1991年。4人編成。この時期のイギリスでの流行であるマッドチェスターの影響を受けたロックで、シューゲイザー風の曲も含まれる。ストーン・ローゼズの雰囲気に若干のキーボードが加わり、曲によってディストーションが大きくかかったギターが使われる。「スロウ・ダウン」「ウェアー・ミー・ダウン」などはシューゲイザー風。ボーカルに深めのエコーがかけられ、60年代後半のアメリカのような浮遊感がある。コーラスも2声以上あり、編曲の力はありそうだ。流行のだるさを多少伴う同時代的ロック。この時期に流行していたサウンドを2つ取り込んでみたものの、それ以上の何かを示すことはできなかった。「シーズ・ソー・ハイ」「ゼアズ・ノー・アザー・ウェイ」収録。全英7位。
1993年。キーボードの量が増え、サウンドの幅が広がった。ストリングスやホーンセクション、古風なシンセサイザーを使い、普遍的なポップス、ロックをやっている。編曲も70年代の変化に富んだポップさがあり、ビートルズ、キンクス、などのメロディーがこのバンドに継承されたかと感じるほどだ。「フォー・トゥモロウ」「ケミカル・ワールド」「サンデイ・サンデイ」収録。全英15位。
1994年。いろいろなロックのジャンルをうまく取り入れ、ポップさやメロディーの楽しさ等を失わずに作った。オープニング曲の「ガールズ&ボーイズ」は前作と同様にストリングス、ホーンセクションを使用し、メロトロンやオルガンで懐古的なサウンドもある。統一的な曲調ではない。アルバムタイトル曲は映画「さらば青春の光」の主演、フィル・ダニエルズが参加している。「ジュビリー」はロイ・ウッド風の曲をデビッド・ボウイが歌っているような曲。人気がイギリスを超え、世界でヒットするようになった。全英1位。
1994年。ブラーのシングル盤の収録曲を集めた企画盤。日本のみの発売。軽めの曲やインスト曲、歌詞に内容があまりない曲が多いが、音楽的な幅は広い。「マギー・メイ」はロッド・スチュワートのカバー。
1995年。70年代末から80年代前半風のバンドサウンドで、ポップなメロディーが多いものの、歌詞は明るくない。ブラーのメンバーはイギリスの社会の中では上位1割程度に属する中流層だが、歌詞では下位9割を占める大衆労働者層の悲哀を描いており、ポピュラー音楽に社会的意味を見出そうとする中流層から評価を得ている。「カントリー・ハウス」や「フェイド・アウェイ」はキーボード、ホーンセクション、も使い、音が多彩だ。「ザ・ユニヴァーサル」はストリングス、ホーン・セクションが入る壮大な曲。全英1位。
1995年。シングル盤。「イット・クドゥ・ビー・ユー」「ステレオタイプス」はライブ。リミックス1曲収録。
1996年。ライブ盤。
1997年。シングル盤。中期から後期のビートルズを意識したようなサウンド。アルバム未収録曲が3曲あり、「オール・ユア・ライフ」もビートルズ路線。
1997年。アメリカの影響を受けたのか、オルタナティブ・ロック風の曲が多く、明るさや楽しさが感じられる曲は少ない。ギターはざらつきが多く、意図的にボーカルを加工した曲も複数ある。ボーカル兼キーボードのデーモン・アルバーンが主導権を取れば、アレンジも歌詞も考えられた曲が多くなるのだろうが、取らなければ相対的にグレアム・コクソンの影響力が上がり、音響的な試行が増えていくのだろう。「ユー・アー・ソー・グレイト」はグレアム・コクソンがボーカルをとる。アルバムの真ん中でアクセントになっている。アメリカではこのアルバムが最大のヒット作。全英1位。
1997年。シングル盤。「ビートルバム」と「ソング2」はアルバムの方向性を象徴する曲。「ポリッシュド・ストーン」はビートルズの「ハロー・グッバイ」を思い出す。
1998年。リミックス集とライブの2枚組。日本独自。ライブは歓声なし。
1999年。曲の展開に不確定の度合いが大きくなり、ポップさからさらに遠くなっている。「BLUR」から続くオルタナティブ・ロックの路線を維持しつつ、プロデューサーを変えて音楽的変化をさらに大きくしている。メンバーの人間的成長に伴って、サウンドも単純ではなくなってきた。グレアム・コクソンが作詞し、ボーカルも取る「コーヒー&TV」はポップに聞こえる。曲が一旦終わったあと、短いインスト曲が付け足されていることが多い。オープニング曲の「テンダー」はゴスペル合唱を使うが、これまでのアルバムとは異なるサウンドになっていることの宣言にもなっている。全英1位。
1999年。シングル盤。7曲収録。「テンダー」はコーネリアスがリミックスしている。
2000年。ベスト盤。
2003年。ギターのグレアム・コクソンが抜け3人編成。ギターはボーカルのデーモン・アルバーンが兼任している。モロッコで録音しているという。グレアム・コクソンが抜けたことで、作曲を含めたアルバム制作の主導権はデーモン・アルバーン1人に集中することになり、エレクトロ音楽、前衛音楽の要素が大きくなっている。ギターは目立たず、シンセサイザーやサンプリングを多用したリズムの中にもスチールドラムの音やアフリカの民族音楽のようなリズムが入っている。「アウト・オブ・タイム」はすばらしい。「クレイジー・ビート」はファットボーイ・スリムのノーマン・クックがプロデュースで参加している。このアルバムで活動休止。全英1位。
2015年。ギターのグレアム・コクソンが復帰し、再結成。「13」ほどオルタナティブ・ロックではなく、「シンク・タンク」ほどロックから離れたサウンドではないが、デーモン・アルバーンの好みが反映された曲が多い。ギターよりもシンセサイザーがメロディーを形成する。「ゴー・アウト」はギターが主導。「ソート・アイ・ワズ・ア・スペースマン」は「シンク・タンク」の曲調。「オン・オン」は70年代のイギリスのポップなロックを思わせる。全英1位。
2012年。ブラーのボーカル、デーモン・アルバーン、レッド・ホット・チリ・ペッパーズのベース、フリー、フェラ・クティのドラム、トニー・アレンによるバンド。キーボード、ギター、ベース、ドラム、パーカッションで、アクのないロック、時代に取り残されたかのような素朴なロックを演奏する。ラップやホーン・セクション、エリカ・バドゥによる女声ボーカルも使われるが、特に加工せず、エレクトロニクスも使わない。アフリカを思わせる部分はそれほどなく、いかにも民族音楽風だったりファンクだったりするということがない。デーモン・アルバーンが興味で録音したアルバムと言える。