1988年。ボーカル兼ベース、ギター2人、キーボードを含む5人編成。派手な音のキーボードをメーンにしたハードロック。曲は80年代型の覚えやすいメロディー。オープニング曲の「ロスト・イン・ザ・シティ」はドメインと改名する前から日本で注目された。ヴァン・ヘイレンの「ジャンプ」やヨーロッパの「ファイナル・カウントダウン」と同様に、印象的なキーボードがとてもすばらしい。ボーカル・メロディーも親しみやすく、ドイツのハードロック・バンドとしては屈指だ。
1988年。バンド名をドメインと変更。内容は「ロスト・イン・ザ・シティ」と同じ。
1989年。ギターの活躍が増え、キーボードとギターのバランスがよくなった。アメリカのハードロック・バンドにまったく引けを取らない曲が並ぶ。曲はドラム以外の4人で共作していることが多い。日本盤は1990年発売。
1991年。キーボードが抜け、ドラムが交代。4人編成。キーボードはゲスト・ミュージシャンが演奏している。ギター中心のサウンドになり、ボーカルも力強くなった。キーボードはギターのメロディーを補完する形になり、ほとんど出てこない曲もある。メロディーはこれまでどおり。このアルバムで解散。
1992年。ベスト盤。「アワ・キングダム」「ビフォア・ザ・ストーム」からそれぞれ4曲、「クラック・イン・ザ・ウォール」から3曲、アルバム未収録のシングルから2曲を選曲。それ以外の2曲は未発表曲。「ロスト・イン・ザ・シティ」はバージョン違いを2曲収録。
2001年。再結成。ギターのアクセル・リット以外のメンバーが全員入れ替わった。キーボードを含む5人編成。曲もアクセル・リットが中心になって作曲している。「ビフォア・ザ・ストーム」のころのサウンドに近い。曲ごとにコメントが付いている。オープニング曲のアルバムタイトル曲は「ロスト・イン・ザ・シティ」を意識したメロディーで、「ロスト・イン・ザ・シティ・パート2」と呼ぶ人がいるとコメントに書かれている。「ファンブル・フィンガー」はリムスキー・コルサコフの「熊蜂の飛行」を使ったギターのインスト曲。最後の「ゲイリー・ボーイ」はゲイリー・ムーアに影響を受けたアクセル・リット自身をインストで演奏している。
2002年。過去のアルバム収録曲のバージョン違いばかりを収録した企画盤。8曲入っているがEPとして発売されている。アコースティック・バージョンとピアノ・バージョンが多く、最後の「イン・ア・ドリーム」はボーカルだけのバージョン。
2002年。ハードロックから徐々にヘビーメタルに近づいている。オープニング曲にはイントロがついている。その次の「ミステリー・ストーン」はゲイリー・ムーアの「オーバー・ザ・ヒルズ・アンド・ファー・アウェイ」を意識した曲。バイオリンも入る。その次の「デイ・トリッパー」はビートルズのカバー。それ以降は前作の路線。ギターのインスト曲はないが、デビュー当時のようなキーボードが活躍する曲が出てくる。
2004年。ハードな曲が多くなり、ギターソロも高速で、古典的だ。「キングズ・ティアーズ」は再びゲイリー・ムーアの「オーバー・ザ・ヒルズ・アンド・ファー・アウェイ」を意識した曲。ストリングスも入る。キーボードを使ったヘビーメタルとしてはプリティ・メイズに近いサウンド。「ラッツ・イン・ザ・セラー」はエアロスミスのカバー。
2005年。イントロに続き、メロディアスなハードロックにつながる。アルバム全体が物語に沿っている。キーボード、ギターが派手に活躍し、厚いコーラスで盛り上げる。ガンマ・レイ、フリーダム・コールがキーボードを多用したようなサウンド。「ア・ニュー・ビギニング」のギターソロはチャイコフスキーの「くるみ割り人形」の「葦笛の踊り」を引用。
2006年。8曲目までの44分でもアルバムとして十分成り立つが、その上に25分、7部構成の組曲がついている。ギターのアレックス・リットによると、前半はメロディアスなヘビーメタル、組曲は「ラスト・デイズ・オブ・ユートピア」のような壮大なヘビーメタルにしたという。組曲はそれほど大仰ではない。「ヘッドファースト・イントゥ・ディザスター」はディープ・パープルの「ブラック・ナイト」を思わせる。
2009年。ゲーテの「若きウェルテルの悩み」を題材にしたアルバム。「若きウェルテルの悩み」を音楽化するにあたっての聴きどころは、シャルロッテの登場のさせ方、ウェルテルの苦悩の描き方、銃による自殺の描き方、の3点だろう。ハードロック、ヘビーメタルを主体とする音楽で、苦悩をサウンドの激しさで表現するのは無難な選択だ。苦悩が最高潮に達する「ザ・ラスト・ダンス」でキングダム時代の「ロスト・イン・ザ・シティ」のメロディーを挿入したのは、物語の節目を示したということだろう。いいアイデアだ。最後の「トゥエルヴ・オクロック」は銃による自殺の時刻を表す。イーグルスの「ホテル・カリフォルニア」を思わせる諦観のメロディーになっている。シャルロッテを含む3人全員を1人のボーカルで歌っており、物語の流れの再現よりもウェルテルによる独白の形を採用している。明確なテーマがあるアルバムでは、必ずしもバンドメンバーの5人で音楽を完結しなければならないということはなく、ゲストを入れてもよかった。サウンドもハードロックに限定しなくてもよい。ボーナストラックはフリーダム・コール風。