BRING ME THE HORIZON

ブリング・ミー・ザ・ホライズンはイギリスのロックバンド。2004年のデビュー時はデスコアの代表的バンドとされた。2010年代からシンセサイザーとプログラミングを取り入れたメロディアスなロックとなっている。

THIS IS WHAT THE EDGE OF YOUR SEAT WAS MADE FOR

2004年。EP盤。4曲収録。デス声と絶叫型ボーカルを使うプログレッシブ・ヘビーメタル。電子音も若干聞こえる。ボーカルが全曲を作詞している。CDのブックレットにはそれぞれの曲が何について歌っているのかが書かれており、ボーカルが解説しているといられる。1曲目の「リ・ゼイ・ハヴ・ノー・レフレクションズ」は歌詞の中に「ブリング・ミー・ザ・ホライズン」が出てくる。

1
COUNT YOUR BLESSINGS

2006年。1分台から5分台までのメタルコア。リズムギターとベースが同じフレーズを弾き、曲の緩急を明確にする。メタルコアが新しいジャンルとして注目されたころのキルスウィッチ・エンゲージやシャドウズ・フォールを参照しながら、若いバンドが同じようにやってみたというような曲調。「テル・スレイター・ノット・トゥ・ウォッシュ・ヒズ・ディック」「ア・ロット・ライク・ヴェガス」など、時折出てくるメロディアスなギターが曲に変化を与える。1分台の「スロー・ダンス」「ヒフティーン・ファゾムス,カウンティングス」はインスト曲。

2
SUICIDE SEASON

2008年。ギターの厚みが増し、プログラミングによる電子音が増えた。オープニング曲のイントロでプログラミングの音を入れ、変化を印象づける。電子音はエンター・シカリのデビュー盤ほどではないが、ヘビーメタル、メタルコアの聞き手には、新しい音として捉えられるだろう。「フットボール・シーズン・イズ・オーヴァー」はビースティー・ボーイズの影響を感じさせる。アルバムタイトル曲は8分あり、前半の4分だけでも曲は成り立つ。後半の4分は、それだけでは曲として独立できなさそうだ。このアルバムで日本デビュー。

3
THIS IS A HELL BELIEVE ME I'VE SEEN IT.THERE IS A HEAVEN LET'S KEEP IT A SECRET.

2010年。邦題「ゼア・イズ・ア・ヘル.ゼア・イズ・ア・ヘヴン」。リズムギターが交代。シンセサイザー、プログラミングを前作以上に取り入れている。女性ボーカル、女性コーラスも取り入れているが、それよりもプログラミングで制御した女性コーラスの入れ方に新しさがある。エンター・シカリがパンク、ハードコアにプログラミングを取り入れた手法を、ジャンル違いのメタルコアでやっている。ヘビーメタルはもともと伝統楽器を演奏することに重点を置き、エレクトロ音楽を思わせるサンプラーやシーケンサーを使うことを忌避してきた。そのヘビーメタルで、プログラミングを取り入れて広く注目されたことは、聞き手の変化と世代交代を感じさせる。「ブラックリスト」はパンテラの影響が大きい。日本盤ボーナストラックの「ザ・サッド・ネス・ウィル・ネヴァー・エンド」のリミックスはスクリレックスが初めて本格的にリミックスした曲。

4
SEMPITERNAL

2013年。リズムギターが抜け、キーボードが加入。前作と同様に、音の変化をオープニング曲のイントロから示している。「キャン・ユー・フィール・マイ・ハート」「スリープウォーキング」「シャドウ・モーゼズ」はシンセサイザーが中心の曲だ。シンセサイザーとともに重要な役割を果たしているのが、42人もいるコーラスのゲスト参加だ。シンセサイザーの多用で曲がメロディアスになり、メタルコア由来の絶叫型ボーカルが少なくなった。コーラスはバンドのメンバーとは別のメロディーを歌ったり、コーラス自体がボーカルを代行していたりする。メロディアスな曲では、ラップのないリンキン・パークに近くなる。「シャドウ・モーゼズ」「クルーケッド・ヤング」の弦楽合奏は12人の奏者が演奏しており、シンセサイザーでの代用ではない。

5
THAT'S THE SPIRIT

2015年。デビュー時にその当時の最先端の音楽性で出てきたアーティストが、成功するにつれてメロディアスなロックになっていくことはこれまで多数あった。ブリング・ミー・ザ・ホライズンもこのアルバムで、メタルコアを脱したロックになっている。ボーカルは全ての部分をメロディー付きで歌う。一部は内省的な、弾き語り的な歌い方もする。従って絶叫する部分は少なくなっているが、ハードさは多くの曲で残しており、ボーカルの表現領域を拡大している。「ハッピー・ソング」は子どもの合唱が入り、歌詞も「大きな声で歌って憂鬱を忘れよう」という曲なので、代表曲になり得る曲だ。「スローン」はミューズのような曲。「ドゥームド」「フォロー・ユー」「ラン」はシンセサイザー、プログラミングが曲の中心で、今後の変化や発展を期待させる。

6
AMO

2019年。前作からやや暗くなり、ポップさよりは緊張感や実験性が多く出ている。オープニング曲の「アイ・アポロジャイズ・イフ・ユー・フィール・サムシング」と2分弱の「アウチ」、「フレッシュ・ブルーゼズ」はエレクトロ音楽。グライムスが参加している「ニヒリスト・ブルース」はエレクトロ・ダンス・ミュージック(EDM)の部分もあるが、エヴァネッセンスの曲を引用しているので高揚感を抑えたロックになっている。クレイドル・オブ・フィルスのボーカル、ダニ・フィルスが参加した「ワンダフル・ライフ」はオーケストラをフルに使った豪華な曲。「シュガー・ハニー・アイス&ティー」は「センピターナル」以降では最もハード。そのすぐ後にヒップホップの要素が強い曲が来ており、バンドのジャンルの幅広さを物語る。「ヘヴィー・メタル」は「センピターナル」「ザッツ・ザ・スピリット」を聞いたヘビーメタル、メタルコアのファンから拒否反応を示され、「これはヘビーメタルではない」と説明して柔軟性のなさを嘆く。

7
POST HUMAN:SURVIVAL HORROR

2021年。インダストリアルロック、ニューメタルをメインとする攻撃的な曲調になった。サンプリングを含めれば9曲のうち5曲は女性ボーカルが入る。オープニング曲の「ディア・ダイアリー、」はスレイヤーの「エンジェル・オブ・デス」を思わせる。「パラサイト・イヴ」「オベイ」はニューメタル。「キングスレイヤー」はベビーメタルが参加し、実質的にメインボーカルとなって英語と日本語で歌っている。「キングスレイヤー」はエンター・シカリのようなエレクトロコアだが、同様にエヴァネッセンスのエイミー・リーがメインボーカルを取る「ワン・デイ・ジ・オンリー・バタフライズ・レフト・ウィル・ビー・イン・ユア・チェスト・アズ・ユー・マーチ・トワーズ・ユア・デス」はシンセサイザー主体のバラード。日本盤はボーナストラックでライブ3曲を収録。