BARONESS

バロネスはアメリカのオルタナティブ・ヘビーメタルバンド。4人編成。古風なヘビーメタルにアメリカ南部のストーナーロックや穏健なハードコアを載せたような曲調だったが、徐々にサイケデリックな部分を増やしている。

1
RED ALBUM

2007年。ボーカル兼ギター、ギター、ベース、ドラムの編成で録音されており、ギターが2人いるハードなロックバンドという意味ではヘビーメタルに近い音の像を形成している。しかし、ヨーロッパや南米で好まれるヘビーメタルではなく、2000年代以降のアメリカで流行するメタルコアでもなく、独自のオルタナティブ・ヘビーメタルと言える。オープニング曲の「レイズ・オン・ピニオン」はどちらかといえばハードコアだが、性急ではない。分かりやすい特徴を持とうとせず、聞き手を安心させないヘビーメタル。「ザ・バーシング」10曲のうち4曲はインスト曲。最後の「アンタイトルド」は隠しトラック扱いで11分ごろまで無音。

2
BLUE RECORD

2009年。ギターが交代。アルバムのタイトルから、「レッド・アルバム」と対になっている。「レッド・アルバム」よりもヘビーメタルに近い。「ア・ホース・コールド・ゴルゴタ」「ジェイク・レッグ」はアメリカ南部のデザートロックのような、もしくはストーナーロックのような雰囲気を見せながら、古風なヘビーメタルを維持する。日本盤はディセンデンツの「バイクエイジ」のカバーを収録。

3
YELLOW&GREEN

2012年。2枚組。ベースが抜け3人編成。ベースはボーカル兼ギターが演奏。1枚目がイエロー、2枚目がグリーンとなっている。2枚を合わせても75分なのでCDなら1枚に収まるが、2枚に分けられている。これまでに比べキーボードとボーカルハーモニーが増えている。キーボードは背景音程度だが、「ユーラ」でははメロディーの主要部分を構成する。「テイク・マイ・ボーンズ・アウェイ」「リトル・シングス」「トゥインクラー」「シー・ラングス」はいい曲。グリーンはハードな部分とソフトな部分の対比が多い。

YELLOW&GREEN

2012年。イエローのジャケット。

YELLOW&GREEN

2012年。グリーンのジャケット。

4
PURPLE

2015年。ドラムが交代し、ベースが加入、4人編成。ボーカル兼ギターとベースの2人が多様なキーボードを扱っており、このアルバムで初めてバンドがプロデュースにも関わっている。サンプリング、プログラミングで曲に厚みや装飾をつけ、全体としてハードなロックにしている。ギターがメロディーを主導する部分はツインリードになることが多く、リズムと共時的に演奏する部分では厚い。このあたりはメタルコア、メロディックデスメタルの影響があるだろう。「ショック・ミー」「トライ・トゥ・ディスアピアー」「ケロセイン」はいい曲が連続で並んでいる。このアルバムのみ日本盤が出ていない。

5
GOLD&GREY

2019年。ギターが交代し、ドラム以外の3人がキーボードを弾けることになっている。17曲のうち6曲が1分から2分のインスト曲で、実質的に11曲のアルバム。しかしこのインスト曲は本編とは異なる短い間奏曲であるがゆえに自由がきき、3人いるキーボード奏者の実験の場となっている。本編は音楽の幅をハードな方向にもサイケデリックな方向にも広げている。ハードな方は「シーズンズ」、サイケデリックな方は「エメットーレイディエイティング・ライト」「ペイル・サン」になるが、サイケデリックであったりプログレッシブであったりする曲は、実験的なインスト曲があることによって異質性が緩和されている。

6
STONE

2023年。ジャケットの真ん中に描かれている女性はギリシャ神話のメデューサをモチーフにしているとみられる。腰のヘビをウナギに描き変えているが、その造形そのものはメデューサで、そこから「ストーン」のタイトルが付けられたと解釈できる。ジャケットの右からコンディショングリーン、イエロー、レッドと並んでいるのも意図的な配色であり、描き方の主軸を色から意味へ転換している。10曲のうち1分台の短い曲が2曲あり、残り8曲のうち4曲は6分以上ある。1分19秒の「ザ・ダージ」はインスト曲ではなくアコースティックギター中心のフォーク。「ビニース・ザ・ローズ」と「クワイア」は実質的につながっており、詩の朗読のような歌い方も継続している。「ラスト・ワード」「アノダイン」は「イエロー・アンド・グリーン」や「パープル」にあるヘビーメタル回帰の曲調。後半の3曲はバンドのサイケデリックな部分が現れており、アナログ盤のA面とB面で性格付けを図ったかのようだ。