1978年。邦題「頽廃的美学論」。ギターでリズムを刻むアップテンポなロックだが、コンピューターのようなシンセサイザーがパンク、ニューウェーブの時期に合い、新しいサウンドとして認識された。「ジョコー・ホモ」はディーヴォの代表曲で、テーマ曲にもなっている。新約聖書のヨハネによる福音書に出てくる「エッケ・ホモ(この人を見よ)」、あるいはニーチェの自伝「この人を見よ」(エッケ・ホモ)を意識したタイトルとみられる。メロディーも奇妙で面白い。「サティスファクション」はローリング・ストーンズのカバー、「カム・バック・ジョニー」はチャック・ベリーの「ジョニー・B・グッド」の後日談のような曲。「狂気の衝動」「モンゴロイド」収録。
1979年。邦題「生存学未来編」。シンセサイザーを増やし、ギターは大幅に減った。フランスの「ラ・マルセイエーズ」に似たオープニング曲の「ディーヴォ賛歌」が、シンセサイザーの大幅活用を宣言する曲と言える。「クロックアウト」「揺れ動く世界」「スマート・パトロール」はギター主導の曲だがコンピューター音のようなシンセサイザーが装飾として入る。「ストレンジ・パースーツ」「エス・アイ・ビー」はシンセサイザー主体。「意志の勝利」はエマーソン・レイク&パーマーのような曲だ。「スマート・パトロール/ミスター・ディー・エヌ・エー」はナチスドイツの優生思想を意識した曲のようだ。「秘密諜報員」はジョニー・リヴァースのカバー。
1980年。邦題「欲望心理学」。ほとんどの曲がギター主体になり、シンセサイザーはメロディーを主導しなくなっている。かつてのキーボードと同じように曲のアクセントとしてフレーズが差し挟まれることが多い。そのフレーズがキーボードではなくシンセサイザーであり、キーボードの延長ではなくシンセサイザー特有の倍音の少ない音で補っている。それに合わせて曲も短く、軽やかになった。シンセサイザーがロックに本格的に入り始めた時期において、キーボードとシンセサイザーの違い、それに伴う曲の質的変化を理解したことがディーヴォの成功の要因であり、理解できなかったことが多くのハードロックバンドの失敗の原因だった。「冷たい戦争」はシンセサイザーとギターが対等にメロディーを担い、突然曲が終わる。くどいエンディングを強制的になくしているところが象徴的だ。「ホウィップ・イット」は最大のヒット。
1981年。シンセサイザーの使い方がキーボードの一種のような使い方に戻った。「ソフト・シングス」「レース・オブ・ドゥーム」はパーカッションが入る。「ジャーキン・バックン・フォース」はメロディー楽器として使われており、ニューウェーブの使われ方ではない。ボーナストラックの「ワーキング・イン・ザ・コール・マイン」はリー・ドーシーのカバー。
1981年。邦題「退化の巡業」。ライブ盤。当時ミニアルバムとして6曲がライブ盤で発売され、1999年に16曲のライブ盤が発売され、2008年に両方を収録したライブ盤「退化合唱團巡業記」が発売された。
1982年。邦題「オー・ノー!ディーヴォ」。「欲望心理学」のころに戻った。リズムにもシンセサイザーを使い、シンセサイザーの活躍の幅が広がっているが、奇抜さはない。ロイ・トーマス・ベイカーがプロデュースしているのでポップだ。しかし、聞き手が求めるのはシンセサイザーを伴った曲の奇妙さではないか。
1984年。オープニング曲はシンセサイザーがファンファーレのように響き、「生存学未来編」の「ディーヴォ賛歌」を思わせる。曲は「オー・ノー!ディーヴォ」の路線で、基本的にポップだ。有名曲からの引用が多く、ヒットのきっかけを探ろうとした意図がうかがえる。「第4ディメンション」はビートルズの「デイ・トリッパー」、「ヒア・トゥ・ゴー」はウィルソン・ピケットの「ダンス天国」、「プリーズ・プリーズ」はジーン・ヴィンセントの「ビー・バップ・ア・ルーラ」の歌詞を引用する。「アー・ユー・エクスペリエンスド?」はジミ・ヘンドリクスの「アー・ユー・エクスペリエンスト?」のカバーで、途中のギターのフレーズは「サード・ストーン・フロム・ザ・サン」から引用している。
