GRAVE DIGGER

  • ドイツのヘビーメタルバンド。ボーカルのクリス・ボルテンダールを中心とする。
  • 80年代はスラッシュメタルに近いヘビーメタルだったが86年にポップ化。そのまま活動休止し、1993年に復活して「ライド・オン」「バック・トゥ・ルーツ」がヒットした。
  • 90年代後半から2000年代はイギリス史とヨーロッパの伝承物語をテーマとするヘビーメタルが多くなっている。

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HEAVY METAL BREAKDOWN

1984年。4人編成。ボーカルのクリス・ボルテンダールの歌い方は今も昔も変わらないが、曲は90年代初頭によく聞かれたスラッシュ・メタル。

2
WITCH HUNTER

1985年。ボーカルはウド・ダークシュナイダーに似ている。この当時、ドイツのヘビーメタル・バンドはみんなアクセプトと比較されたのだろう。「メタル・ハート」あたりと比べられたらどのバンドも不利だ。アリス・クーパーの「スクールズ・アウト」のカバー収録。

3
WAR GAMES

1986年。広島の原爆投下がコンセプト。結局アクセプトを超えられず。

4
STRONGER THAN EVER

1986年。未CD化。キーボードを使用し、バンド名も「ディガー」と変えた。全く別バンドになった。2曲だけCDで聞ける。ハード・ポップと評されるほどだった。

5
THE REAPER

1993年。復活作。格段に向上したクリス・ボルテンダールのボーカルがパワフルなヨルグ・マイケルのドラムに乗る。安定した演奏力は、じっくりと曲の良さを堪能できる。「ライド・オン」「スパイ・オブ・マソン」収録。

 
THE BEST OF THE EIGHTIES

1993年。「ヘヴィ・メタル・ブレイクダウン」から「ウォー・ゲームス」までの曲とデビュー・シングル盤の2曲、未発表曲3曲を収録。

SYMPHONY OF DEATH

1994年。ミニ・アルバム。8曲も入っている。タイトル曲は後の中世歴史物3部作をうかがわせる暗い低音コーラスが印象的。「バック・トゥ・ルーツ」はこの種のジャンルのスローガンとなりうる名曲。AC/DCのカバーもある。

6
HEART OF DARKNESS

1995年。「ウォーチャイルド」はイントロでスコットランド民謡が使われている。詩は悲しい。タイトル曲はベトナム戦争についての曲。あまりコンセプト盤とは言われないが、戦争がテーマになっている。

7
TUNES OF WAR

1996年。中世のスコットランド史をテーマにしたコンセプト・アルバム。以下、「エクスキャリバー」までを中世3部作と呼ぶ。スコットランドは英国のなかでもアイルランドに近い音楽性を持つ地域なので、ケルト風メロディーやバグパイプの音が随所に出てくる。オープニングの「ザ・ブレイヴ」は有名な「スコットランド・ザ・ブレイヴ」で、元歌には勇壮な歌詞がある。

8
KNIGHTS OF THE CROSS

1998年。十字軍遠征をテーマにしたコンセプト盤だが、詩の内容は叙事的ではなく、かなり批判的だ。少なくとも「一大叙事詩」と呼ぶには抵抗があるくらいにメッセージ性がある。キリスト教を利用しようとする(した)「キリストの代理人=法王など」に対する皮肉が主眼か。前作に続きピート・シールクがコーラス・アレンジを担当。

9
EXCALIBUR

1999年。「アーサー王物語」がテーマ。「アーサー王物語」は一般に中世の物語とされているが、実際の物語は6世紀くらいから始まっている。もちろん実話ではない。ジャケットに描かれている教会はゴシック様式なので、舞台設定は中世のようだ。キーボード奏者が正式メンバーとなった。メンバーの名前も登場人物になりきりで、サウンド、詩、ジャケット、ファッション等、すべてを同一コンセプトで固めようとする態度は、ドイツ・ロマン派の代表であるワーグナーの「総合芸術論」を実践していると言えよう。

10
THE GRAVE DIGGER

2001年。ギタリストにレイジのマンニ・シュミットが加入。グレイヴ・ディガーの作品全般に言えることだが、ある程度ヨーロッパ文化や言葉の背景について知識がないと詩の意味を理解するのは難しい。ワタリガラス(=レイヴン)がどういう意味を持つのか、なぜレオノールという名前が突然出てくるのか。再結成後のグレイヴ・ディガーは常に聞き手の好奇心を刺激している。

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RHEINGOLD

2003年。このアルバムから再び3部作が始まるという。このアルバムのテーマはワーグナーの「ラインの黄金」なので、次作以降は「ワルキューレ」「ジークフリート」「神々の黄昏」がテーマであろうことが予想される。オーケストレーション、コーラスともに重厚。

