2008年。アコースティックギターを中心とするバンドサウンドで、この時期の若い女性シンガー・ソングライターとしては古風だ。作曲はアコースティックギターでするようだがアルバムでは演奏せず、バンドサウンドはプロデューサーが多重録音している。曲調はカントリーではなく、ギターの弾き語りがバンド演奏になっている。コーラスはわずか。曲の多くはカーリー・レイ・ジェプセンの恋愛経験を語っており、若い女性の思い出話の域を出ていない。日本盤は2010年発売。
2012年。サウンドもイメージも大きく変え、エレクトロポップ、ダンス音楽となった。踊りやすいテンポで、メロディーは明るめ、現代的なエレクトロ音になれば、ヒットしないはずがない。過去を回顧する1970、80年代風のシンガー・ソングライターから、現在を楽しむ若い女性への転換に成功している。「ディス・キス」「コール・ミーメイビー」、アウル・シティーが参加した「グッド・タイム」、「トゥナイト・アイム・ゲッティング・オーヴァー・ユー」はいい曲だ。「ビューティフル」はジャスティン・ビーバーが参加。アコースティックギターを基本にした曲は「ビューティフル」と「オールモスト・セッド・イット」だけだが、「ビューティフル」はまだしも、「オールモスト・セッド・イット」は未練がましく残す必要はなかったのではないか。
2015年。エレクトロポップではあるが、前作のようにどの曲もダンスしやすいテンポではなくなった。カーリー・レイ・ジェプセンがシンガー・ソングライターとしての表現力を押し出し、曲の内容によってダンス性にこだわらない編曲を行っている。テンポやリズムに合わせたボーカルメロディーだった前作に比べれば、このアルバムではそれが逆転し、リズムの転換や中断が随時起こる通常のポップスになった。それに伴ってボーカルメロディーの音域も広がっている。オープニング曲のイントロからサックスの演奏があり、バンドサウンドは増えている。「オール・ザット」「ウォーム・ブラッド」は前作にはなかった抑制的なサウンド。