ブリンク182はアメリカのメロディック・パンクバンド。3人編成。メロディック・パンクではグリーン・デイ、オフスプリングに続く有力バンド。「エニマ・オブ・アメリカ」がヒットし、パンクの衝動的なサウンドを抑えたポップなサウンドで、2000年代のポップ・パンクの手本となった。「エニマ・オブ・アメリカ」はメロディック・パンクで世界最大のヒットとなっている。教養の低い、いわゆる「おバカ」的な言動も後続に影響を与えている。2000年代後半は活動を休止していたが、2011年に復活している。
1994年。もともとはデモ・テープだったカセットを1998年にCD化した企画盤。音質はデモ・テープそのままで、ボーカルのメロディーも不安定だが、曲がポップでメロディアスであることはよく分かる。「チェシャー・キャット」に収録されている「カルーセル」「サムタイムズ」「トースト・アンド・バナナズ」「TV」「ストリングス」「フェントゥーズラー」「ロメオ・アンド・レベッカ」はこのデモ・テープにも入っている。
1995年。ギターとベースがボーカルを兼任する3人編成。アメリカ出身。スピーディーでメロディアスなロック。ギター、ベース、ドラム以外の楽器が使われていないので、とりあえずパンクと呼ぶこともできるが、普通にロックとして扱ってもいいようなサウンドだ。「カコフォニー」の前半はミドルテンポ。ギターが2人必要な部分もあるが、基本的にデモ・テープの演奏に近い。ボーカルは多少改善している。「ペギー・スー」はバディ・ホリーのカバーではない。「ディペンズ」の演奏の最後に聞こえるギターのメロディーはガンズ・アンド・ローゼズの「スウィート・チャイルド・オブ・マイン」か。「チェシャー・キャット」とは「不思議の国のアリス」に出てくる「チシャ猫」。
1997年。大手レコード会社と契約したので、全体の質が上がっている。ギターの重ね録りは当然で、「ワギー」「アンタイトルド」「レミングス」では曲のイメージを決定するコーラスも入る。ボーカルも安定したメロディーを取れるようになった。「ディジェネレイト」の最後はメタリカの「エンター・サンドマン」だと思われる。このアルバムで日本デビュー。
1999年。邦題「エニマ・オブ・アメリカ」。ドラムが交代。ほとんどの曲がギターを2人必要とし、ボーカルもコーラスを多用する。全曲がポップで前向きだ。全体的に演奏の技巧も上がっており、ヒットしない方が不思議なサウンドだ。このアルバムの革新性は、それまでのパンクの音楽的イメージを踏襲しながら男性的衝動性を抑え、一般的なロック並みの音楽的整合感を与えたこと、すなわち男のパンクから若者全員のパンクになったことだ。グリーン・デイの「ドゥーキー」を上回り、世界で最も売れたメロディック・パンクのアルバム。「ダンプウィード」「ホワッツ・マイ・エイジ・アゲイン?」収録。
2000年。邦題「blink 182 ザ・マーク、トム、アンド・トラヴィス・ショウ(エニマの逆襲!)」。ライブ盤。アルバムよりも高速で演奏され、安定している。全曲が4分未満。「マン・オーヴァーボード」はスタジオ録音による新曲。ライブの曲間のMCも訳詞されている。21曲目から49曲目までは曲ではなくMCで、しゃべりごとに区切られている。このMCも訳詞されている。最短5秒、最長1分弱で、50曲目の「13マイルズ」につながる。「13マイルズ」は初回盤のみに収録されているジョーク曲。
2001年。前作を踏襲。ギターの音圧が上がったので、ハードになったように聞こえる。オープニング曲のタイトルは「アンセム・パート2」で、「エニマ・オブ・アメリカ」の最後の曲である「アンセム」からつながっていることは明らかだ。サウンド上の大きな変化はないというメッセージが読み取れる。ギターの切れがよくなったのと、短く刻む演奏が増えたので鋭角的になっている。「ギヴ・ミー・ワン・グッド・リーズン」はパンクが好きでヘビーメタルが嫌いという指向をはっきり述べている。
