ザ・チェインスモーカーズは白人男性DJ2人のグループ。アメリカ出身。「♯セルフィー」「ドント・レット・ミー・ダウン」「クローサー」「サムシング・ジャスト・ライク・ディス」がヒット。
2016年。EP盤。海外での最初のEP「ブーケ」に、2曲を追加した日本独自のEP。追加された「ドント・レット・ミー・ダウン」はEP「コラージュ」にも入っている。「グッド・インテンションズ」のみ男性のボーカルを招き、他の曲は女性がボーカルをとる。「ローゼズ」はミドルテンポだが、この曲が最もヒットした。他の曲はEDMの特徴的なサウンドを備えているが、EDMの新人アーティストという以外の特徴は見出しにくい。
2016年。EP盤。5曲収録。全曲がシングルになっており、「クローサー」「ドント・レット・ミー・ダウン」がヒットしている。5曲ともゲストとしてボーカルを招いており、いずれも女性。「ブーケ」に比べればテンポが落ち、EDMの代表的形式を外している。その上で2曲をヒットさせていることはすごいことだ。
2017年。プロデューサーが2人いるグループとして、自らボーカルをとる曲と、ゲストを招いて歌わせる曲が半数ずつ収録されている。チェインスモーカーズの評価と人気のポイントは、エレクトロダンス音楽において要望される享楽性を抑え、曲の中で自らを客体化したことだ。新しい音楽ジャンルが固有のジャンル名を与えられるときは概ねサウンド面の新奇性に注目され、ポピュラー音楽では享楽性や衝動性、同時代性等が重視される。享楽性や衝動性の新しさで始まったジャンルはやがて内省性を持つアーティストが高い評価を得るようになる。これは、社会全体が、自己正当化を排して自己を客体化し、全体や社会を考える人間を成熟した人間とみなすからだ。ロックもヒップホップも当初は享楽性から始まっているが、ロックではボブ・ディラン、ジョン・レノン、デヴィッド・ボウイ、クラッシュ、ピンク・フロイド、U2、ニルヴァーナ等、ヒップホップではパブリック・エナミー、NAS、コモン、ケンドリック・ラマー等、他のジャンルではボブ・マーリー等が社会性を持ち込んで評価を得ている。社会性獲得の端緒は自己の客体化であり、反省することだ。2010年代に登場したエレクトロダンス音楽で、チェインスモーカーズは明確にその傾向を示した。「サムシング・ジャスト・ライク・ディス」はコールドプレイと協演。
2019年。それほど明るくない、むしろ哀感があるようなメロディーをEDMのようなシンセサイザー、エレクトロニクスで並べていく。10曲のうちザ・チェインスモーカーズの2人だけで作曲しているのは「ビーチ・ハウス」だけ。作曲に参加しているアーティストがどの程度関わっているのかはまちまちだろうが、ザ・チェインスモーカーズは他人との共作によって底上げされている感はある。エレクトロサウンドを強調するのは「サイレン」「セイヴ・ユアセルフ」。10曲で33分弱。日本盤は23曲収録。