1997年。流麗なメロディーをギターとキーボードで華々しく奏でる。マイナー調のメロディーが好きな日本人やヨーロッパ人に強く訴えるアルバム。「ザ・ネイル」の途中のフレーズは、バッハの「トッカータとフーガ」の一節と思われる。「レイク・ボドム」収録。
1999年。前作を上回る華麗さを備えた。派手とも言う。「サイレント・ナイト・ボドム・ナイト」の作詞はシナジーのキンバリー・ゴス。
1999年。邦題「東京戦心」。日本公演を収録したライブ。高速演奏や曲芸演奏を標榜する音楽家とそれを賞賛する層はいつの時代にもどのジャンルにも存在するが、ヘビーメタルではドリーム・シアター等とともにチルドレン・オブ・ボドムもその一角をなす。選曲は「サムシング・ワイルド」と「ヘイトブリーダー」からのベスト盤のようになっている。「ギター&キーボードソロ」の最後はラウドネスの「クレイジー・ナイト」を弾いている。
2000年。大きな変化はなし。オジー・オズボーンの「暗闇にドッキリ」とW.A.S.P.の「ヘリオン」のカバー収録。「ボドム」が入ったタイトルがとても多いが、今回も「ボドム・アフター・ミッドナイト」を収録。
2003年。メロディーの鮮烈さをそのままにして、ギターやボーカルの音に流行を取り入れている。メロディック・デス・メタルから脱却し、ヘビーメタルのバンドというよりもハードなロックのバンドというイメージを獲得したのは大きい。発売前から話題になった傑作。「ニードルド24/7」「ユー・アー・ベター・オフ・デッド」収録。スレイヤーとラモーンズのカバーも収録。
2003年。「フォロウ・ザ・リーパー」までのベスト盤。
2004年。シングル盤。ギターが交代。アルバム未収録曲1曲収録。「ベッド・オブ・ネイルズ」はアリス・クーパー、「シー・イズ・ビューティフル」はアンドリューW.K.の「イカす彼女に一目ぼれ」のカバー。「ベッド・オブ・ネイルズ」はデスモンド・チャイルド、ダイアン・ウォーレンの共作なので覚えやすい。
2005年。前作の路線で、新しい要素はないので刺激は少ない。曲はハードだが、手法は変わらないので同じようなサウンドが続くように感じられる。その中では「バスターズ・オブ・ボドム」はいい曲だ。「ウップス!…アイ・ディド・イット・アゲイン」はブリトニー・スピアーズの「ウップス…!アイ・ディド・イット・アゲイン」、「トーク・ダーティ・トゥ・ミー」はポイズンの「私にもっと汚い言葉を吐いて」のカバー。
2008年。チルドレン・オブ・ボドムの個性の一つは、かなりハードなロックのバンドでありながらキーボードが重要な役割を果たし、曲によっては存在しないと成り立たないことである。この傾向は「ヘイト・クルー・デスロール」以降顕著だ。また、「ヘイト・クルー・デスロール」でボーカルの歌い方が変わったことにより、スクリーモのファンを引き寄せたことも大きい。「ヘイト・クルー・デスロール」がなければトリヴィウムやブレット・フォー・マイ・ヴァレンタインが受け入れられる素地はできあがっていなかっただろう。このアルバムも「ヘイト・クルー・デスロール」の路線で、ギターやキーボードのソロ演奏がヘビーメタル時代の面影を残している。90年代のラウド・ロックで言えばマシーン・ヘッドに似た位置づけだ。サウンドがスクリーモ、ハードコアに近づいている中で、明確なソロ演奏が必要なのかどうかという疑問が出てくる。演奏技術が注目を浴びる時代ははるか昔に終わっている。ジャンルに対するこだわりは90年代に比べて薄れているので、デビュー当時からのヘビーメタル・ファンを捨ててもある程度の人気は維持できると思われる。ボーナストラックでスタン・ジョーンズ、ケニー・ロジャースのカバー収録。
2009年。カバー曲集。
2011年。キーボードが90年代の路線に戻り、メロディック・デス・メタルのサウンドになった。勢いのある曲が多く、曲の構成も簡単ではないが、目新しさはない。ヘビーメタル、デスメタルが荒々しさや過激さの極を追求する音楽だとするならば、10年前に打ち立てた立ち位置を守っている点で成功、とどまっている点で停滞と言える。1曲目と2曲目を入れ替えてもよかった。ボーナストラックを除くと9曲で36分。
2013年。メロディック・デス・メタルやブラック・メタルがハードなロックではなくなって久しく、チルドレン・オブ・ボドムもハードさを追求するようなバンドではなくなりつつある。オープニング曲はイントロが弱いものの、「ニードルド24/7」の路線だ。その次にアルバムタイトル曲を置いてハードな曲にしたのは、構成としては考えられている。「スクリーム・フォー・サイレンス」「トランスファレンス」はメロディック・デス・メタルの形式で演奏しているだけで、曲としてはメロディアスなロックだ。オーケストラ・ヒットを多用するのでアート・オブ・ノイズのヘビーメタル版として聴くことも可能だ。「デッド・マンズ・ハンド・オン・ユー」は終始ミドルテンポで進む(チルドレン・オブ・ボドムにしては)これまでにない曲で、デス声で歌う必要はないのではないか。アモルフィスやオーペスの追随と言われても、ボーカル表現の幅を広げてもよかった。ボーナストラックでラウドネスの「クレイジー・ナイツ」とロクセットの「スリーピング・イン・マイ・カー」をカバーしている。「スリーピング・イン・マイ・カー」のエンディングはジャーニーの「ドント・ストップ・ビリーヴィン」のギターソロになっている。
2015年。ギターが抜け4人編成。近年のアルバムとしてはハードな方か。サウンドは以前と大きく変わらず保守志向そのもので、ヘビーメタルのファンには喜ばれよう。アルバムタイトルは逆説的な皮肉にも見える。ミドルテンポは「プレイヤー・フォー・ジ・アフリクテッド」「オール・フォー・ナッシング」の2曲。ボーナストラックは4曲ともカバー。プラズマティックスの「禁断の女王」、バナナラマの「ちぎれたハート」は邦題が継承されている。ケニー・ロギンスの「デンジャー・ゾーン」は映画「トップ・ガン」のテーマ。
2019年。ギターが加入し5人編成。「ヘイト・クルー・デスロール」以降はラウドロックの要素が入り、一応は時流に併走していたが、このアルバムでは「フォロー・ザ・リーパー」のころに戻っている。保守反動の象徴であるヘビーメタルの要素を、強く残したままでのラウドロック化は広い支持が得られなかった。