2003年。ロックであることには変わりないが、エレクトロニクスを取り入れ、メロディーにも暗さが出てくるようになった。「エニマ・オブ・アメリカ」「テイク・オフ・ユア・パンツ・アンド・ジャケット」に比べると大きな変化ととられるだろう。このアルバムの質的変化はメンバーの人間的成長に由来する。若年層から大人になる上で、精神的成熟に至るまでのさまざまな不安や悲観を曲に反映している。初期のポップなパンクからはサウンドが変化してもヒットするのは、曲の表面よりも内実が支持されるからだ。「オープニング曲の「フィーリング・ディス」はエンディングで多重コーラスが聞ける。雰囲気が変わるのは3曲目の「アイ・ミス・ユー」からで、これまでなかったニューウェーブのようなボーカルになり、キーボードも明確に使う。4曲目の「ヴァイオレンンス」でドラム・マシンを大幅に取り入れ、これまでのブリンク182とは違う方向に向かったことを訴える。「ザ・フォーレン・インタールード」「オール・オブ・ディス」「アイム・ロスト・ウィズアウト・ユー」はニューウェーブ。「オールウェイズ」はキーボード・ソロがある。「オール・オブ・ディス」はザ・キュアーのボーカル兼ギター、ロバート・スミスが参加している。
2005年。ベスト盤。
2011年。キーボードを含んだメロディック・パンク。キーボードはジェリーフィッシュのロジャー・ジョセフ・マニング・ジュニアが演奏しているので、エンジェル&エアウェーヴスに連なると思われるが、作曲はすべてバンド名義になっている。メロディック・パンクの一般的なイメージよりは広いサウンドを持ち、過去の路線とは明らかに異なる。前作と同様にメンバーの人間的成長が反映されており、ポップなパンク以外のジャンルにも音楽的な敬意がある。キーボードは雰囲気を作る使い方だが、曲の中では重要な役割を果たす。「ネイティヴス」「ハーツ・オール・ゴーン」はスピーディーなメロディック・パンク。「カレイドスコープ」「ディス・イズ・ホーム」「ラヴ・イズ・デンジャラス」はキーボードが入ったロック。
2016年。ボーカル兼ギターが交代。交代したことの影響はほとんどなく、メロディアスなロックとなっている。アップテンポの曲は最初の「シニカル」と最後の「ボヘミアン・ラプソディ」だけで、それ以外の曲は通常のテンポだ。このバンドの音楽的特徴はハードコア風の高速パンクではなくなり、バランスのとれたポップさになっている。キーボードはそれほど多くないが薄く使われている。「ソーバー」はフォール・アウト・ボーイのパトリック・スタンプが共作しているが、「ロサンゼルス」の方がフォール・アウト・ボーイの雰囲気に近い。「ボヘミアン・ラプソディー」は邦題を原題通り「ブロヘミアン・ラプソディー」とした方がよい。
2019年。「ブリンク182」「ネイバーフッズ」の方向性に近く、メンバーの社会的関心や精神状態が曲に反映されている。「ダークサイド」「ジェネレーション・ディヴァイド」「アイ・リアリー・ウィッシュ・アイ・ヘイテッド・ユー」はメンバーの問題意識が読み取れる。ブリンク182はグリーン・デイの「アメリカン・イディオット」ほどの分かりやすい主張をしていないが、社会性の高さはグリーン・デイ以上のものがある。それをアルバムタイトルやジャケットで示さないだけだ。
2006年。ブリンク182のギター兼ボーカル、トム・デロングがオフスプリングのドラムと結成したバンド。ギター、ベースを加えた4人編成。ブリンク182時代とはサウンドが変わり、キーボードを多用したロック。パンク・ロックではない。前のめりに突っ走る曲もない。キーボードはジェリーフィッシュ、インペリアル・ドラッグ、ムーグ・クックブックのロジャー・ジョセフ・マニング・ジュニアが演奏している。全曲をトム・デロングが作曲し、プロデュースしているので、トム・デロングが中心であることは明らかだ。
2007年。キーボードが減り、ギターが中心のサウンドになった。前作同様、ギターには残響音風の処理がかかっている。雰囲気をつくるための薄い持続音は入っていることもある。オープニング曲はギターとドラムの動きが速ければブリンク182と同じメロディック・パンクだ。「ラヴ・ライク・ロケッツ」や「トゥルー・ラヴ」は打楽器風電子音が多用される。ボーカルの音域がブリンク182時代よりも狭くなり、やや高揚感に欠けるが、曲のよさで何とか持っている。
2006年。邦題「+44(プラス・フォーティー・フォー)」。ブリンク182のベース兼ボーカルとドラムが結成したバンド。ギター2人の4人編成。ブリンク182時代の「BLINK-182」に近いサウンド。4曲目の「リトル・デス」からニューウェーブ風サウンドが出てくるが、曲は「BLINK-182」よりも分かりやすい。「155」ではキーボードが全編に入っており、「ウェザーマン」はキーボードを使わないニューウェーブ。「メイク・ユー・スマイル」は女声ボーカルが入る。