1991年。デビュー盤として録音されたが当時は発売されなかった。2002年に発売。典型的なデス・メタルの曲が揃う。5曲は再録音されて「ソウル・オブ・ア・ニュー・マシーン」に収録されている。
1992年。アメリカ・ロサンゼルス出身。4人編成。サウンドはデス声を多用したハードコア寄りヘビーメタル。曲によってはデス声と普通のボーカルを両方使う。当時の最も激しい音楽の部類。コンピューター・プログラムを使ったかのような人工的サウンドは曲の中にはほとんど入ってこないが、短い曲間曲に使用されている。
1993年。「ソウル・オブ・ア・ニュー・マシーン」の曲のうち4曲をリミックスした企画盤。
1996年。曲の中に人工的機械音を大きく取り入れ、近未来的な印象を与える傑作。ボーカルとバックの演奏はパンテラ型。オープニング曲から他のバンドとも前作とも明確な違いを提示するサウンドだ。「ニュー・ブリード」はこのバンドの象徴的な曲で、内容もすばらしい。90年代のラウド・ロックでは最も重要なアルバムの一つ。カバー1曲収録。インダストリアル・サウンドが広く受け入れられていたドイツとイギリスでヒットしたが、アメリカではヒットしなかった。
1997年。「ソウル・オブ・ア・ニュー・マシーン」と「ディマニュファクチャー」の曲を4人のテクノ・アーティストがリミックスした企画盤。ロックというよりはほとんどテクノだが、これがバンドとして初のヒット作品。全米158位。
1998年。「ディマニュファクチャー」のようないわゆるインダストリアル風の曲もあり、従来のデス声、パンテラ型ボーカルで歌われるところもある。このアルバムは通常のメロディーがついたボーカルが多く、サウンドも人工的な音よりもキーボードを弾いているような音が多い。アルバムそのものは物語になっており、2079年の世界を描いている。曲間の効果音も物語の説明に従っている。そうしたコンセプトがなくても十分質の高いアルバムで、特に「リザレクション」はストリングスのようなキーボードがすばらしい。一度聞いただけで覚えてしまうメロディーで、曲の構成、コーラスの出来とも突出している。全米77位。
1999年。シングル盤。未発表曲3曲収録。「カーズ」はゲイリー・ニューマンのカバーで、ボーカルもゲイリー・ニューマン。キーボードは「リザレクション」の雰囲気。あとの2曲は従来のフィア・ファクトリーの音。
2001年。前作とあまり変わらないが、人工的なサウンドを形作る要素が、打突音よりもコンピューター音となった。工業的というよりは電子的である。ボーカルは「ディマニュファクチャー」のころに戻り、前作ほどメロディアスではない。最後の「(メモリー・インプリンツ)ネヴァー・エンド」だけは「リザレクション」の路線だが、曲は普通だ。「バック・ザ・ファック・アップ」は本格的にラップを取り入れている。全米32位。
2003年。解散が決まってから、リミックスやライブなどを集めた企画盤。オープニング曲は4人のメンバーによる最後のスタジオ録音。ボーカルが全部分ゲイリー・ニューマンによる「カーズ」、「ニュー・ブリード」「リザレクション」「ゼロ・シグナル」のミックス違い等収録。
2004年。再結成。中心人物だったギターのディーノ・カザレスはいない。ベースは元ストラッピング・ヤング・ラッドのメンバー。以前の人工的サウンドはほとんどなく、キーボードも少ない。最後の「アセンション」はこれまでと同じように長く、キーボードで雰囲気を作っている。「ソウル・オブ・ア・ニュー・マシーン」のころのような、デスメタルの激しさを持つ曲が多い。日本盤ボーナストラックでニルヴァーナの「スクール」のカバーをしている。
2005年。前作の路線。90年代のラウドロックをデスメタル寄りにしたサウンド。ハードな音を好むロックファンは常に存在するだろうが、このサウンドはかなり時代錯誤的だ。ギターとドラムが作曲し、ボーカルが作詞する。サウンドは作曲者の好みを忠実に反映していると言える。曲の善し悪し以前にサウンドとして大きな支持を得られるとは思えない。「スーパーノヴァ」だけはやや雰囲気が異なり、メロディーが明るい。コーラスも多声だ。「アイ・ウィル・フォロウ」はU2、「ミレニアム」はキリング・ジョークのカバー。
2010年。ギターが交代し、ディーノ・カザレスが復帰。ベースとドラムを入れ替え、ボーカルとギターが主導して制作している。前作から作曲者が異なっており、「アーキタイプ」「トランスグレッション」のフィア・ファクトリーとは異なるバンドと解釈できるが、バンド名はフィア・ファクトリーとして継続している。ボーカルのバートン・C・ベルが機械文明や機械化による人間性への影響をテーマに歌詞を書いており、フィア・ファクトリーが持つバンドのイメージとサウンドをリンクさせている。ギターにディーノ・カザレスを復帰させてサウンドを解散前に戻し、バンドが自らの立ち位置を再確認したアルバムと言える。
2012年。ベース、ドラムが抜け2人編成。ディーノ・カザレスがギターのほか、ベース、プログラミングも担う。人格を持った人間型機械が、人間とは何かを問い、世界を救うというコンセプトアルバム。人間の世界が荒廃した理由として、人間の不寛容な態度を挙げているところは鋭い。荒廃の要因が価値観の違いではなく心性の問題だと指摘し、他者を理解しようとする態度と行動が人間の世界を改善すると訴えている。他者を理解する態度は他者の死を想像することと同義であるため、死に関連する物語が曲を構成する。歌詞の基になる物語を作っているのはボーカルのバートン・C・ベルで、アルバムタイトルの「ジ・インダストリアリスト」を主人公としている。物語の主人公を自らの代弁者として仮想し、自分たちの音楽が世界を救うという結末にしている自惚れたコンセプト盤はよくあるが、このアルバムにそのような幼稚さはない。物語の筋立の中に音楽の重要性は含まれず、触れられてもいないからだ。従ってバンドの演奏は、形式的にはサウンドトラックに近い。リズムにプログラミングを使っていることもあり、人工的な世界のイメージをうまく出している。曲調は攻撃的で、物語を理解しなくてもかつてのインダストリアル・ロックを再現したかのようなサウンドで十分楽しめる。「ヒューマン・オーグメンテイション」は映像的な背景音とともに「ジ・インダストリアリスト」がつぶやく9分の曲。
2007年。フィア・ファクトリーのギターだったディーノ・カザレスが結成したバンド。ボーカル、ギター、ドラムの3人編成で、ベースはディーノ・カザレスが演奏している。ライブで同時にこなせないので、活動を続けるのであればベースの加入が必要になる。ラウド・ロックを大きくハードコア寄りにしたサウンド。ドラムとギターの切れがよく、フィア・ファクトリーのどのアルバムよりも激しい。ドラムは高速で、ギターの音の刻みと同時に演奏されることが多く、音が塊になって押し寄せる。