1981年。邦題「魔夜(ディーモン・ナイト)」。ギター2人の5人編成ということになっていたが、実際は2人目のギターがベースを兼任していて、事実上4人で録音されている。すべての曲をボーカルとギターが作曲。ギター中心だが、キーボードも入るハードロック。エイジアほどの哀愁メロディーはないが、アメリカでも通用しそうなハードさ。ボーカルがやや弱いか。
1982年。邦題「招かれざる客」。キーボードを効果的に使い、どこでも通用するハードロックになった。「ドント・ブレーク・ザ・サークル」と「ハブ・ウィ・ビーン・ヒア・ビフォー」はこのアルバムを象徴する。個性を確立した傑作。ニュー・ウェイブ・オブ・ブリティッシュ・ヘビーメタルの時期にデビューしたことがこのバンドの最大の不幸で、あとあとそのカテゴリーに押し込められてしまった。ニュー・ウェイブ・オブ・ブリティッシュ・ヘビーメタルに限らず、ジャンルそのものが宗教化してしまうと、バンドの妥当な評価を誤らせることがある。
1983年。邦題「悪魔主義」。前作よりもさらにキーボードが活躍する。人気の高い作品だが、全体的な音の密度は下がり、静かで重厚だ。同時期に大ヒットしていたエイジアのアルバムに影響されたかもしれない。ミックスの違いで2種類の音があり、2つ目はディスチャージのマイク・ストーンが関わっている。ホワイトスネイクで成功したマイク・ストーンではない。
1985年。ギター1人とベースが抜け、キーボードが加入、4人編成になった。ボーカルのエコーの深さと全体の音の少なさは、ピンク・フロイドの「鬱」を聞いているようだ。キーボードがメロディーの主導権を握っており、もはやハードロックでもない。ボーカルとギターが全曲を作曲したとは思えないサウンド。喜多郎に影響を受けたというキーボード奏者が結果的にアルバム全体の雰囲気を決定している。ボーカルの表現力は向上した。
1985年。デビューから全曲の作曲に関わっていたギターのマル・スプーナーが、前作のレコーディング終了後に肺炎で死去。前作でゲスト参加していたギターとベースがそのまま加入して、やっとサウンドに合ったメンバー編成になった。ロック路線に戻ったが、曲によってはプログレッシブ・ロックと呼べる曲も含まれる。ロックン・ロールが一切出てこないところはマグナムと同じ傾向だ。
1987年。ベースが交代。デビュー盤以来のハードさ。「イングランズ・グローリー」はイングランドの栄光の歴史を誇らしく歌う。チャーチルやネルソン提督、シェークスピアやビートルズとともに、イングランドが優勝した66年のワールド・カップと主力のボビー・チャールトンが出てくる。イントロの児童合唱はエマーソン・レイク&パーマーの「恐怖の頭脳改革」に出てくる「聖地エルサレム」と同じ賛美歌を歌っている。サウンドは全盛期に突入。
1989年。ベースとドラムが交代。2人目のギターが加入し6人編成。前半はギターとキーボードによるハードロック。後半は構成を重視したロック。以前に比べて1曲が長く、両面とも最後の曲は10分前後ある。どの曲もドラマチックで、メロディーもすばらしい。「リメンバランス・デイ」収録。傑作。
1990年。ライブ盤。
1991年。ベースがゲスト参加になり5人編成。ややドラマチックさは薄れ、ハードロックからも遠ざかっている。「アイボリー・タワーズ」のサックス・ソロはスコット・マッケンジーの「花のサンフランシスコ」のメロディーを使用。「リメンバー68」「タイム・オブ・ラブ・アンド・ピース」の歌詞から明らか。
1991年。ベスト盤。デビュー盤 から「ブレイクアウト」まで。
1992年。キーボードが抜け、ベースが加入、ドラムが交代。「ハート・オブ・アワー・タイム」以来ボーカルとキーボードで全曲の作曲をしてきたが、キーボードがいなくなったことで新たにボーカルとギターの組み合わせで作曲をしている。キーボードが使われずツイン・ギターになったことでサウンドは大きく変化し、ヘビーメタル寄りのハードロック。
1999年。ベスト盤。
2001年。ギター、ベース、ドラムが交代し、キーボードが加入、6人編成。一部に現代風の暗い曲調があるが、派手さのないロック。再結成アルバムとしてはインパクトが弱く、再結成したということの事実を確認する以上のものは感じにくい。
2005年。ドラム、もしくはギターが作曲し、ボーカルが作詞。オーソドックスなハードロック。暗さはなく、適度にハード。ボーカルは年季が入り、伸びやかな声が出にくい部分もある。デビューしてから25年のバンドとしては質の高い曲を作り、経歴の長い他の有名バンドより優れたアルバムとなっているが、広く洋楽ロック・ファンに支持されるには無難すぎると思われる。
2013年。ギター2人とベースが交代。作曲はボーカルとドラム、またはボーカルとキーボードの組み合わせで行われている。バンドメンバーだけで演奏し、それ以上の編集をしていないような録音。アマチュアの個人録音でもこれより音響の優れたデモテープを作れるだろうが、それでも世界レベルで発売できるのはディーモンがディーモンとして出しているからだ。マグナムと同じ憂いのあるメロディーは健在。ボーカルをはじめ、個々のメンバーの演奏は特に優れた部分はなく、今後スタジオ盤が出るかどうかも分からない。