DIMMU BORGIR

  • ノルウェーのブラックメタルバンド。キーボードによる分厚いオーケストラサウンドを取り入れている。

INN I EVIGHETENS MORKE

1994年。シングル盤。日本では「暗黒の宮殿」に収録。

1
FOR ALL TID

1995年。邦題「暗黒の宮殿」。ギター2人、キーボードを含み、ボーカルがドラムを兼任する5人編成。ノルウェー出身。サウンド上、ブラック・メタルに分類される。ギターが2人いてもメロディーを主導しているのはキーボード。ノルウェーの寒さや孤独さや神話世界を感じさせる。日本盤はライブ4曲収録。ライブではアクセプトの「メタル・ハート」のカバー収録。

2
STORMBLAST

1996年。中心人物であるシャグラットがボーカル兼ギターとなり、ギターがドラムに転向。前作と同様、主にキーボードがメロディーを担当し、ギターがソロをとるようなところはほとんどない。各メンバーとも技術は高くない。エンディング曲のイントロだけはキーボードではなくオーケストラを使っている。

3
ENTHRONE DARKNESS TRIUMPHANT

1997年。邦題「暗黒の帝王」。このアルバムで日本デビューしている。前作とは明らかに質が違い、アレンジ能力とボーカルの表現力が大幅に向上している。プロデューサーは変わっていないので、バンドの実力が上がったと解釈できる。歌詞も英語になり、世界的に通用するサウンドになった。ギターもはっきりリズムとメロディーの部分が分かれ、ツイン・リードも出てくる。

 
GODLESS SAVAGE GARDEN

1998年。邦題「暴虐の楽園」。企画盤。新曲2曲、「暗黒の宮殿」収録曲の再録音2曲、アクセプトの「メタル・ハート」のカバーのスタジオ録音、ライブ4曲。

4
SPIRITUAL BLACK DIMENSIONS

1999年。ギターが1人増え、ボーカル兼ギターだったシャグラットはボーカルに専念、6人編成。オープニング曲からデス声と普通のボーカルを使い分けている。普通のボーカルを担当しているのはメンバーではなく外部のボーカル。1曲の中で、ハードな部分とキーボードだけになる部分が出てくるなど、編曲能力がさらに向上。スピーディーな部分が増えている。

5
PURITANICAL EUPHORIC MISANTHROPIA

2001年。邦題「魔界大憲章」。プロデューサーをフレドリック・ノルドストロームに変え、サウンドに濁りがなくなった。「暗黒の帝王」以来の大きな飛躍。ドラムが交代したのも大きく、高速での演奏がとても多い。ボーカルもデス声とはやや異なる歌い方で、クレイドル・オブ・フィルスに似た歌い方だ。前作に続き普通のボーカルを取り入れているが、今回はボーカルのシャグラットが1人で2種類のボーカルを使い分けている。地元の楽団がオーケストラ演奏で参加。このアルバムからメンバーがメイクをやめている。日本盤ボーナスCDでトゥイステッド・シスターの「バーン・イン・ヘル」をカバー。

6
DEATH CULT ARMAGEDDON

2003年。邦題「デス・カルト・アルマゲドン・最終戦争賛歌」。オーケストラをプラハ・フィルに変えた。前作とは異なりフル・オーケストラなので、新たに金管楽器の音が入る。バンドとしての過激さはかなり抑えられた。合唱団が入ればセリオンに近いサウンドでデスメタルの激しさを持つバンドとして再び脚光を浴びることができる。プラハ・フィルは残念ながら、チェコ・フィルやプラハ響ほど評価は高くないオーケストラ。

STORMBLAST

2005年。1996年に発表した「ストームブラスト」の再録音盤。

7
IN SORTE DIABOLI

2007年。邦題「イン・ソルテ・ディアボリ・魔界選歌」。「魔界大憲章」の路線。今回はオーケストラが入らず、バンド演奏のみで作っている。キーボードが重要な役割を果たしているのは確かだが、一般的なブラック・メタルに近くなったのではないか。安定した演奏で、特にドラムの技巧が高いのは大きなポイントだ。5曲目が短めのインスト曲で、それ以外の8曲が4、5分台。9曲で43分。内容がいいので収録時間が短くても満足感が大きい。

8
ABRAHADABRA

2010年。オーケストラと合唱隊をメーンに据えているが、バンドサウンドはヘビーメタル、デスメタルを保持している。オーケストラの大仰さは一種のマスターベーションで、際限のない満足が同時に不満を呼び起こし、むなしさを覚えるまで止まらない。ヘビーメタルにおけるギターやドラムのスピード競争と同じだ。次のアルバムでオーケストラや合唱団を維持するにも縮小するにも、曲において必然性を持たせなければならない。

9
EONIAN

2018年。オーケストラを使わず、26人の合唱隊、エレクトロニクスを使う。シンセサイザーを含むバンドサウンドが中心。編曲がよく、リズムも変化に富んでおり、同ジャンルの他のバンドとは大きな差を付けている。合唱隊はスコラ・カントルムなので、聖歌隊といってもよい。現代的なシンセサイザーも適度に使う。オープニング曲は1分強のイントロが含まれる。最後の曲はインスト曲。アルバムタイトルは永遠や回帰を表す形容詞。ジャケットの砂時計は永遠、蛇は回帰を表しているとみられる。宗教的であり、キリスト教が広まる前の有力な考え方であることから、ブラックメタルの心性を維持しているとみなすことができる。