メロディック・パンク、ポップパンクを世界中に広めた先駆的バンド。アメリカ、カリフォルニア出身。ビリー・ジョー・アームストロング(ボーカル兼ギター)、マイク・ダーント(ベース)、トレ・クール(ドラム)の3人編成。メジャーデビュー盤の「ドゥーキー」(1994年)がヒットし、オフスプリングの「スマッシュ」とともにメロディック・パンクのジャンルを確立した。2004年の「アメリカン・イディオット」でメロディック・パンクの世界を超え、ロック、ポップス全体の世界的グループとなっている。
1990年。ギターがボーカルを兼任する3人組。アメリカ出身。デビュー・アルバムの「39/スムーズ」にEP2枚の8曲と、アルバム未収録曲1曲を同時収録。このアルバムを先入観なしに聞けば、パンクというよりシンプルなロックという印象。雰囲気が似ているアーティストを探そうとすればラモーンズやバズコックスになるのかもしれない。なにか信念のようなものを持っているわけではないようなサウンドで、堅苦しさを感じさせない。デビュー当初からベースがコーラスをつけ、2声のハーモニーを作っている。「アイ・ウォント・トゥ・ビー・アローン」はいい曲だ。アメリカでは「ドゥーキー」が発売されたあとヒットし、全米4位。
1992年。ドラムが交代。2枚目のアルバムにEPの4曲を同時収録。特に大きな変化はなく、このサウンドでは多くのアーティストの中に埋もれても不思議ではない。しかし、ヒットしてもおかしくないメロディーで、それをややストレートに表現しすぎたところがある。アレンジ能力が上がればよくなるのではないか。「マイ・ジェネレーション」はザ・フーのカバー。アメリカでは「ドゥーキー」が発売されたあとヒットし、全米1位。
1994年。サウンドが厚くなり、ドラムが大幅によくなった。1回聞いて覚えてしまうようなポップなメロディーが何度も出てくる。バラードがないという意味では最初から最後までポップだが、疾走しているというほどではない。このアルバムの大ヒットで、メロディック・パンク、メロディック・ハードコアのジャンルが開拓され、歴史的な作品となった。「ウェルカム・トゥ・パラダイス」「バスケット・ケース」「シー」収録。全米2位、1000万枚。
1995年。シングル盤。メロディック・パンクがブームになるきっかけとなった曲。3曲で7分。
1995年。邦題「爆発ライヴ!」。ライブ盤。6曲のうち2曲はアルバム未収録曲。
1995年。前作と同路線だが、ヒットしてから2枚目ということで、それほどの衝撃はない。むしろ、大きな変化がなく、安心できる。曲が短くなり、1曲平均2分少々。「ギークはパンク・ロッカー」はラモーンズの「シーナはパンク・ロッカー」と関連があるわけではない。全米2位、200万枚。
1995年。邦題「ギークはパンク・ロッカー」。シングル盤。3曲で5分。アルバム未収録曲は1分半と1分強の明快なパンク。
1995年。シングル盤。ライブ2曲収録。
1996年。シングル盤。イントロはシカゴの「長い夜」に似ている。アルバム未収録曲はミドルテンポのオーソドックスな曲。
1996年。邦題「爆発ライヴ2!」。ライブ盤。
1997年。ベースも活躍するようになり、3人編成のバンドとして全ての楽器が相当の働きをしている。バイオリン、ストリングス、ホーンセクション等を取り入れ、曲によってはハードロックのようなギターソロが出てくる。曲がバラエティに富んでいる。全米10位、200万枚。
1997年。シングル盤。アルバム未収録曲の「エスピオナージ」はホーン・セクションが入ったインスト曲。
1997年。シングル盤。アルバム未収録曲3曲収録。「ロッティング」のみ1995年録音になっている。「インソムニアック」のときの録音か。「サフォケイト」はメロディック・パンク、「ユー・ライド」はミドルテンポのロックン・ロール。
