2013年。ロックンロールのバンドが流行に関係なく定期的にデビューしてくるのと同様に、クラブミュージックも数年ごとに注目されるアーティストが登場する。その1つとして、2010年代に注目されたアーティスト。アルバムの全曲にボーカル、またはサンプリングによるボーカルがあり、異なるアーティストが歌っているのでつかみどころが多い。何か目新しい音響を前面に出しているわけではなく、不協和音はほとんどない。ジャケットはこのデュオの子どものころの写真のように見える。実際にそのデュオかどうかに関係なく、そう思わせてしまうところが重要。2000年代以降の文化の特徴である素顔秘匿を、形の上ではなぞりながら、白人男性であることは秘匿していない。イギリス出身、白人、20歳前後という若さ、親が音楽家など、英米中心のポピュラー音楽において都合のよい情報を多く出しているのは注意するべきだ。そう考えればグループ名は皮肉が効いている。音楽的な穏健さと、アーティストに付随する情報によってヒットすることが確実に見込まれる。「ラッチ」にサム・スミスが参加。
2015年。前作に続き全曲にボーカルを入れ、ザ・ウィークエンド、サム・スミス、ロードを迎えている。ザ・ウィークエンド、サム・スミスと、ソウル系のボーカルがオープニング曲から続くのはアルバムの性格付けを明確にしている。EDMの刺激的サウンドとは距離を置くが、「ホールディング・オン」「ジェイデッド」「エコーズ」等はアップテンポでエレクトロニクスを効かせている。