立てる力も弱くなっている。アンディ・デリスとマイケル・ヴァイカートが単独で作曲するよりも、共作した曲を中心にすれば印象的な曲が増えるのではないか。ハロウィンは既に多数の有名曲を持っているので、新しい曲を提示しても過去の曲のどれに似ているかを比較参照されやすい。それは有名曲を量産したことの裏返しと言えるが、独創性や天才性を至上とする潔癖な聞き手の不評を買うことは織り込み済みだろう。

PUMPKINS UNITED

2017年。マイケル・キスク、カイ・ハンセンが参加し、アンディ・デリスとともにボーカルをとる。曲は「守護神伝第二章」のころに近い。歌詞にはマイケル・キスク、カイ・ハンセンが在籍していたころの曲名が織り込まれている。

SWEET SEDUCTIONS

2017年。ベスト盤。3枚組。概ね時代順に並んでいる。1枚目はカイ・ハンセン、マイケル・キスク時代。2枚目はアンディ・デリス時代の「マスター・オブ・ザ・リングス」から「ラビット・ドント・カム・イージー」まで。3枚目はアンディ・デリス時代の「守護神伝・新章」から「マイ・ゴッド・ギヴン・ライト」まで。「ナイトメア」「モア・ザン・ア・ライフタイム」はともにカーカス・グロスコフの作曲。

UNITED ALIVE IN MADRID

2019年。ライブ盤。2枚組と3枚組がある。ハロウィンのメンバーにマイケル・キスクとカイ・ハンセンが加わり、7人編成でのライブ。カイ・ハンセンとマイケル・キスクがいた80年代の曲を中心に選曲している。スタジオ盤でマイケル・キスクが歌っている曲でもアンディ・デリスが一部歌っている曲もある。14分ある「カイズ・メドレー」は「スターライト」「ライド・ザ・スカイ」「ジューダス」「ヘビー・メタル(イズ・ザ・ロウ)」のメドレーで、カイ・ハンセンがボーカルをとる。「ライズ・アンド・フォール」はボーカルメロディーをやや変更。「ハウ・メニー・ティアーズ」はトリプル・ボーカル。2枚目までは1日のライブをそのまま収録。3枚目は4曲ともそれぞれ収録場所と日が異なる。

SKYFALL

2021年。シングル盤。ボーカルはマイケル・キスク、アンディ・デリス、カイ・ハンセンが交代で取る。

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HELLOWEEN

2021年。マイケル・キスクをメインボーカルとし、数曲でアンディ・デリスがボーカルを取る。作曲は主にアンディ・デリス、マイケル・ヴァイカート、サシャ・ゲルストナーが行い、最後の「スカイフォール」をカイ・ハンセンが作っている。アンディ・デリス加入以降のアルバムにマイケル・キスクとカイ・ハンセンが加わったような作風で、曲によっては音が厚すぎ、過剰だ。特に多くの部分でかぶせられている背景音、音数の多いドラムは曲のよさを見えにくくしている。ドラムのダニ・ルブレは叩きすぎで、制作時に誰かが制御すべきだった。カイ・ハンセン、アンディ・デリスは高音を無理に出している感があり、コーラスを減らしてもよかった。それぞれの曲は、他のバンドならどれもメイン曲になりそうないい曲だ。オープニング曲の「アウト・フォー・ザ・グローリー」はもう少し構成をすっきりした方がよい。アルバム全体の雰囲気に合わないポップな曲を1曲入れた方が、逆に全体が締まる。「ロボット・キング」は曲タイトルの連呼の部分は蛇足。日本盤ボーナスCDの「セイヴ・マイ・ハイド」「ウィ・アー・リアル」は本編に入ってもいい曲。