1965年。5人編成。バーズは初期の2枚がフォーク・ロック、「霧の5次元」から「名うてのバード兄弟」までがサイケデリック・ロック、「ロデオの恋人」以降はカントリー・ロックで、常に時代と同時進行、または先駆者だった。12曲のうち、4曲がボブ・ディランの曲で、自作曲は6曲。アルバムタイトル曲も同じ年に出されたボブ・ディランの「ブリンギング・イット・オール・バック・ホーム」収録の曲。それ以外の3曲は「アナザー・サイド・オブ・ボブ・ディラン」の曲。演奏に参加しているのは12弦ギターのジム・マッギンだけで、他のメンバーは歌っているだけ。バックの演奏はハル・ブレインほかのゲスト・ミュージシャン。
1965年。アルバムタイトル曲が2作連続で全米1位。「ターン・ターン・ターン」の詩は聖書の一節で、作曲はピート・シーガー。ボブ・ディランの曲は2曲で、自作曲が11曲中5曲。「友だちだった彼」の彼とは暗殺されたケネディ大統領。
1966年。邦題「霧の5次元」。ほとんどの曲が自作曲となりボブ・ディランの曲はなくなった。このアルバムをサイケデリックに影響されたと感じるかどうかは別にして(実際は予備知識なしに聞けば都合良くサイケデリックとは思われない)、音楽の方向がやや変わったというのは自然に感じることができる。2曲でストリングスが導入される。「霧の8マイル」は名曲。
1967年。邦題「昨日より若く」。ジーン・クラークが抜け4人編成に。テープの逆回転が多い。曲は充実している。ボブ・ディランの「マイ・バック・ペイジズ」はオルガンの音が大きいバージョンの方がいい。クラレンス・ホワイトが2曲で参加。ホーン・セクションも導入。
1967年。ベスト盤。
1968年。邦題「名うてのバード兄弟」。前作にも増してホーンとストリングスが入っているが、ストリングスは明らかにフィドルの音で、カントリー風だ。「霧の5次元」のころのような曲もあり、カントリー・ロックへの過渡期の作品。キャロル・キング、ジェリー・ゴーフィンの曲が2曲、クラレンス・ホワイト参加が2曲。ムーグを使用している。
1969年。邦題「ロデオの恋人」。ギターのデヴィッド・クロスビーが脱退し、クロスビー・スティルス・ナッシュ&ヤングを結成、ドラムのマイク・クラークも抜け、新たにギターのグラム・パーソンズとドラムのケビン・ケリーが加入。マンドリン、バンジョー、スチール・ギターを大幅に導入し、サウンドは完全にカントリー寄りになった。カントリー、ブルーグラスを音楽的背景に持つグラム・パーソンズの影響力は大きい。ロジャー・マッギンとクリス・ヒルマンが作曲に関わった曲はなく、唯一「私は巡礼」の編曲に携わっただけ。「ゴーイング・ノーホエア」「ヒッコリー・ウィンド」「100年後の世界」収録。
1969年。邦題「バード博士とハイド氏」。グラム・パーソンズ、ケビン・ケリーが脱退し、クラレンス・ホワイト、ジョン・ヨーク、ジーン・パーソンズ加入。グラム・パーソンズがいなくなったので、ブルーグラス風味は抜けた。しかし、クラレンス・ホワイトが加入してカントリー風味は残している。ザ・バンドの「火の車」をカバー。「ロデオの恋人」はカントリー・ロックというよりはバンジョーやマンドリンが入った完全なカントリーで、実際はこのアルバムからカントリー・ロックが始まっていると言ってよい。
1969年。邦題「イージー・ライダー」。バランスの取れたアルバム。前作と同路線。「ジーザス・イズ・ジャスト・オールライト」はドゥービー・ブラザーズがカバー。
1970年。邦題「(タイトルのないアルバム)」。LPは2枚組で1枚目はライブ盤。2枚目はスタジオ盤。ライブ盤A面は「ターン・ターン・ターン」以外のヒット曲や名曲。B面は丸ごと「霧の8マイル」を16分にわたって演奏している。ベースはスキップ・バッティン。デビュー当時は楽器演奏できるメンバーが1人だけだったが、クラレンス・ホワイトの加入で一気にライブ可能なバンドになった。
1971年。女性コーラス、キーボードを使った同時代的な音。「ロデオの恋人」のような変化は認められるのに、このアルバムのような変化は当時認められなかった。ルーツに忠実で飾り気のないサウンドには、精神の純粋性が宿っているとでも思われていたのだろうか。実際のところ、メロディーは前作と同様で、ピアノやオルガンはこれまでのサウンドをよりよくするものではあっても壊すものではない。「グローリー・グローリー」は「イージー・ライダー」の「ジーザス・イズ・ジャスト・オールライト」の作者と同じ。「グリーン・アップル・クイック・ステップ」はブルーグラス。
1972年。オープニング曲はローリング・ストーンズとチャック・ベリーを足したような曲。基本的には装飾を取り除いた「バードマニア」の路線。同じ年にイーグルスがデビューしてカントリー・ロックの主導権が引き継がれていった。
1972年。「名うてのバード兄弟」から「ファーザー・アロング」までのベスト。
1973年。初期のメンバーによる録音。
1980年。シングル集。
1994年。ベスト。