HAGGARD

ハガードはクラシック音楽の室内楽とデスメタルを接合したバンド。ドイツ出身。16~20人編成。ボーカル、ギター、ベース、ドラム、キーボードのバンドと、弦楽器、木管楽器、チェンバロ、ピアノを中心とする室内楽団が同じグループとして存在している。

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AND THOU SHALT TRUST...THE SEER

1997年。キーボードを含むバンド5人、声楽2人、弦楽器5人、木管楽器4人。声楽の2人はソプラノ、弦楽器の5人のうち4人は擦弦楽器。室内楽の演奏時間がバンドよりはるかに長く、メインボーカルはバンドメンバーのデス声ではなくソプラノ歌手だ。「レクイエムニ短調」と「定旋律イ短調」はバンド演奏がなく、室内楽だけの演奏。96年にセリオンの「セリ」がヒットし、デスメタルとクラシック音楽の接合が注目されたため、このアルバムにも注目が集まった。ナイトウィッシュとウィズイン・テンプテーションも97年にデビューしており、ハガードは新しいサウンドを提示していたと言える。ジャケットはアルプレヒト・デューラーの「メランコリア1」。

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AWAKING THE CENTURIES

2000年。20人に増え、テノール2人、コントラバスが加わった。メンバーとは別に合唱隊も参加している。バンド演奏、声楽ともに質が上がった。12曲のうちバンド演奏が含まれているのは5曲。ノストラダムスを扱っている。

AWAKING THE GODS LIVE IN MEXICO

2001年。ライブ盤。デビュー盤に近い編成でライブをやっている。室内楽だけで演奏する短い曲も入っている。「アウェイキング・ザ・センチュリーズ」は盛り上がる。「ファイナル・ヴィクトリー」は曲が終わってからアンコールになるまでの歓声がそのまま3分半入っている。アンコールの「イン・ア・ペール・ムーンズ・シャドウ」は10分あり、ライブ盤全体で最も長い曲になっている。

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EPPUR SI MUOVE

2004年。17人編成で録音。ゲスト参加も10人いる。ガリレオ・ガリレイを扱っている。アルバムタイトルは「それでも地球は動いている」というガリレオ・ガリレイの有名な言葉をイタリア語のまま採用している。ガリレオ・ガリレイの時代に合わせ、室内楽団はヴィオローネを使い、コントラバスよりも濁った低音が出てくる。オープニング曲はデス声と通常の声を使い分ける。室内楽とバンドの同時演奏が増えた。「マンネリグ卿」はスウェーデンの伝承音楽で、室内楽とバンド演奏はあるがボーカルはソプラノだけだ。

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TALES OF ITHIRIA

2008年。メンバー20人、ゲスト10人で録音。過去の歴史物語は使わず、物語自体も創作している。短い曲は室内楽というよりもナレーションに充てられており、通常の曲の途中にもナレーションが出てくる。ナレーションはレイジ、アーテンション等のマイク・テラーナ。ヘビーメタルバンドと室内楽団の協奏という形式は、これまで何度も試みられてきたロックバンドとオーケストラの協奏という形式の焼き直しとみなされる。それはデビュー当初から認識しておくべきことで、アルバムを出しながら別の表現形式を提示することが課題だった。このアルバムでは物語の自作をしているが、斬新さに欠けるのは否めない。