1989年。全盛期のランニング・ワイルドのようなイントロで始まる。高水準ヘビー・メタル。ジューダス・プリーストの方向で、アクセプトが演奏しているようなかっこよさ。ポップな「ディス・フライト・トゥナイト」はジョニ・ミッチェルのカバー。ボーカルのトーマス・リトケはハイ・トーンでも安定した歌唱力。「タイラント」収録。
1990年。ミニ・アルバム。デイビッド・エセックスのカバーは、邦題タイトルが「ロック・オン」になっているが、ヘブンズ・ゲイトがこの曲を取り上げた趣旨を勘案すれば、当時の邦題通り「ロックにすべてを」とするべきだった。
1991年。ドイツのヘビーメタル史に残る傑作。ハロウィンやガンマ・レイ、ブラインド・ガーディアンといったいわゆるジャーマン・メタルとは違うスタイルでヘビー・メタルのかっこよさを体現している。ロマン派全盛期のドイツでブラームスだけが伝統的な作曲スタイルを守っていたのと同じような状況だ。ジャーマン・メタルではなく、それを包括するヘビーメタルの範疇で語られるべきアルバムだ。過去2作では、いずれも70年代前半のポップスのヒット曲をカバーしていたが、ヘビーメタルというジャンルに関係なく、幅広く名曲を聴いているという音楽的背景が極めて有効に機能している。「ゲイト・オブ・ヘヴン」「ウィ・ゴット・ザ・タイム」収録。
1991年。日本向けミニ・アルバム。新曲3曲と「ベスト・デイズ・オブ・マイ・ライフ」のアコースティック・バージョン。
1992年。デビュー以来変わらない路線を追求しているが、ややバラエティに富んでいる。最後の曲はモンティ・パイソンの曲をヨーロッパ各国のなまりで歌う。ヨーロッパ人でないと笑えない。「ライジング・サン」でギター・ソロを弾いているのはガンマ・レイのカイ・ハンセンとダーク・シュレヒター。
1992年。バラード曲のシングル。
1993年。唯一のライブ盤。ボーカルがライブで安定して声を出せるというのは聞いていて気持ちがいい。
1996年。キーボード、コーラス、バイオリンを効果的に使用し、「リヴィン・イン・ヒステリア」に匹敵する名盤を作った。よく考えられたアレンジで曲がだれない。スピードに頼らずにここまでできるという好例。ジューダス・プリーストの「死の番人」とスパークスの「ディス・タウン」ほか計3曲もカバーがある。複数の曲にヨーロッパ民謡のメロディーが散見される。
1997年。アコースティック・ミニ・アルバム。新曲1曲。初期の曲のメドレーがポイント。
1999年。全体に暗めで音もギターの濁り気味。通常の曲は12曲で、最初と最後と曲間に1分弱のSEが入っているので、全部で23曲ある。したがって、聞き手は非常にうっとうしいと感じるが、それがバンド側の狙いであるという。コンセプト盤的作風が成功しているかどうかは難しいところだ。