1992年。ギター2人の5人編成。ベースは元ジーノのウレ・リトゲン、ボーカルはV2のトミー・ハート。アメリカのハードロックを聞くようなロック・ファンにもアピールしうるドイツのバンドはウォーロック、ボンファイア以来。ドイツの地域性を感じさせない世界標準のメロディー。「ワン・ステップ・クローサー」「アウト・オン・ザ・ラン」「ロング・ゴーン」収録。
1993年。エルヴィス・プレスリーの「イン・ザ・ゲットー」のカバーと未発表曲1曲。あとはデモやシングル・バージョン。「インザ・ゲットー」はヒット曲で、洋楽ファンからすれば有名曲なのでアレンジの仕方が重要になってくるが、ごく普通だ。新曲はアルバムに入ってもおかしくなかった。これ以降、シングルにいい曲を入れることが定番になっていく。
1993年。アルバム1枚しか出してないが早くもライブ盤。ジーノの「イースタン・サン」、永六輔作詞、中村八大作曲、坂本九の「スキヤキ」、ホランド・ドジャー・ホランド作曲の「ミッキーズ・モンキー」(スモーキー・ロビンソン&ザ・ミラクルズ)のカバー収録。
1995年。「フェア・ウォーニング」よりはミドル・テンポの曲が増えた。マイナー調の曲が哀愁を感じさせるのはその通りだが、ほとんどの曲がマイナー調では、哀愁も埋没する。哀愁のメロディは、ハードな曲の中にあってこそ見栄えする。トミー・ハートのボーカルはすばらしい。「ザ・ハート・オブ・サマー」「バーニング・ハート」収録。
1995年。未発表曲1曲。
1995年。8曲のうち6曲は地元ドイツでのアコースティック・ライブ。「4」でドラムをたたくことになるフィリップ・カンダスがパーカッションで参加している。残りの2曲は「ホワット・ディド・ユー・ファインド」と「レイン・ソング」のバージョン違い。
1997年。前半5曲は怒濤のメロディライン。後半もミドル・テンポの中にフックを持たせた曲が差し挟まれる。ヘルゲ・エンゲルケのスカイ・ギターが天を突き抜けている。ドイツのメロディアス・ハードロックの傑作。「エンジェルズ・オブ・ヘブン」「セイブ・ミー」「オール・オン・ユア・オウン」「アイル・ビー・ゼア」収録。
1996年。未発表曲1曲はオーケストレーションを使った名曲。これが「ゴー!」に入ればさらに傑作だった。
1997年。未発表曲2曲収録。このうち「カム・オン」は発売当時から人気で、来日公演でも演奏された。この曲が「ゴー!」に入っていれば神々しい大傑作だった。
1997年。ベスト盤。すべて既発曲で、買う意味を見いだせない。
1998年。アルバムを出すごとにライブ盤を出している。ドラムのC.C.ベーレンスが脱退したので代役にフィリップ・カンダス、ギターのサポートとしてサンダーヘッドのヘンニ・ウォルターが参加している。新曲のスタジオ・レコーディングはいずれも質を保っている。
2000年。正式のドラムは不在。1曲はC.C.ベーレンス、それ以外はフィリップ・カンダスが叩いている。「ゴー!」を上回る名盤。メロディアスなハードロックの手本になりうる出来。しかし、これまでの曲の使い回し的フレーズが頻繁に出てくる。版権はプレイング・マンティスと同じくバーン・ミュージックにある。このアルバムで解散。
2000年。未発表曲1曲。
2000年。アルバム未収録曲は明るめ。既発曲のバージョン違いを多数収録。シングル・カットするなら他にもっといい曲があるのではないか。
2001年。ベスト盤。既発曲のバージョン違い3曲を含む。
2006年。再結成。シングル盤。ドラムはC.C.ベーレンス、ギターはヘルゲ・エンゲルケ1人の4人編成。タイトル曲は「バーニング・ハート」の路線。あとの2曲は、フェア・ウォーニングにしては普通の出来だ。
2006年。「ゴー!」から「4」の路線。これまでと同じなので刺激は少ない。曲調が似ていることが多いのと、トミー・ハートが一本調子の歌い方なので、ひっかかるところがなくアルバムが過ぎていく。曲の質が低いわけではない。むしろ高い方だ。大きく変わらないことを望まれ、その路線に近いかどうかで評価が定まるような状況は、アーティストにとって不幸だ。「テル・ミー・ライズ」「ジェネレーション・ジェダイ」収録。
2009年。「ゴー!」以来変わらない路線。ひとつひとつの曲は水準以上にもかかわらず、全体としてそれほど高い評価にならないのは、フレーズ、メロディーが固定化されているからだ。メロディアスな曲を売りにするアーティストだったとしても、そのメロディアスさはある程度新鮮味を伴っていないと感動が薄れてくる。初回盤は2枚組で、2枚目にはアルバム未収録曲2曲、アルバム収録曲のバージョン違い4曲が入っている。版権はバーン・ミュージック。日本盤ボーナストラックはないので、事実上日本のみの発売と解釈しても構わないと思われる。
2013年。ギターのヘルゲ・エンゲルケ、ベースのウレ・リトゲンを中心に作曲され、ボーカルのトミー・ハートも14曲のうち3曲に関わっている。トミー・ハートが関わった曲は曲調がソウル、ブルース寄りになっており、ロックンロール、ハードロックが多い他の2人に挟まる形で単調さを解消する役割を持つ。再結成以降は一貫したメロディアスなハードロックで、デビュー時と比べても曲の傾向にあまり変化がない。ジャケットは「レインメーカー」の続編となっており、アメリカを意識しているとも解釈できるが、このサウンドのままでは永遠にアメリカで成功できない。「キープ・イット・イン・ザ・ダーク」は「エンジェルズ・オブ・ヘヴン」の路線。