1988年。ドラムが交代。シンセサイザーが大幅に増え、ギターが前面に出てこなくなった。パーカッションもシンセサイザーで代用し、ドラムは1980年代特有のエレキドラムのような音になっている。ほとんどの音がシンセサイザーになり、もはやニューウェーブのバンドとは言えず、時代的にもニューウェーブを続ける理由はない。ギター中心のバンドかシンセサイザー中心のバンドかを選択した結果、シンセサイザーになったということだろう。「ベイビー・ドール」「プレイン・トゥルース」は女性コーラスが付く。「サ・シャドウ」はヒューイ・ルイス&ザ・ニュースの「パワー・オブ・ラヴ」を思わせる。「冷たくしないで」はエルヴィス・プレスリーのカバー。
1989年。邦題「退化の改新」。ライブ盤。
1990年。邦題「ディーヴォのくいしん坊・万歳」。シンセサイザーを多用するメロディアスなグループと大差はなくなり、ディーヴォがやる必然性もなくなっている。ディーヴォがつくる音と聞き手が既に知っている音が近くなりすぎた。「トータル・ディーヴォ」と「ディーヴォのくいしん坊・万歳」は、サウンドとしては特筆すべき点はないが、歌詞には初期のユーモアが残っている。「ポスト・ポスト・モダン人」はポストモダンをタイトルに含んでいることも注目に値するが、ピーター・ポール&マリーの「ハンマーを持ったら」の歌詞を使いつつ、カバー元とは逆に個人的な目的を達成するために使うという内容になっており、皮肉が効いている。モダンとポストモダンとポスト・ポストモダンを区別しているならば秀逸な歌詞だ。「時代は変わる」は邦題だけがボブ・ディランを意識しており、歌詞は特に関係はない。「DEVOだって人間なんだ」は比較的分かりやすいメッセージだ。日本盤の訳詞は山形浩生だが、公式サイトではなかったことになっている。
1990年。デビュー前の1974年から77年に録音された曲を集めた企画盤。
1991年。企画盤の2枚目。音楽的に試行錯誤しているため、歌詞はそれほど重要ではなく、インスト曲も複数ある。
1992年。邦題「モンゴロイド上位時代」。1975、76、77年のライブ。75年からシンセサイザーを利用し、前衛的な使い方をしている。77年のライブは「頽廃的美学論」「欲望心理学」に収録される曲がほとんど。「スー・ボールズ」はブライアン・ハイランドの「ビキニスタイルのお嬢さん」の一節を挿入している。
2000年。ベスト盤。2枚組。「ウィ・アー・オール・ディーヴォ」「ジョコー・ホモ」「モンゴロイド」「ジェネラル・ボーイ・ヴィジッツ・アポカリプス・ナウ」「ワーズ・ゲット・スタック・イン・マイ・スロート」はデビュー前のブギー・ボーイ&ジェネラル・ボーイ、ブギー・ボーイ、ジェネラル・ボーイ名義のバージョンを収録。50曲のうち10曲はアルバム未収録曲。「イット・テイクス・ア・ウォリード・マン」はキングストン・トリオ、「ブレッド・アンド・バター」はザ・ニュービーツ、「ビキニ・スタイルのお嬢さん」はブライアン・ハイランド、「ヘッド・ライク・ア・ホール」はナイン・インチ・ネイルズのカバー。「サンクス・トゥ・ユー」「コミュニケイション・ブレイク・アップ」は新曲。
2010年。バンド演奏によるエレクトロ・ロック。シンセサイザーの音は分厚い。多くは曲調が前のめりで分かりやすいメロディーだ。ヴィレッジ・ピープルのバンド版とも言える。アップテンポなダンス音楽としても聞けるが「プリーズ・ベイビー・プリーズ」はダンスで使われるテンポよりも速く、ダンスを想定して作られているわけではないようだ。「フレッシュ」「ホワット・ウィ・ドゥ」「プリーズ・ベイビー・プリーズ」は単純な発音で耳を引く。「ノー・プレイス・ライク・ホーム」はピアノが主導する情緒的なメロディー。
2015年。邦題「退化の目撃~未発表ライヴ1977」。ライブ盤。デビュー前の小さなバーでの録音のため、歓声は10人程度しかいないように聞こえる。「モンゴロイド」「ジョコー・ホモ」「秘密諜報員」収録。