1987年。このアルバムを評価する人は、コメントがだいたい同じになる。サウンドはデビュー当初のクイーンズライチが80年代のジューダス・プリーストをやっている感じで、ボーカルのミッドナイトはクイーンズライチのジェフ・テイトと比較される。今でもオープニング曲の「ヴァルハラ」と「クイーン・オブ・ザ・マスカレード」がラジオでよくかかる。ハイトーンのボーカルを擁し、あまりにもオーソドックスなヘビーメタルをやられると、評価が高くなるのは当然だ。メンバー全員が光沢のある金属色の仮面をかぶっている。アメリカのバンドでありながら歌詞は北欧神話等に題材を取り、マノウォー、サバタージ、ヴァージン・スティールと同じ感性を持っていると言える。
1988年。曲数も時間も増え、飾り気のない伝統的なヘビーメタルが堪能できる。キーボードの使い方もアコースティックギターの導入も、素晴らしい音楽の前ではささいなことだ。
1991年。ギターが1人減り4人編成になった。サウンドが大きく変化し、ブルースやロックン・ロールを大幅に取り入れた泥臭いアメリカン・ハードロック。女性バックコーラスも3人いる。ボーカルの歌い方はレッド・ツェッペリンのロバート・プラントに似ている。クリムゾン・グローリーがわざわざやるようなサウンドではなく、他のバンド群に埋もれてしまう。ファンが求める音楽をやる必要はない。しかし、なぜこうした音楽をやるのかという答えがサウンドの中に必要だ。それが希薄だった。
1999年。ボーカルとドラムが交代。やっている音楽の方向が違うだけで、本質的には前作と同じ問題をはらんでいる。デビュー当時ほど正統なヘビーメタルをやっているわけではないが、少なくとも、ハードロックでもヘビーロックでもない、ごく一般的なイメージのヘビーメタルをやっている。ボーカルはジューダス・プリーストの2人に近くなった。日本盤にはボーナストラックで「クリムゾン・グローリー」と「トランセンデンス」の中の1曲ずつをライブで収録してあり、これが皮肉にも「デビュー当時はすごかった」と認識させてしまう。