ENIGMA

  • ルーマニア生まれのドイツ人、マイケル・クレトウのプロジェクト。
  • エレクトロニクスと民族音楽、宗教音楽を掛け合わせたニューエイジ、ヒーリング音楽で有名。
  • デビュー作の「サッドネス(永遠の波)」がヨーロッパで大ヒットしている。
  • 「ヴォヤジュール」以降は現代的なサウンドになり、以前ほどはヒットしていない。
  • 曲の代表作は「リターン・トゥ・イノセンス」、「サッドネス」。

1
MCMXC a.D.

1990年。邦題「サッドネス(永遠の波)」。クラブミュージックと民族音楽や中世以前の宗教音楽を混合し、クラブミュージックが持つ猥雑さと宗教音楽の崇高さを同時再生する。猥雑と崇高、新しいものと伝統的なものなど、意外性のある組み合わせほど、遭遇したときの驚きと賞賛が大きくなる。誰かがいずれはやったことだろうが、その誰かになることが難しい。ボーカルは男性、女性ともはっきり歌うことは少なく、音の一部として機能する。最後の「バック・トゥ・ザ・リヴァーズ・オブ・ビリーフ」は通常の男性ボーカルが歌う。タイトルは「紀元後1990年」のローマ数字表記。日本盤は1991年発売。

 
PRINCIPLES OF LUST

1990年。シングル盤。タイトル曲のミックス違い3曲と「サッドネス」のミックス違い1曲を収録。 

2
THE CROSS OF CHANGES

1993年。邦題「エニグマ2~ザ・クロス・オブ・チェンジズ」。やや現代のロックに近くなり、通常のボーカルやギターが使われる。宗教音楽の近寄りがたさは少なくなった。「アウト・フロム・ザ・ディープ」は一般的なロックの曲として聞ける。日本盤は1994年発売。

 
RETURN TO INNOCENCE

1993年。同一曲のバージョン違いを4曲収録。リミックスしている曲の方がロックに近いサウンド。

3
LE ROI EST MORT,VIVE LE ROI!

1996年。邦題「エニグマ3」。声を音としてではなくボーカルとして用いることが多くなった。前作ほどはロック、ポピュラー音楽のイメージに沿った音にしていない。ボーカルが増えた分、「サッドネス(永遠の波)」のような近寄りがたい神秘性が減り、身構えなければならない心理的障壁は薄くなっている。

4
THE SCREEN BEHIND THE MIRROR

2000年。オープニング曲の「ザ・ゲイト」はカール・オルフの「カルミナ・ブラーナ」の冒頭部分。3曲目、5曲目、9曲目でも曲の背景に使われ、この曲がアルバムの重要なテーマであることがわかる。1990年代後半にはクラブミュージックとロックの相互乗り入れが一般的になってきたため、ロックに近い「サイレンス・マスト・ビー・ハード」などは英米の最前線のロックと変わらないサウンドだ。

 
LOVE SENSUALITY DEVOTION:THE GREATEST HITS

2001年。邦題「エニグマ・グレイテスト・ヒッツ」。ベスト盤。 

5
VOYAGEUR

2003年。ベスト盤を出して、前作までのサウンドに区切りをつけた。宗教音楽を使わなくなり、現代的なキーボード音とボーカルになっている。アンダーワールドのような、踊るためではないクラブミュージック。ケース、ジャケットとも特殊仕様になっている。

6
A POSTERIORI

2006年。近代以前の天文学、測量学をテーマにしている。音階をはっきりさせないキーボード、エレクトロニクス、声は健在。インスト部分が多い。ブックレットに歌詞が書かれているのは12曲のうち4曲だが、人の声が使われている曲はほかに5曲ある。

7
SEVEN LIVES MANY FACES

2008年。邦題「七つの命、無数の顔」。これまでで最もリズムが明快で、ボーカルも明瞭に歌われる。曲を覆うようなキーボードが減り、結果的に音の強弱が強調されるようになっている。前作の反動か、ボーカルアルバムを思わせるほど歌の印象が強い。「七つの命」はオーケストラとヒップホップのビートに力強いボーカルが乗る。