DARK TRANQUILLITY

  • イン・フレイムスとともにメロディック・デスメタルの黎明期から活動するバンド。スウェーデン出身。
  • 当初5人編成だったがキーボード奏者が加わり6人編成。「ダメージ・ダン」からエレクトロニクスを取り入れたサウンドでヘビーメタルの世界から脱している。
  • 3枚目の「ザ・マインズ・アイ」まではメロディック・デスメタル、「プロジェクター」「ヘイヴン」はキーボード奏者を入れ、ゴシックの影響を受けた過渡期、6枚目の「ダメージ・ダン」で個性を確立する。
  • 代表作は「ザ・ギャラリー」「ダメージ・ダン」。

1
SKYDANCER

1993年。ギター2人の5人編成。スウェーデン出身。日本デビューは1995年。センテンスト、ディセクションとともに、いわゆるメロディック・デス・メタルを早い時期にやり始めたバンド。この3バンドの中では日本デビューが一番遅かったが、本国でのデビューはディセクションより早い。センテンストはこのバンドよりさらに2年早くデビューしている。「ポルト・オブ・ブレイジング・ゴールド」と「エボニー・アーチウェイズ」では女声ボーカルも入る。特に後者では男声がデス声ではなく普通の声で歌う部分もある。「シャドウ・デュエット」では専任ボーカルとギターがデス声でデュエットする。デビュー盤からバラエティに富んだ内容だ。ただ、バックの演奏もデス声自体も迫力が不足する。

 
OF CHAOS AND ETERNAL NIGHT

1995年。新曲3曲を含むシングル。新曲はいずれも聞かせどころがあるいい曲だ。

2
THE GALLERY

1996年。日本ではこのアルバムの発売と同じ時期にイン・フレイムスの「ジェスター・レース」も発売された。この2作がメロディック・デス・メタルとして非常に質が高かったため、双方ともラジオで曲がよくかかり、CMも頻繁に流れた。一部のファンが熱心に聞いているジャンルだったメロディック・デス・メタルが、一般のヘビーメタル・ファンにも広く聞かれるジャンルとして認知されるようになったのはこのころからである。日本ではダーク・トランキュリティとイン・フレイムスがメロディック・デス・メタルの代表として人気を牽引していたことは間違いない。印象に残るメロディーが多く、ボーカルも向上している。

3
THE MIND'S I

1997年。「スカイダンサー」と「ザ・ギャラリー」の中間のようなサウンド。やや「ザ・ギャラリー」寄りか。デビュー以来女声ボーカルが入るのも変わらず。日本盤ボーナストラックの「アーキタイプ」はテクノ。

4
PROJECTOR

1999年。ギターが抜け、ベースがギターに転換、ベースとキーボードが加入し6人編成になった。サウンドがかなり変化し、「ザ・サン・ファイアード・フランクス」以外の9曲で普通のボーカルが聞かれる。オープニング曲のイントロからピアノで入り、サビでは普通のボーカル、2曲目もサビが普通のボーカル。したがって、アルバムの最初の方を聞いただけで前作までのサウンドを転換させたと分かる。ゴシック・ロック、ゴシック的ヘビーメタルと言ってもよい。

5
HAVEN

2000年。再びボーカルがデス声になった。曲は前作に近く、デビュー当時にあったスピーディーでハードな部分は少ない。キーボードがこれまでで最も活躍しており、ギターとともにメロディー演奏を担う。キーボードの音がモダンで、コンピューターチック。あくまでも一種の楽器として扱われる。ストリングスの代用という印象をまったく起こさせないのはいいことだ。

6
DAMAGE DONE

2002年。「ヘイヴン」のサウンドのまま、ハードさを増した。バンドの最高傑作。ハードさが増したということはヘビーメタルのたたみかけるような勢いが加わったということであり、高評価になるのは当然だ。アーク・エネミーのようなギターを、メロディアスであるがくどいと感じる人にとって、このアルバムは名盤になるだろう。

7
CHARACTER

2005年。前作の路線。ヘビーメタルのファンに理解される必要はなく、洋楽ファンに対して訴えていくべき作風。

8
FICTION

2007年。このバンドのすばらしいところは、ギター2人とキーボードが専任でいるにもかかわらず、分厚くならずに(ヘビーメタルのハードさを持ったまま)北欧の寒さがサウンドで表現できることである。これはギターとキーボードの双方が、メロディーとリズム、持続音と減衰音をそれぞれ分担しているからである。バンドサウンドの土台となるビートやリフをギターが刻んでいるときは持続音で演奏し、キーボードは減衰するピアノでメロディーを演奏する。立場が逆転するとキーボード奏者がシンセサイザーの持続音でバックを担当し、減衰の大きいギターが高めの音でメロディーを弾く。ポイントは、この点を踏まえれば、いくらサウンドがハードになっても雰囲気は保てるということで、ギターの音圧を大きくしたり、リフの刻み方を速くしたりすればヘビーメタルの勢いが増す。これを抑えれば、あとはメロディーと展開に専念できる。ダーク・トランキュリティはこれを両立できたところがすばらしい。

9
WE ARE THE VOID

2010年。高速で演奏されるギター、ドラムに対し、3倍から5倍くらいゆっくり演奏されるキーボード、ピアノが効果的だ。ギターやドラムはメロディーよりもリズムを担うため、耳ではキーボードのメロディーを追うことになる。「ザ・グランデスト・アキュゼイション」はギターとキーボードがともにマイナー調のメロディーをとる。「ハー・サイレント・ランゲージ」は一部ラムシュタインのようなゴシック・ロック。事実上のタイトル曲である「アイ・アム・ザ・ヴォイド」は最もハードだ。

10
CONSTRUCT

2013年。ベースが抜け5人編成。ベースはギターが兼任している。メロディック・デスメタルにあるデスメタルの要素を失わず、ハードさを大きく残したアモルフィスのようなサウンド。メロディック・デスメタルの主要なバンドのうち、キーボード奏者を含むダーク・トランキュリティ、イン・フレイムス、チルドレン・オブ・ボドムはいずれもサウンドの違いが明確だ。このアルバムの最も重要な変化は、作曲者の中心が初めてキーボード奏者に移ったことだ。これまではギター2人のいずれかが中心だった。作曲者の中心が変わってもサウンドが以前とそれほど変わらないのは作曲能力が高いからか。それでもギターが単独で作った曲はギター中心のハードな曲となり、キーボード奏者が作曲した曲はメロディーがキーボードを中心に進んでいく。日本盤はボーナストラックが6曲入る。