1998年。シングル盤。ライブ2曲収録。
2000年。前作に続き、ホーン・セクションやブルース・ハープ、アコーディオン等の装飾的な楽器が使われ、バラエティ豊かだ。「ニムロッド」と同じ線上にあるサウンド。「ドゥーキー」とは異なる方向を向いているが、メロディーを主軸とする作曲の仕方は変わっていない。曲が減り、前作の18曲から12曲になった。全米4位。
2000年。シングル盤。2曲入り。とても覚えやすいメロディー。
2000年。シングル盤。アルバム未収録曲1曲。「アウトサイダー」はラモーンズ、「アイ・ドント・ウォント・トゥ・ノウ・イフ・ユー・アー・ロンリー」はハスカー・ドゥーのカバー。
2001年。ライブ盤。邦題「爆発ライヴ3!日本列島篇」。声の掛け合いがたくさん入っている。
2001年。ベスト盤。新曲2曲、アルバム未収録曲1曲収録。その他の曲は「ドゥーキー」から「ウォーニング」までのアルバムから4、5曲ずつ選曲。
2002年。邦題「シェナニガンズ~スーパー・ウラ・ベスト!」。
2004年。5部構成の曲が2曲あり、物語になっている。6曲目からセイント・ジミーが登場し、5部構成の12曲目まで出てくる。パンク・ロックとしては初のロック・オペラだという。オープニング曲から以前の曲のすべてを上回るすばらしい曲が立て続けに流れ、同ジャンルの他の作品を圧倒する。このジャンルの最高傑作であることは間違いない。サウンドもハードで、それぞれの楽器の切れがすばらしい。ドラムにもボーカルのクレジットがつき、3人ともボーカルをやれることになっている。
2005年。ライブ盤。過去のヒット曲と「アメリカン・イディオット」収録曲で構成。観客の合唱が大きい。爆発音や紙吹雪を噴射する音も入っている。現時点でのベスト盤としても通用する選曲で、演奏も安定。「アメリカン・イディオット」のあとにアルバムとしてのライブ盤を出したのはとてもタイミングがよかった。
2009年。邦題「21世紀のブレイクダウン」。前作に続き物語に沿って曲が作られている。アルバム全体を3部構成とし、21世紀(ここ数年)のアメリカ、あるいは世界が抱える問題を絡めている。「アメリカン・イディオット」では、批判の対象が分かりやすかったが、このアルバムでは対象が多岐にわたっており、その対象が我々自身でもあったりする。したがって、メッセージとしては「ひとりひとりが自分のできることをやっていこう」というところに落ち着く。目を向ける対象が第三者から自分自身に移ったことが最も重要な変化だと思われる。最後の曲は、ロック・オペラの最終曲として凝った形にはしていないので、意外と平凡に終わる。オープニング曲とエンディング曲の編曲をもう少し工夫すれば「アメリカン・イディオット」以上の評価になったかもしれない。
2009年。邦題「爆発ライヴ!赤坂篇」。ライブ盤。「21世紀のブレイクダウン」収録曲のほか、「バスケット・ケース」「ギークはパンク・ロッカー」など7曲収録。ホールではなくライブハウスなので、観客の歓声が近い。
2012年。シングル盤。日本盤シングルは10年ぶり。
2012年。メロディアスで前向きな曲ばかりを集めているアルバム。一貫したテーマはなく、グリーン・デイがメロディック・パンクの先駆者としてロックを牽引していたころの姿を、現代のサウンドで聞かせている。もともとボーカルのビリー・ジョー・アームストロングは声域が広くないので、歌えるメロディーの幅は広くないが、それをメロディーとサウンドと重ねたボーカルハーモニーで余りあるほど補っている。「トラブルメイカー」はゲス・フーの「アメリカン・ウーマン」のようなギターソロがある。「エンジェル・ブルー」のイントロはザ・クラッシュの「アイ・フォート・ザ・ロウ」に近い。歌詞にマイ・ブラッディ・ヴァレンタインが出てくる。「ステイ・ザ・ナイト」「レット・ユアセルフ・ゴー」「ロス・オブ・コントロール」もいい曲。12曲で42分。
