HALSEY

ホールジーはアメリカの女性シンガー・ソングライター。1994年生まれ。2010年代後半から20年代の女性上位層のモデルとなっている。

1
BADLANDS

2015年。1970年代以降、定期的に現れる若い女性シンガー・ソングライターの一人で、世代的にはロードと同じだ。シンセサイザーやエレクトロ機器でほぼ全ての音を構成する。享楽性はなく、オルタナティブポップと呼べるが、ポップの単語に内包される快活なイメージはない。適した用語がないのが現状だ。自らの経験を基に書く詩がアメリカ、世界の多様性を反映しており、社会を先導する層の認識と一致する。レディー・ガガが少数者の認知拡大、ロードが秩序の再編成を促したのと同じように、ホールジーは先導的な層とそれに追随する若年層の間に立つ不安定かつ多様な集団の代弁者としての役割を果たしている。「ニュー・アメリカーナ」収録。

2
HOPELESS FOUNTAIN KINGDOM

2017年。シェークスピアの「ロミオとジュリエット」の構成を借りたコンセプト盤。ロミオとジュリエットに性的少数者の視点を持ち込んでいる。「ロミオとジュリエット」はもともと身分社会、階級社会を批判し、自由恋愛を尊重する戯曲なので、このアルバムにもその視点が含まれていると想像できる。これだけでもう十分に質の高いアルバムだが、曲は前作よりもポップになり、ホールジーの評価を大きく高めている。「ナウ・オア・ネヴァー」収録。

3
MANIC

2020年。前作の評価を受けて、多くのアーティストが直面する社会的人格と自己認識の乖離をアルバムに落とし込んでいる。「ユー・シュッド・ビー・サッド」「アイ・ヘイト・エヴリバディ」は直接的なタイトルを付けている。曲は多様だ。「ユー・シュッド・ビー・サッド」「ファイナリー//ビューティフル・ストレンジャー」など、カントリーポップの影響を受けた曲が複数ある。アラニス・モリセット、BTSのシュガがゲスト参加している。「ウィズアウト・ミー」はジャスティン・ティンバーレイク、ティンバランドらと共作。

4
IF I CAN'T HAVE LOVE,I WANT POWER

2021年。ナイン・インチ・ネイルズのトレント・レズナーが演奏と制作に全面的に参加している。これまでのアルバムの傾向から逸脱しようという芸術的な試みを感じさせる。「イージアー・ザン・ライイング」「ユー・アスクド・フォー・ディス」「ザ・ライトハウス」はナイン・インチ・ネイルズのイメージに近いインダストリアルロック。それ以外の曲もトレント・レズナーがギター、ベース、キーボード、プログラミングで各曲に参加しており、事実上、トレント・レズナーらの演奏でホールジーが歌うアルバムとなっている。その中で、アルバムの真ん中にある「ダーリン」はアコースティックギターをメインにした曲調で、インダストリアルロックの要素がほとんどない。緊張感がずっと続くことの疲労を軽減している。「ダーリン」はフリートウッド・マックのリンジー・バッキンガムがギターで参加。「ハニー」はフー・ファイターズのデイヴ・グロールがドラムで参加。