1972年。邦題「狂気への誘い」。キーボードを含む5人編成。ボーカルもギターを弾くのでギターは2人。アメリカ・ニューヨークのバンドで、西海岸のような明るさやカントリー色は一切ない。ロックン・ロールを下地とし、オルガンを中心とするキーボードがイギリスのハードロックの雰囲気を出す。メロディアスだがややインパクトに欠けるか。「シティーズ・オン・フレーム」「ビフォー・ザ・キッス」「ゼン・ケイム・ザ・ラスト・デイズ・オブ・メイ」収録。日本盤は75年に発売。全米172位。
1973年。邦題「暴虐と変異」。日本デビュー盤。前作から大きく飛躍。A面を「ザ・ブラック」、B面を「ザ・レッド」としている。「ザ・ブラック」はスピーディーなハードロックで、回転の速いギターが頻繁に出てくる。サーフィン・ミュージックのリック・デイルを思わせる演奏もある。メンバーは5人だがギターは3人、キーボードが3人、ボーカルは4人いることになっており、特にトリプル・ギターとダブル・キーボードが可能なことで演奏に幅が出ている。「赤と黒」「天国への特急便」「7人の荒くれ」「ベイビー・アイス・ドッグ」「塩鮭色の女王様(生石灰の娘)」収録。全米122位。
1974年。邦題「オカルト宣言」。前作の「ザ・レッド」面の雰囲気がそのままオープニング曲から続く。このアルバムの聞き所は最後の2曲、「地獄の炎」と「天文学」であることは明白だ。「地獄の炎」は初めて本格的にシンセサイザーを使用している。2曲とも70年代ブリティッシュ・ロックのバラードにある陰りを持った曲だ。「人間そっくり」「メッサーシュミットME262」収録。全米53位。
1975年。邦題「地獄の咆哮」。ライブ盤。ハードな曲を意識して選んだのか、最初から最後まで一気に走る。ハードロックのライブ盤としては名盤に入るだろう。「ワイルドで行こう」はステッペンウルフのカバー。シングルカットもされA面はスタジオ・バージョンでB面がライブ。全米22位。
1976年。邦題「タロットの呪い」。サウンドがややソフトになり、ギターを弾き倒すという感じではなくなった。ハードロックもロックン・ロールもプログレッシブ・ロックもあるが、散漫な印象はなく、個々の曲が分類されうるジャンルの中で高品質を保っている。「懺悔」はブレッカー・ブラザーズがサックスで参加したアメリカン・ロック。「死神」はヨーロッパ型ハードロックでバンドの代表曲。「ベラ・ジェミニの復讐」の女性ボーカルはパティ・スミス。スタジオ盤ではバンド史上最も売れている。全米29位。「死神」は12位。
1977年。70年代後半のアメリカン・プログレッシブ・ハードロックの影響を受けたのかどうかはわからないが、少なくともディスコの影響を受けたようには見えない。オープニング曲は片言の日本語ナレーションが入る「ゴジラ」。B面の出来は傑出しており、「天上の女王」は典型的なアメリカン・プログレッシブ・ハードロック。「ゴーイン・スルー・ザ・モーションズ」はモット・ザ・フープルのイアン・ハンターが作曲に参加している。全米43位。
1978年。邦題「暗黒の狂宴」。7曲のうち2曲はカバー。「死神」は日本語のアナウンスもきちんと再現している。「朝日のない街」はアニマルズのカバー。作曲はバリー・マン。「キック・アウト・ザ・ジャムズ」はMC5のカバー。全米44位。
1979年。ジェファーソン・エアプレインの「ドラゴン・フライ」、ブルー・オイスター・カルトの「ミラーズ」、ドゥービー・ブラザーズの「ミニット・バイ・ミニット」はポップさを持ったオーソドックスなロックで、サウンドの変化によってバンドの評価が下がることはなかった。ロック界全体の中で言えばアダルト・オリエンテッド・ロックの流行、ハードロックの世界で言えばアメリカン・プログレッシブ・ハードロックの流行にそったサウンドで、キーボードやコーラスが前に出ている。女性コーラスも使う。「スペクターズ」や次作の「カルトザウルス・エレクタス」よりも長くチャートインしていた。「イン・ジー」は「死神」以来のヒット曲。全米44位。「イン・ジー」は74位。
