EQUILIBRIUM

エクリブリウムはドイツの民謡メタルバンド。ギター兼キーボード奏者を中心とする6人編成。他の民謡メタルバンドと異なり、民族楽器はシンセサイザーで代用する。歌詞はドイツ語。

1
TURIS FRATYR

2005年。邦題「神々の紋章」。ギター兼キーボードを中心とする4人編成で、ドラムは不在。ドイツ出身。ボーカルはデス声で、メロディーはオーケストラ、木管楽器、アコーディオンを中心とするシンセサイザーが主導する。ドラムはドラム・マシーンを使用し、ギターはベースとともにドラムとシンセサイザーの間を埋める。スピーディーなので、サウンドとしては民謡の要素が強いメロディック・デス・メタルにも近い。歌詞はドイツ語で、北欧神話を歌う。全曲に邦題がついている。

2
SAGAS

2008年。ドラムが加入し5人編成。サウンドは前作の延長線上にあるが、曲をシンセサイザーで埋め尽くさず、各楽器が単独で演奏される部分を適度に組み入れた。これによってギター、ドラムが随時目立つようになり、曲にめりはりができている。メロディーは前作よりさらに覚えやすく、この手のサウンドにしては珍しくハードさと両立している。オープニング曲の「序章」は2曲目へのイントロではなく、「序章」というタイトルの独立した1曲。最後の「マナ」は16分を超えるインスト曲。構成がいいのか、それほど長くは感じない。

3
REKREATUR

2010年。邦題「再創神」。ボーカルが交代。キーボードがメロディーをけん引し、ギターはリズム楽器またはキーボードとの併走が多い。「太古の時より」は明るいメロディーの方が多い。どの曲も音で埋め尽くされているが、メロディーやリズム転換がいいので押しつけがましさを感じない。ボーカルがなくても成り立つアルバムだ。最後の曲は13分。

WALDSCHREIN

2013年。邦題「神碧の社」。EP盤。タイトル曲のみが新曲で、「嵐を呼ぶ漢」は「神々の紋章」収録曲の再録音。「破邪の神槌」はデビュー前に作曲した未発表曲の再録音。「ヒンメルスラント」はゲーム音楽のカバー。

4
ERDENTEMPEL

2014年。邦題「源祭壇」。キーボードがつくるメロディーをデス声で歌うヨーロッパ型ヘビーメタル。デスメタル由来のメロディック・デスメタルにある衝動昇華的な威圧感はなく、2000年代以降のヨーロッパ型ヘビーメタルにデス声のボーカルがいるというサウンド。「笛吹き呑んだくれの誓い」「居酒屋ガウディで半狂乱」は、1980年代にザ・ポーグスが陽気な踊りやすいアイリッシュ・パンクをロックに持ち込んだのと同様に、民謡メタル、ヨーロッパ型ヘビーメタルでこれを再現している。

5
ARMAGEDDON

2016年。メロディーが普遍性を持ち始め、ヘビーメタル以外のジャンルに進む可能性を秘めたサウンドになっている。演奏は民謡メタルを維持しつつ、メロディーと編曲で民謡メタルを脱しようとしている。「カタルシス」「ハイマート」「コヤニスカッツィ」では一般的なロックでも通用するポップさがある。「ボーン・トゥ・ビー・エピック」はオルタナティブロックを通過した編曲だ。「ヘルデン」は2010年代以降のエレクトロポップを意識した編曲だろう。「コヤニスカッツィ」はフィリップ・グラスの「コヤニスカッティ」とは関係ないようだ。「ツム・ホリツォント」「ライズ・アゲイン」「プレイ」「エターナル・デスティネーション」は従来の民謡メタルのイメージ。

6
RENEGADES

2019年。ベースとキーボードが交代。民謡メタルから離脱し、イン・フレイムス、ソイルワーク、ダーク・トランキュリティーを中心とするオルタナティブ・ヘビーメタルに転換した。シンセサイザーは古楽器の代用ではなく、現代の反映としてのエレクトロニクスの象徴だ。ドイツ語中心だった歌詞は英語に置き換わり、10曲のうち9曲は英語だ。言語が変わっただけではなく、詩の内容も現実的になり、神話の世界から離れている。このアルバムがエクリブリウムの転換点を狙ったことは明らかだ。