1998年。アフリカ系のウィル・アイ・アム、フィリピン系アフリカンのアップル、メキシコ系アメリカ先住民のタブーによる3人組。アメリカ・ロサンゼルスが拠点。ウィル・アイ・アムがメーン・ボーカルで、キーボードも弾く。バンドの演奏とサンプリングとプログラミング(打ち込み)をすべて用いる。特に、バンドの演奏を取り入れたのは当時としては珍しかった。ザ・ルーツのように、バンドの演奏自体を特徴とするグループもあったくらいで、ヒップホップでは基本的にサンプリングと打ち込みでバックの演奏を作る。フィリピン系とアメリカ先住民系のメンバーがいるので、曲の中で使われる多彩なリズムや楽器がよく結びつけられるが、そうしたサウンドはメンバーの出自にあまり関係がないのではないか。
2000年。バックの演奏がプログラミング中心になり、サウンドも一般的なヒップホップに近くなっている。オープニング曲の「BEPエンパイア」は有名プロデューサーのDJプレミアが参加。他の曲ではデ・ラ・ソウル、モス・デフ、メイシー・グレイが参加している。発売当時の日本盤は「レイド・バックしたオーガニック・ヒップホップ」と評されている。
2003年。白人女性のファーギーが加入し4人編成。音域が広くなり、バックの演奏も多彩になった。前作はヒップホップの世界の内部にいる人を中心に構成していたが、このアルバムは他のジャンルの人が多い。「シャット・アップ」「フライ・アウェイ」はヒップホップ・ソウルの様相で、ファーギーが女性ソウル歌手並みに歌う。「セクシー」はセルジオ・メンデスがピアノで参加。「アンザイエティ」はパパ・ローチが参加しているのでロックに大きく傾いている。「ホエア・イズ・ラヴ」は他のジャンルの多くのファンに感動を与える傑作。バックのストリングスも効果的だ。
2005年。ドラムやリズムを刻む音が大きくなり、ヒップホップにしてはポップスに近い。ファーギーが加入したことによって女声コーラスも多用されている。突出したエンターテイメント性がある。オープニング曲はリック・デイルの「ミザルー」をサンプリングしてインパクトを与える。「ドント・ライ」はファーギーが活躍。「ダム・ディドリー」「フィール・イット」などはソウルの入ったヒップホップではなく、ヒップホップが入ったソウルだ。ゲストも大物が増え、ジェイムス・ブラウン、スティング、ジャック・ジョンソンが参加。「ライク・ザット」にはヒロシマ、ナガサキが出てくるが、日本人にはあまり好ましい使われ方ではない。
2005年。シングル盤。2曲入り。
2005年。シングル盤。「ドント・ファンク・ウィズ・マイ・ハート(シカゴ・ハウス・リミックス)」は「ドント・ファンク・ウィズ・マイ・ハート」に収録されている曲と同じ。
2006年。邦題「続・猿伝説。~裏ベスト:リネゴジエイションズ」。「ライク・ザット」と「オーディオ・ディライト」はアルバムと同じバージョン。7曲で31分。
2009年。「THE E.N.D.」とは「The energy never dies.」のことだとブックレットの中に書いてある。ファーギーの活躍が大きくなり、曲が覚えやすい。ヒップホップのグループというよりは、ヒップホップを取り入れたポップグループの方がふさわしい。「ナウ・ジェネレーション」はザ・ナックの「マイ・シャローナ」のようなポップさ。歌詞にグーグルやウィキペディア、マイスペース、フェイスブックが出てくる。「ショウダウン」にはオバマも出てくる。争いをやめてパーティーをしようという歌詞には、中産階級や女性ファンの多くが共感するだろう。「ブン・ブン・パウ」「アイ・ガッタ・フィーリング」「ミート・ミー・ハーフウェイ」「アイマ・ビー」収録。
2010年。前作の続編のようなタイトルで、サウンドも前作を継承している。覚えやすいメロディーをリズムマシーンとエレクトロニクスで作り、ボーカルも含めて音を加工している。あまりラップで歌うことがないファーギーも「ファッション・ビーツ」でラップを歌っている。メロディアスな曲は踊りやすさとも両立しており、前作並にヒットするだろう。「ザ・タイム(ダーティー・ビット)」収録。
2006年。邦題「プリンセス・ファーギー:The Dutchess」。ブラック・アイド・ピーズのメンバー、ファーギーのソロアルバム。一部ラップも使われるが、一般的な若手女性歌手のポップなアルバムと変わらない。声に力があり、表現力も高い。「ヒア・アイ・カム」はテンプテーションズの「ゲット・レディ」をサンプリング。「メアリー・ジェーン・シューズ」は途中からハードなロックに変わる。