DEATH IN VEGAS

  • リチャード・フィアレスを中心とする男性デュオ。
  • ボビー・ギレスピが参加した「コンティーノ・セッションズ」、リアム・ギャラガー、ポール・ウェラーが参加した「スコーピオ・ライジング」がヒットした。

1
DEAD ELVIS

1997年。エレクトロニクスを中心にサウンドを構成するが、多くの曲でギター、ベースを含んだバンドサウンドとなっている。サイケデリックロック、ダブ、ヒップホップ等の影響を受けているようで、デビュー盤に何もかも入れようという欲張りが感じられる。アルバムの後半はボーカルのない長めの曲が続く。

2
THE CONTINO SESSIONS

1999年。バンドサウンドの度合いが増し、エレクトロニクスを感じさせるサウンドは減っている。9曲のうち6曲はギター、ベース、ドラム、2曲はギター、ベースを演奏しているので、DJ2人によるグループというイメージはほぼない。前作と同様にゆっくりしたテンポが多いが、前作にあったサイケデリックなロックの雰囲気は、硬質なロック化によって薄くなっている。「ソウル・オークショニア」のボーカルはプライマル・スクリームのボビー・ギレスピ、「アイシャ」のボーカルはイギー・ポップ、「ブロークン・リトル・シスター」のボーカルはジーザス&メリー・チェインのジム・リード。

3
SCORPIO RISING

2002年。アルバムの最初の2曲で、前作からさらにロック化した印象を与える。3曲目の「ハンズ・アラウンド・マイ・スロート」のポストパンク、ニューウェーブ風ロックでサウンドの幅を広げたと分かり、オアシスのリアム・ギャラガーやポール・ウェラーが歌う曲が出てくる前に過去最高作と確信できる。最後の「ヘルプ・ユアセルフ」は10分を超え、ストリングスとシタール、バイオリンで大きく盛り上げる素晴らしい曲。サイケデリックギター2人、ベース、ドラムを固定したアーティストで録音しており、デス・イン・ヴェガスをロックバンドとして解釈してもそれほど違和感はない。アルバムタイトル曲はオアシスのリアム・ギャラガーがボーカルをとる。「ソー・ユー・セイ・ユー・ロスト・ユア・ベイビー」はザ・バーズのジーン・クラークの「ロスト・ユア・ベイビー」のカバーで、ボーカルはポール・ウェラー、ベースはストーン・ローゼズ、プライマル・スクリームのマニ。

4
SATAN'S CIRCUS

2004年。シンセサイザー、エレクトロニクス中心のサウンドになり、11曲のうちボーカルが入るのは「ヘイル・ザナックス」のみ。11曲のうちドラムを使うバンドサウンドは4曲。「デッド・エルヴィス」のようなサウンドに戻ったわけではないが、「ブラック・リード」「キャンディー・マッケンジー」「アニタ・バーバー」などはサイケデリック・ロックを思わせる。「ズガガ」はクラフトワークの「ヨーロッパ特急」のメロディーを借用しているというより、ほぼカバーで、クラフトワークの表記がないのは不自然だ。ボーナスCDのライブ盤が付いており、デス・イン・ヴェガスの2人、ギター2人、ベース、ドラム、キーボードの6人で演奏している。「スコーピオ・ライジング」「ハンズ・アラウンド・マイ・スロート」もやっているが、ボーカルはサンプリング。

5
TRANS-LOVE ENERGIES

2011年。リチャード・フィアレスがメインボーカルをとるようになり、10曲のうち6曲で歌う。ギター、ドラムも数曲で使うが、基本的にシンセサイザーとプログラミング等によるエレクトロサウンド。アルバムの後半はアシッドだ。ボビー・ギレスピ、リアム・ギャラガー、ポール・ウェラーが参加していたころは、イギリスのロックにまだ勢いが残っていたので彼らとデス・イン・ヴェガスが協演することは双方にとって時代の刻印的意味があった。2010年代に入って、デス・イン・ヴェガスが自らのサウンドだけで人気を得るには難しい時代になったが、復活の余地はある。