1980年。前作よりもややハードになった。70年代中期のハードさにプログレッシブ・ロック風のキーボードが加わった感じ。曲の構成に変化が出たように聞こえるが、それはデビュー当初から変わらない。プロデューサーはアイアン・メイデンのプロデューサーだったマーティン・バーチ。「マーシャル・プラン」は第二次大戦後のアメリカによるヨーロッパ復興計画の名前。現在のヨーロッパ繁栄の基礎となった。ディープ・パープルの「スモーク・オン・ザ・ウォーター」の一節が出てくる。全米34位。イギリスではニュー・ウェイブ・オブ・ブリティッシュ・ヘビー・メタルの勢いでハードロック・ヘビーメタルが注目され、バンド史上最高の全英12位となっている。「黒い魔剣」「ジョアン・クロフォード」収録。
1981年。邦題「呪われた炎」。ギターとキーボードがうまくメロディーを構成し、ベースとドラムが曲の基礎を支える理想的なサウンド。特にベースの役割は大きく、またそうしたことが聞いてすぐ分かるところもこのアルバムのすばらしさを物語っている。必然性が明確でない展開を持ち込んで曲に変化をつけようとするよりは、基本的な事柄を確実に押さえれば失敗しない例だ。傑作。「お前に焦がれて」は代表曲のひとつ。全米24位。ロックのみのチャートでは1位だった。「お前に焦がれて」は40位。
1982年。ライブ盤。「ロードハウス・ブルース」はドアーズのカバー。全米29位。
1983年。デビュー以来初めてメンバーの交代があり、ドラムが替わった。ドラムの音も変わり、エレキ・ドラムの軽く乾いた音になった。このころヒット・アルバムを出していたサーガの影響かどうかは分からない。他のアルバムに比べてメンバー以外の作曲者が参加している曲が多く、最後のヒット・シングルである「シューティング・シャーク」はパティ・スミス、「レット・ゴー」はモット・ザ・フープルのイアン・ハンター、「テイク・ミー・アウェイ」はアルド・ノヴァ、「シャドウ・オブ・カリフォルニア」はアリス・クーパー・バンドのニール・スミスが関わっている。「ミラーズ」以来再びポップなハードロックになり、特に「シューティング・シャーク」はサックスも入ったコンテンポラリーなロックだ。メロディーの主導権はキーボードにあり、ギターが活躍する場所はあまりない。イアン・ハンターが作曲に加わった「レット・ゴー」はロックン・ロールタイプで、アルバム全体として曲の統一感があった「ミラーズ」とは異なる。全米93位。「シューティング・シャーク」は83位。
1986年。邦題「倶楽部ニンジャ」。ドラムとベースが交代。アルバムジャケットで言えば、「カルトザウルス・エレクタス」から時系列が新しくなっていき、このアルバムが「未来」ということになる。エレクトリック・ライト・オーケストラを思い出すジャケット。サウンドもそれに近く、シンセサイザーによる機械的な音が近未来風のイメージを作っている。売れる要素の高い曲がそろっており、どの曲もメロディアスだ。わざわざブルー・オイスター・カルトがする必然性は感じられない。ストーリーズ、ヘイガー・ショーン・アーロンソン・シュリーブのケニー・アーロンソンがベースで参加。全米63位。
1988年。コンセプト盤だという。ハードさがまた戻り、内容もバンド史上屈指だ。特に「バロン・フォン・フランケンシュタイン」はロニー・ジェイムス・ディオのようなゲスト・ボーカルがドラマティックで重厚な曲を歌う傑作。「アストロノミー」は「オカルト宣言」の「天文学」の再録音。「ブルー・オイスター・カルト」という曲も作ってしまった。ジョー・サトリアーニ、アルド・ノヴァ、ドアーズのロビー・クリーガーがギターで、ストーリーズ、ヘイガー・ショーン・アーロンソン・シュリーブのケニー・アーロンソンがベースで参加。全米122位。
1992年。映画のサウンドトラック盤。2曲はブルー・オイスター・カルトの曲。
1998年。ボーカルのエリック・ブルームとギターのドナルド・ローザーの曲が交互に出てくるが、エリック・ブルームの曲はハードロックでキーボードは少ない。ドナルド・ローザーの曲はヒット曲である「死神」のような雰囲気の曲もあるが、緊張感は少なく、かつてバンドがポップなサウンドに流れたときのきらびやかさも抑えられている。ドラムはレインボーのチャック・バーギとボブ・ロンディネリ。「イン・ディー」は「ミラーズ」の「イン・ジー」のライブ・バージョン。「パワー・アンダーニース・ディスペア」収録。日本盤はアメリカ盤とジャケット違い。
2000年。ベスト盤。ブルース・フェアバーンがプロデュース。
2001年。ドナルド・ローザーの曲では、ボーカルの音域の狭さが気になるところだ。アルバムタイトルやジャケットには70年代の不穏な空気を残しているが、サウンドは普通のハードロックになっている。
2002年。ライブ盤。