GORILLAZ

  • ブラーのボーカル、デーモン・アルバーンと漫画家のジェイミー・ヒューレットによるプロジェクト。
  • バンドとしての実態はなく、デーモン・アルバーンが中心的に制作している。
  • エレクトロニクス、ヒップホップのビートを多用した人工的なサウンド。アルバムごとに音の幅や種類を広げている。

1
GORILLAZ

2001年。ブラーのボーカル、デーモン・アルバーンによるプロジェクト。メンバーは架空の4人ということになっており、イギリス出身のボーカル、ベース、アメリカ・ニューヨーク出身のアフリカ系のドラム、日本・大阪出身の女性のギターとなっている。サウンドはエレクトロニクス、シンセサイザーを多用したダブ、ヒップホップが多く、ロックバンドのサウンドではない。「パンク」「M1A1」はガレージ・ロックだが、サウンドとしては例外の部類に入る。全曲にボーカルが入っている。「クリント・イーストウッド」収録。

 
G SIDES

2001年。日本で未発表になっている曲を集めた企画盤。海外盤のシングル盤収録曲が中心。「ファウスト」はチボマットの羽鳥美保による日本語の歌詞がついている。10曲収録。

 
LAIKA COME HOME/SPACEMONKEYZ VERSUS GORILLAZ

2002年。邦題「ライカ犬、宇宙からの帰還」。「ゴリラズ」収録曲のうち12曲をリミックス。ダブ、レゲエ調が多く、邦題のような宇宙を感じさせる未来的なサウンドはほとんどない。

FEEL GOOD INC

2005年。EP盤。4曲入り。

2
DEMON DAYS

2005年。一般性のあるヒップホップ寄りのポップスになった。2000年代以降のエレクトロニクス、ドラム・マシーンに慣れ親しんでいる世代は、バンドサウンドよりもエレクトロニクスに傾いたサウンドに好意的なのではないか。「ラスト・リヴィング・ソウルズ」「オー・グリーン・ワールド」「エヴリ・プラネット・ウィ・リーチ・イズ・デッド」はバンドサウンドに近い。ストリングスはシンセサイザーのほか、実際の弦楽器奏者も多く使われている。「ダーティ・ハリー」は少年少女合唱団、「ドント・ゲット・ロスト・イン・ヘヴン」「ディーモン・デイズ」はゴスペル合唱団が参加しており、ネナ・チェリー、デ・ラ・ソウル、アイク・ターナー、ハッピー・マンデーズのショーン・ライダー、デニス・ホッパー等が参加している。ギターやベース、ドラムはもちろん、ボーカルが誰かということもアルバムの中ではあまり意味を持たなくなっている。「フィール・グッド・インク」はiPodのCM曲。ジャケットは初回生産限定版。

 
DARE

2005年。EP盤。ハッピー・マンデーズのボーカル、ショーン・ライダーが参加している。「クリント・イーストウッド」のライブはバンドサウンドで、デ・ラ・ソウル、ファーサイドのブーティ・ブラウンが参加している。

 
DIRTY HARRY

2005年。EP盤。タイトル曲はファーサイドのブーティ・ブラウンが参加。「ホンコンゲイトン」はアルバム未収録曲。

 
KIDS WITH GUNS/EL MANANA

2006年。EP盤。「ストップ・ザ・ダムズ」はアルバム未収録曲。

D SIDES

2006年。「ディーモン・デイズ」収録曲のリミックス・バージョンやシングル盤のB面収録曲を集めた企画盤。

3
PLASTIC BEACH

2010年。前作よりさらにポップでメロディアスになった。オープニング曲はオーケストラによるクラシック風の序奏。3曲目の「ホワイト・フラッグ」もイントロの1分が室内合奏。16曲のうちゴリラズが単独で演奏しているのは「オン・メランコリー・ヒル」と「ブロークン」の2曲で、残りの曲はゲスト参加を伴っている。楽器の音が明確で、バンドサウンドの量も増えた。ゲストがボーカルの場合、ヒップホップになることが多い。単独で演奏する2曲はキーボード主体のロック。ストリングスやホーン・セクションも使い、楽器編成上の不自由はなかったようだ。デーモン・アルバーンがかかわったアルバムとしてはブラーも含めて最高の部類に入るのではないか。ただ、デビュー当初のエレクトニクス、ダブ、ヒップホップ路線からかなり古風になっているのは事実で、それが反感を買う部分もあるだろう。「ウェルカム・トゥ・ザ・ワールド・オブ・ザ・プラスティック・ビーチ」はスヌープ・ドッグが参加。「スタイロ」「クラウド・オブ・アンノウイング」はボビー・ウーマックが参加。「サム・カインド・オブ・ネイチャー」はルー・リードが参加。「グリッター・フリーズ」は70年代のグリッター・サウンドを意識している。

THE FALL

2011年。2010年の秋に、デーモン・アルバーンがiPadで制作したという。公演の先々で録音しているためサウンドの多彩さに制限を受けており、他のアルバムに比べて音色の豊かさに欠ける。多くの曲のタイトルに地名が含まれており、録音された場所と概ね一致している。特定のジャンルにつながるイメージを持つ都市もあるが、そのジャンルを意図的に取り入れた曲はほとんどない。旅行の途中に記念写真を撮る感覚で、録音もしてみたというようなアルバム。

THE SINGLES COLLECTION 2001-2011

2011年。シングル曲を収録。アルバムに収録されていないシングル曲も含む。

4
HUMANZ

2017年。ストリングスや伝統的楽器が減り、シンセサイザー中心のサウンドになっているものの、90年代の雰囲気は残している。ヒップホップよりもソウル、シンガー・ソングライターのアーティストの方が多く参加しているため、聞き取る音としてはエレクトロニクスよりもボーカルメロディーになる。「バステッド・アンド・ブルー」以外の曲はゲストのボーカルが歌う。デーモン・アルバーンが関わるアルバムは、ブラー時代と同じように、枚数を重ねるごとに若年層受けするサウンドから中間層向けのサウンドに変化している。20曲のうち6曲はイントロと間奏となっており、実質的に14曲収録。グレイス・ジョーンズが参加した「チャージャー」は目立つ。「レット・ミー・アウト」はステイプル・シンガーズのメイヴィス・ステイプルズ、「サブミッション」はブラーのグレアム・コクソンがギターで参加している。「ウィ・ガット・ザ・パワー」はオアシスのノエル・ギャラガーが参加している。ジャン・ミッシェル・ジャールが参加しているのは意外だ。

5
THE NOW NOW

2018年。全曲でデーモン・アルバーンがボーカルをとっている。「ザ・フォール」に近い作風だが「ザ・フォール」よりも音色は豊だ。もともと疑似的なバンドなので、バンドらしさやメンバーの個性を求めるのは難しいのかもしれないが、ほとんどの音をシンセサイザー、エレクトロニクス等でまかなってしまうと味気ない。曲ごとにゲストアーティストが参加する手法は疑似バンドの可能性として分かりやすく、アニメーションや映像とリンクする手法も理解しやすい。それ以外の新しい何かを提示できるかどうかが問われる。