1997年。ボーカル2人、ドラム、ギター、ベース兼キーボード兼ギターの5人に、サックス、トランペットが参加している。制作するときにはジャンルに対する意識はなかったと思われる。ホーン・セクションが含まれることよりもリズム・マシーンのようなドラム・サウンドが出てくるところで、ハードロック側の過小評価が生まれたのではないか。高音と低音に厚みのあるコーラス・ハーモニーをつけ、メーン・ボーカルはその中間に位置するメロディーを歌う。つまりメーン・ボーカルが内声となっており、コーラス重視ポップスの王道サウンドを作っている。
1998年。前作と同路線。エアプレイが好きだったというメンバーの趣味を反映している。
2001年。ホーン・セクションをなくし、ドラムとギターをロック寄りの音にして、ハードロック・ファンにもアピールしうるサウンドになった。ハードなアダルト・オリエンテッド・ロック。ボーカルはテラ・ノヴァに似ている。オープニング曲の「フィーリング・ストレンジリー・ファイン」と次の「ドント・ウォント・トゥ・ノウ」はすばらしい。このバンドの音楽的特徴を端的に表している。アルバムの総合的芸術性を考えることには関心がないようだ。アルバムを一個の作品としてではなく、曲の寄せ集めとして考えていたり、メンバーの構成上ライブでの再現が不可能であったりするところを見ると、音楽に対する姿勢はアメリカのアダルト・オリエンテッド・ロックに近い。北欧出身という経歴は無視されてもよい。
2002年。ロックン・ロールが出てこないところがアメリカのバンドではないことを主張している。同時にアメリカでは売れにくいことも分かる。前作と同路線。
2004年。ギターが交代。ややハードロックに近くなったが、爽快なコーラスと突き抜けるようなメロディーは変わらない。高品質であるが、個々の曲が際だった印象を持たれにくく、どれも同じようなサウンドと感じられる恐れもある。
2010年。ボーカル2人とギター兼ベース兼キーボードの3人編成。事実上の再結成。デビューからの3枚のうち、1枚でも聞いたことがあれば、そのサウンドがすべてのアルバムに通じるサウンドであり、このアルバムも以前と同じだ。ハードロックを維持し、コーラスはいつも通り分厚く、突き抜ける。「サーチ・フォー・ライト」は聖飢魔IIのボーカル、デーモン小暮が参加している。
2011年。ギターにTOTOのスティーヴ・ルカサー、エアプレイのジェイ・グレイドン、ティム・ピアース、ロバート・サールが参加している。ドラムはグレッグ・ビソネット。これまでとサウンドは同じで、ギターの活躍度が上がっている。全体のメロディーを作っているのがキーボードであるのは変わらない。デビュー以来ずっと爽快だ。「ウィンズ・オヴ・チェンジ」は「ザ・ブック・オブ・ハウ・トゥ・メイク・イット」の「フィーリング・ストレンジリー・ファイン」に近い曲調。
2007年。グランド・イリュージョンのギターとベース兼キーボード兼ギターが、ボーカルを迎えて結成したバンド。ボーカルはエアプレイのジェイ・グレイドンの「エアプレイ・フォー・ザ・プラネット」でボーカルだったシャーウッド・ボール。ドラムはゲスト参加で、デイビッド・リー・ロスのグレッグ・ビソネットが演奏している。全曲をベース兼キーボード兼ギターのアンダース・リドホルムとシャーウッド・ボールの2人で作曲し、曲によってそれ以外の作曲者が加わる。ボーカルの声域はそれほど広くなく、声も枯れ気味だ。バックの演奏はグランド・イリュージョンと同じ。コーラスも厚い。アップテンポの曲が少なく、やや勢いに欠く。若い洋楽ファンよりも年齢層の高いファンを想定するとバラードやミドルテンポ中心になるのはやむを得ないか。