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THE LAST SUPPER

2005年。予定変更でコンセプト盤にしなかったという。したがって「ラインゴールド」に続くアルバムは次作以降に持ち越し。サウンドは従来の路線そのままで、オーケストラやキーボードはほとんど出てこない。ギターは2人いるような曲が多い。

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LIBERTY OR DEATH

2007年。自由を獲得するために戦った古今の歴史的できごとを扱うアルバム。「自由か死か」はギリシャの国のスローガン。また、アメリカ独立戦争でのパトリック・ヘンリーの演説で有名。オープニング曲は独立のために戦っていることになっているが、アメリカのことではなくギリシャ独立戦争のことだと思われる。「赤い色に警戒しろ」の赤い色とはオスマン・トルコの国旗と推測できる。「丘」とはオリンポスの丘を想像させるので、ギリシャを象徴させていると読める。「オーシャン・オブ・ブラッド」は旧約聖書の出エジプト記。彼とはモーゼのこと。「ハイランド・ティアーズ」はイギリス北部、スコットランド(ハイランド)のジャコバイトの反乱か。スコットランドの楽器であるバグパイプも使用される。「ザ・テリブル・ワン」はモスクワ大公国のイヴァン3世。「アンティル・ザ・ラスト・キング・ダイド」はフランス革命。「シャドウランド」はアメリカのクー・クラックス・クランについて。「フォアコート・トゥ・ヘル」は、一方が死ぬまで戦うというローマ帝国時代の剣闘について。「マッサダ」はイスラエル東部のマサダ要塞。古代ローマ軍に追われ、ユダヤ人967人が集団自決した断崖。アルバムのイメージ上、「ザ・リーパーズ・ダンス」は不要だ。

 
PRAY

2008年。シングル盤。「オーヴァーキル」はモーターヘッドのカバー。

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BALLADS OF A HANGMAN

2009年。ギターが1人増え、キーボード奏者を含む6人編成になった。キーボードは補助的なかかわり方になっており、ギター中心のオーソドックスなヘビーメタルだ。ギター2人はソロを取るより音の厚みを大きくする弾き方。これまでのグレイヴ・ディガーのサウンドを好意的に聞いている人は今回も安心して聞ける。「ロンリー・ジ・イノセンス・ダイズ」は女性ボーカルとデュエットしている。11曲で42分。

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THE CLANS WILL RISE AGAIN

2010年。ギター2人が抜け、ドメインのギター1人が加入、5人編成。「チューンズ・オブ・ウォー」以来のスコットランド史がテーマ。キーボードはあまり使われず、ほとんどはギター2人の5人編成のようなサウンドになっている。1曲目はバグパイプのイントロに続くハードな曲になっているが、物語優先の曲作りになっているため、怒濤の突進ばかりではない。

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CLASH OF THE GODS

2012年。ギリシャ神話がテーマ。前作よりもキーボードがやや増えているが、あくまでもサウンドはヘビーメタルだ。「ゴッド・オブ・テラー」はキーボードソロが含まれる。テーマは変わっても基本的なサウンドは変わらず、クリス・ボルテンダールの歌い方も同じ。ややコーラスが増えたか。

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RETURN OF THE REAPER

2014年。特にテーマを設けず、個々の曲がそれぞれ独立している。アルバムタイトルも「ザ・リーパー」に戻ることを宣言しているので、テーマを持たないことを当初から意識していたとみられる。サウンドに変化はない。「タトゥード・ライダー」はジューダス・プリーストの「ターボ・ラヴァー」に近い。ボーナストラックの「ジ・エンペラーズ・デス」は本編に入れるべきだった。「レベル・オブ・ダムネイション」はブラック・サバスの「パラノイド」のメロディーを一部使い、ジューダス・プリーストを思わせる歌詞も出てくる。

EXHUMATION(THE EARLY YEARS)

2015年。キーボードが抜け4人編成。「ヘヴィ・メタル・ブレイクダウン」から「ストロンガー・ザン・エヴァー」までの曲を現在のメンバーで再録音。13曲収録。ここでも「ストロンガー・ザン・エヴァー」は1曲しか選ばれず、冷遇されている。「シュート・ハー・ダウン」はEP盤から選曲されているのでアルバム収録曲ではない。ボーナストラックの2曲は新曲。

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HEALED BY METAL

2017年。他のいくつかのヘビーメタルバンドと同様、中学生から成長していないかのような自己肯定感と全能感があり、全能感は悪魔のような存在に仮託されている。グレイヴ・ディガーに限らず、自ら作曲し演奏するアーティストは音よりもメッセージ性が評価を大きく左右する。「リターン・オブ・ザ・リーパー」以降、コンセプトアルバムにしなくなった分、アルバムから浮き出るメッセージの幼稚さが目立ってしまう。サウンドは変わらないが、1990年代以降はそれもマイナスの要素だ。