!!!(CHK CHK CHK)

!!!(チイク・チック・チック)はアメリカのロック、ファンクバンド。トランペット、サックスを含む7、8人編成。エレクトロニクスを用いたダンス音楽。「ラウデン・アップ・ナウ」収録の「ミー・アンド・ジュリアーニ・ダウン・バイ・ザ・スクール・ヤード(ア・トゥルー・ストーリー)」がヒットしている。

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!!!

2001年。!!!(チック・チック・チック)はボーカル、ギター2人、ベース、ドラム、トランペット、サックスの7人編成。アメリカ出身。管楽器の2人とドラムはパーカッションも担当する。ファンクバンドと同様、ギターはリズム楽器のように演奏され、引き気味のメロディを加える。ボーカルは声域が狭く音階の抑揚も小さい。それがかえってベースやリズムギターのファンク感を強調する。ホーン・セクションはあまり派手に出てこないが「インテンシファイ」では目立って活躍し、女性コーラスも出てくる。7曲で45分。

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LOUDEN UP NOW

2004年。エレクトロニクスを取り入れ、クラブ・ミュージックに大分近くなった。踊らせようという意図があるのかどうか分からないが、高揚感を伴うフレーズが随所にあり、踊りやすくなったことは確かだ。ヒットしたという「ミー・アンド・ジュリアーニ・ダウン・バイ・ザ・スクール・ヤード(ア・トゥルー・ストーリー)」はアップテンポのイントロで期待させるが、その後は他の曲と同様、ファンクとエレクトロニクスとサイケデリック(アシッド・ジャズ)の混合になる。

 
LIVE! LIVE! LIVE!

2004年。ライブ盤。5曲のうち3曲は東京公演。3曲といえどもそれぞれ8分、7分、6分ある。スタジオ盤にはない熱さがあるのはライブ盤として当然かもしれないが、エレクトロニクスよりもバンドサウンドが多くなる分、前のめり感がある。「ミー・アンド・ジュリアーニ・ダウン・バイ・ザ・スクール・ヤード(ア・トゥルー・ストーリー)」はライブではなくリミックス。

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MYTH TAKES

2007年。ボーカルが1人増え8人編成。このうち1人がひとつの楽器しか演奏しないのはドラムとベースだけで、残りの6人はボーカルを含め複数の楽器を担当する。キーボードは5人いることになっている。ダンス音楽の範囲内にありながら曲が多彩になり、ファンク要素のあるジャムバンドとでもいうようなサウンドだ。「ベンド・オーバー・ベートーヴェン」は、ベートーヴェンや「ロール・オーバー・ベートーヴェン」のメロディーを使っていない。「インフィニフォールド」はサイケデリックだ。

 
THE MOONLIGHT EP

2007年。EP盤。「ゲット・アップ」と「テイク・エクスタシー・ウィズ・ミー」は2005年発売のシングル盤の曲。

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STRANGE WEATHER,ISN'T IT?

2010年。ドラムとベースが交代している。誰が正式なメンバーなのかはブックレットからは分からないが、全曲に参加しているのは5人。もともと1人で複数の楽器を演奏していたり、全曲に参加しているわけではなかったので、あえてメンバーを特定する意味はないかもしれない。「ミス・テイクス」の路線で、エレクトロニクスの雰囲気はアンダーワールドやマッシヴ・アタックにも通じる。女性コーラス、ストリングス、ホーン・セクションを使うのも前作通りで、アナログとデジタルを意識することなく同居させるのも現代的だ。

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THR!!!ER

2013年。ボーカル、ギター、ベース、ドラム、キーボード2人の編成で録音。デビュー当初は管楽器奏者がキーボードも兼任していたが、現在はキーボード、エレクトロニクスを中心に担当している。ホーン・セクションは少なくなり、一般的なエレクトロ・ロック、あるいはさらに一般的なロックとなっており、個性が薄れているのではないか。「ステーション(ミート・ミー・アット・ザ)」はそれまでの曲とは異なり、ざらついたロックとなっている。このサウンドで全体を統一してもよかった。

RIMIXIS

2013年。リミックス集。7曲収録。「ワン・ガール・ワン・ボーイ」のベースはロキシー・ミュージックの「ラヴ・イズ・ア・ドラッグ」に似たベースだ。

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AS IF

2015年。前作と同様にエレクトロニクス、シンセサイザーを中心とするダンス音楽。曲によってキーボード、ギターなどに客演があり、ボーカルは半数以上の曲で客演がある。サウンドの完成形をメンバーだけでの完結にこだわっていない。ベースはシンセサイザー等によって代用している。「エヴリー・リトル・ビット・カウンツ」「フリーダム!'15」「Ooo」はアップテンポでビートが強い。この3曲と最後の「アイ・フィール・ソー・フリー」が出色。「フリーダム!'15」は2010年代の代表曲になる可能性がある。

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SHAKE THE SHUDDER

2017年。前作から日本でしかヒットしなくなっている。客演は前作より少なくなり、ボーカルが中心。演奏はメンバーで完結する曲が多い。「ザ・ワン・トゥー」から「NRGQ」までは女性ボーカルが活躍し、リズムもシンセサイザーも工夫がある。アルバムの後半は新鮮味に欠ける。「ホワット・アー・ユー・アップ・トゥデイ」は子どもらしき声のボーカルが付く。

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WALLOP

2019年。「シェイク・ザ・シャダー」で示したメッセージ性を継続。現在の社会が望ましくない状況ではなく、次の方向あるいは別の方向に行かなければならないことを歌詞にしている。ロックやフォークならそれを直接的に表現できるが、!!!は大衆性の高いダンス音楽をやっているため、僕と君の関係に置き換えている。映画や演劇、小説で無数に取り入れられているスタンダードな手法だが、社会性を潜ませているからこそ!!!が他のダンス系バンドと区別される。ビッグビート、トリップホップなど、曲のベースは多彩。

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LET IT BE BLUE

2022年。オープニング曲はアコースティックギターの弾き語りで意外性を持たせた。2曲目の「ア・リトル・ビット(モア)」はライト・セッド・フレッドを思わせる。「マン・オン・ザ・ムーン」はR.E.M.のカバー。「イッツ・グレイ、イッツ・グレイ(イッツ・グレイ)」はザ・クラッシュのような曲。!!!はバンド編成なので、アルバムではシンセサイザーやドラムマシーンを多用していても、DJだけで再現できるような曲ばかりにはならない。アルバムタイトルの「レット・イット・ビー・ブルー」はもちろんビートルズを意識しているだろう。「レット・イット・ビー・ブルー」から「イッツ・グレイ、イッツ・グレイ(イッツ・グレイ)」の流れは、「ワロップ」のメッセージ性の高い曲を受け継いでいる。

 
STREET DAD/OUT HUD

2003年。!!!のメンバーのうち、ボーカル、ギター、ベースの3人が在籍しているバンド。このほかにドラムとチェロを含む5人編成。6曲すべてがインストで、!!!でボーカルをとるニック・オファーはベース兼キーボードとなっている。6曲のうちキーボードとドラム・プログラミングが使われるのは3曲で、ポストロック風とも言える。!!!の「ラウデン・アップ・ナウ」の前年に発売されたことを考えると、!!!の露払いの役目を果たしたのかもしれない。