FONTAINES D.C.

フォンテインズD.C.はアイルランドのロックバンド。ギター2人の5人編成。

1
DOGREL

2019年。キーボードやシンセサイザーの使用はほとんどなく、サンプリングやプログラミングもなく、バンドサウンドだけで音を構成する。メロディーを歌う曲と歌詞を読む曲に分かれ、歌詞を読む曲はメロディーの抑揚が少なくなり曲もやや性急だ。それがポストパンクのイメージにつながっている。

2
A HERO'S DEATH

2020年。緊張感と浮遊感を漂わせるようになった。音階の輪郭もあいまいになっている。ポストパンクというよりはオルタナティブロックだろう。「ラブ・イズ・ザ・メイン・シング」「ア・ルーシッド・ドリーム」「リヴィング・イン・アメリカ」は前作になかったような曲調で、「ア・ルーシッド・ドリーム」と「リヴィング・イン・アメリカ」はライブでいくらでも引き延ばせるようなサイケデリックな曲だ。ギター以外の背景音もあり、今後、音の加工、編集の方向に行くと面白い。

3
SKINTY FIA

2022年。アイルランド人の自己認識や感情を出す曲が増えた。オープニング曲とアルバムタイトル曲をともにアイルランドにまつわる曲としているのは、主張の表れだろう。アイルランド人であるバンドが、アイルランドを出てイギリスで活動する際に受けるさまざまな困難は、世界のあらゆる場所でみられる普遍的な現象だ。多数を占める集団の中に少数の集団が来て、その文化や思想の違いを見せられると、閉鎖性に安住していた多数派が落ち着きを失い、少数派を攻撃する。それに対して少数派が正当性を訴える状況は、環境問題や女性保護といった世界的問題から、国家間、民族間、地域間の差別意識の問題まで及ぶ。アイルランドとイギリスの政治的関係に由来する曲をわざわざオープニング曲にしたことがアルバムの評価を高めている。「ザ・カップル・アクロス・ザ・ウェイ」はアコーディオンの弾き語り。アルバムタイトル曲は音の加工が以前よりも強く、90年代から2000年代のエレクトロ音楽を思わせる。