2012年。前作と同じサウンド、曲調で、ややベースが目立つ。同じ時期に作曲した大量の曲を、3作に振り分けているような印象。オープニング曲と最後の曲はギターのみで演奏する。全体として歌詞は猥雑で、50年代、60年代から続くロックンロールの堕落的な部分、下品な部分、非抑制的な態度を描いている。「ワイルド・ワン」はスージー・クアトロの「ワイルド・ワン」と内容が同じ。
2013年。オープニング曲はストリングス、ホーンセクションが入る。最後の曲もピアノとストリングスが使われる。「ダーティ・ロットン・バスターズ」は3部作の中で特に長い6分の曲で、最初と最後の曲も5分近くあり、編曲に凝っている。メロディック・パンクの範囲内で、「ウノ!」がポップ、「ドス!」がロックンロール、「トレ!」がロックの色づけと言える。
2015年。「ウノ!」「ドス!」「トレ!」に収録された曲のデモバージョンを集めた企画盤。デモバージョンはアルバム収録曲に近い曲から初期のバージョンまでさまざま。未発表曲の「ステイト・オブ・ショック」はどのアルバムにも収録されなかった曲とみられるが、これもデモバージョン並みの録音となっている。
2016年。政治的ではないがメッセージ性の高いタイトルを付け、「アメリカン・イディオット」や「21世紀のブレイクダウン」に連なる名作を予想させる。ロックとして大きな音量で聴かせる部分と、イントロなどの注意を引かせる抑制した部分に明確な差を付け、聞かせたい部分のロックらしさを増幅している。イントロはほとんどの曲が奥に引っ込ませた音になっている。アルバムタイトルとサウンド上の工夫は、聞かせたいという熱意の現れだ。「バン・バン」は最も勢いのある曲。「アウトローズ」「ヤング・ブラッド」もいい曲だ。最後の「オーディナリー・ワールド」はほぼアコースティックギターの弾き語り。「ウノ!」「ドス!」「トレ!」の収録曲がこのアルバムに比べて見劣りしないのは、全体的に質が高いからだろう。
2020年。50年代、60年代のロック、ポップスに敬意を示すような曲を並べた。全体の曲調はポップなパンク、ガレージロックだが、至るところに名曲の一部を織り込んでいる。「ミート・ミー・オン・ザ・ルーフ」はシュープリームス風、「ステーブ・ユー・イン・ザ・ハート」はロックンロールをカバーしているビートルズ風、「グラフィティア」はフリーの「オール・ライト・ナウ」とバブルガムポップを合わせたような曲。「ジャンキーズ・オン・ア・ハイ」はジョーン・ジェット&ザ・ブラックハーツの「アイ・ラヴ・ロックンロール」を思わせるフレーズを使う。アルバムジャケットは「アメリカン・イディオット」の腕を再利用している。10曲収録で26分。
2024年。アルバムにテーマ性は持たせていないが、「レヴォリューション・レイディオ」と「ファザー・オブ・オール・・・」を合わせたような曲が並ぶ。「ジ・アメリカン・ドリーム・イズ・キリング・ミー」「ストレンジ・デイズ・アー・ヒア・トゥ・ステイ」などは「レヴォリューション・レイディオ」の系統、「コルヴェット・サマー」「スージー・チャップスティック」は「ファーザー・オブ・オール・・・」の系統。「アメリカン・イディオット」や「21世紀のブレイクダウン」のようなアルバムを作るのは、相当のエネルギーとアイデアが必要というのは理解できる。このアルバムは聞き手の期待を損なわずにバランスをとった。批判精神は持続しており、次作以降も期待できる。日本盤ボーナストラックの「フィーバー」はグラムロック。