2006年。ハードコア・パンクバンドとして認識され、ボーカルの歌い方や曲の勢いはまぎれもなくハードコアだ。しかし、一般にイメージされるハードコアよりはバンドサウンドとして聞きやすく、曲が長い。13曲のうち9曲は5分以上ある。歌詞はボーカルとギターの1人が書いているが、抽象性に富み、ジャケットと関連づけた神話的な物語をうかがわせる。オーウェン・パレットが参加。
2008年。ギターを中心とするバンドサウンドは変わりないが、キーボードやゲストボーカルが増えた。ボーカルがハードコアというだけで、バンドサウンドはメロディアスなロックだ。一般的なハードコアのバンドと異なるのは、曲が抽象性に富むことだ。曲は3分から4分台が多くなった。アルバムの最初と最後はフルートになっている。「ゴールデン・シール」はムーグを使ったインスト曲。「ルッキング・フォー・ゴッド」はギター中心のインスト曲で、ベース、ドラムは出てこない。このアルバムで日本デビュー。
2011年。アルバム全体が物語となっており、4幕18曲のハードコア・オペラとなっている。ハードコアでロックオペラ的なアルバムを作ったこともさることながら、物語の構築の仕方として進行役を担っているオクタヴィオを「信頼できない語り手」として用いたことは特筆すべき技巧だ。アルバム全体を単に物語風にしたコンセプト盤とはレベルが違う。主人公が若い男性工場労働者であることと、主人公が出会いから喪失、精神的復活という過程を経ることは、聞き手の共感を得やすい。日本盤の対訳は幼稚。ジャケットは主人公が働いていた工場の生産物をハート形にしている。ギターが3人いることを活用し、音の加工も含めて多様な響かせ方を作っている。
2014年。アルバムの最初はトイピアノ、最後はピアノで終わる。最初が子ども、最後が大人を象徴していると解釈できる。今回は物語にはなっていないが、歌詞は内省的だ。自分は何者なのか、成長する前の自分と現在の自分はどう違うのか、成長とともに自分も周囲も精神的に変化していく中で、理想を維持することの葛藤などを描く。このバンドはデビュー以来、誰が歌詞を書いているのかを曲ごとに明示しているが、ボーカルが書く歌詞は内省的で、ギターが書く歌詞はそれほど内面に深入りはしていない。このバンドの中核はボーカルにあると言える。ジャケットがギリシャ彫刻風になっているのは、固定されて自由な動きを奪われた象徴としての人間、見られる存在としての人間という意味に加え、客観的に自己を認識する行為、すなわち哲学的な営みが古代ギリシャに始まっているというのもあるだろう。