2008年。キーボードを含む5人編成。アメリカ出身。5曲入りEP。残響の大きいボーカル、アコースティック中心のギター、高音のコーラスで、北方の荒涼感を若干漂わせる。
2008年。バンドらしさを感じさせるのは「ラギッド・ウッド」「クワイエット・ハウシズ」くらいで、多くの曲はコーラスかアコースティック・ギターの独奏から始まる。1960年代末から70年代初頭の日本のフォークによくある、やや暗めのサウンドに似ている。クロスビー・スティルス・ナッシュ&ヤングから派手さや力強さを取り去った、と表現しても、なにがしかの浮世離れした雰囲気がある。あまり世俗性が感じられず、大きな空間の宗教施設で静かに演奏しているイメージだ。ニルヴァーナと同じサブ・ポップ・レーベルから出ている。
2011年。ボーカル兼ギター、ギター、ベース、ドラム、キーボード、キーボード兼ベースの6人編成。中音域から高音域のボーカルとコーラス、明るくないが陰鬱でもないメロディー、やや深いエコーがアイスランドのシガー・ロスを思わせる。アメリカなのでアコースティックギターが使われているが、サウンドの方向としては共通している。主流のロック、ポップス、ヒップホップから相当の距離を置いたアート志向のフォークで、隔離された世界の音楽を感じる。
2017年。ドラムが抜け、ボーカル兼ギター、ギター、ベース兼ギター2人、キーボードの5人編成。アコースティック楽器を中心とするバンドサウンド。ボーカルは1声と2声を使い分ける。使われる楽器の数や同時に重なっている音の数は多いが、重なり方が同時ではないため分厚さを感じさせず、むしろ適度にすき間がある。曲には実際に歌われる歌詞以外の簡単な状況説明がついているものの、東洋的で曖昧な余韻を残す。「カシアス、-」と「-ナイアーズ、キャサディーズ」は曲間なしに収録されているが、曲の雰囲気はいったん切れる。オープニング曲の「アイ・アム・オール・ザット・アイ・ニード/アローヨ・セコ/サムプリント・スカー」は曲のそれぞれの部分にタイトルを付けて並べたような曲名になっている。曲とタイトルが一対一で対応することを当然とせず、音楽が先にあって、後から呼び名が便宜的に付けられる方式を「サード・オブ・メイ/大台ヶ原」にも適用しているようだ。
2020年。ボーカル兼ギターのロビン・ペックノルドが他のメンバーの演奏を借りず、多数のゲスト参加を得て録音している。事実上ロビン・ベックノルドのソロアルバムとなっている。これまでのアルバムに比べ、暗さは幾分減り、曲によっては明るさがある。アコースティックギター、エレキギター、ピアノ、キーボード、トランペットなどがメロディーを形作る。電子楽器全盛の時代に伝統的なバンド演奏を続け、カントリーではない曲調でアコースティックギターを多用する音楽性は、それ自体が広い意味でのロックと言える。日本盤は2021年発売。