1968年。邦題「ザ・ウェイト」。ギター、ピアノ、オルガンを中心に、リズム&ブルースのような複数のボーカルが宗教的なブルース調の曲を歌う。「怒りの涙」「アイ・シャル・ビー・リリースト」はボブ・ディランが作曲、「火の車」はボブ・ディランとリック・ダンコが共作している。ロックンロールやジャズとは関係なく継承されてきたアメリカの民衆音楽をロックの機材で再現している。ロックバンド編成でやっているが、演奏手法は参照した音楽のままだ。先鋭的なサウンドにも保守的なサウンドにも流れなかった層を捉えた。「ザ・ウェイト」「火の車」「アイ・シャル・ビー・リリースト」は多数のアーティストがカバーする有名曲。ジャケットはボブ・ディランが描いたという。全米30位。
1969年。ロビー・ロバートソンが全曲の作曲に関わっている。ボブ・ディランの作曲はない。ボーカルとリズム感、抑制的なギターによってアメリカの伝統音楽らしさを出している。若年層が好奇心を抱く対象としてのハードさ、サイケデリック性、アート性等のすき間を突いたサウンドが土着性とも言える。1960年代前半にピーター・ポール&マリーが民謡としてのフォークに焦点を当て、社会性を帯びた歌詞に大学生が反応したのと同様だ。「ラグ・ママ・ラグ」「オールド・ディキシー・ダウン」「クリプル・クリーク」「キング・ハーヴェスト」収録。ウッドストックに出演した直後に出た。全米9位。
1970年。前作と同様にロビー・ロバートソンが全曲の作曲に関わっている。「ザ・ウェイト」「ザ・バンド」に比べ、ボーカルが単独で歌われる部分が多く、ギターが目立つ。「タイム・トゥ・キル」「ザ・シェイプ・アイム・イン」「W.S.ウォルコット・メディシン・ショー」「ダニエル・アンド・ザ・セイクリッド・ハープ」は多少コーラスがあるものの、ファルセットを使うようなR&B風の声ではない。全米5位。
1970年。海外で一般的なジャケット。
1971年。アルバムの後半はロビー・ロバートソンの作曲が並ぶが、前半はボブ・ディランの「傑作をかく時」、3人の共作の「カーニバル」、ヴァン・モリソンとの共作の「4%パントマイム」があり、曲調も幅が大きい。「カーニバル」はホーンセクションをアラン・トゥーサンが編曲している。「火山」もホーンセクションが使われるがこれは関わっていない。全体としてボーカルは前作を踏襲するが、演奏はピアノ、キーボードが増え、単調ではなくなった。全米21位。
1972年。ライブ盤。2枚組で80分。キーボードのガース・ハドソンを含め6人のホーンセクションが参加する。「ザ・ウェイト」は歓声が大きい。「ザ・ジェネティック・メソッド」はガース・ハドソンの8分のオルガンソロ。「蛍の光」が出てきて歓声が上がる。最後の「ハング・アップ・マイ・ロックン・ロール・シューズ」はカバー。全米6位。
1973年。ロックンロール、オールディーズのカバー集。チャック・ベリー、ファッツ・ドミノ、サム・クックのほか、エルヴィス・プレスリーの「ミステリー・トレイン」、「第三の男」も取り上げる。全米28位。
1973年。再発売盤のジャケット。
1975年。邦題「南十字星」。シンセサイザーを取り入れ、ギター、オルガン、シンセサイザーが中心となって音をつくる。ホーンセクションとオルガンはそのまま使われ、コーラスが若干復活したので、同時代的サウンドとデビュー当時のイメージをうまく接合したといえる。「アケイディアの流木」「おんぼろ人生」収録。前作以降、ボブ・ディランのバックバンドとして演奏した「プラネット・ウェイヴス」、ライブ盤「偉大なる復活」、「地下室(ザ・ベースメント・テープス)」が発売されていたので「南十字星」の注目度は高かった。全米26位。
1976年。邦題「軌跡」。ベスト盤。全米51位。
1977年。前作の延長線上にあるサウンド。もともとアメリカの伝統音楽をロックにしたサウンドで始まっており、ディスコや特大ヒットのアルバムが流行している状況では、イメージが保守的すぎた。アルバムタイトル曲はインスト曲。「胸にあふれる想い」はサム&デイヴ、「わが心のジョージア」はレイ・チャールズのカバー。全米64位。
1978年。ライブ盤。実質的に解散コンサートとなった1976年の公演を収録。映画のサウンドトラックにもなっている。ボブ・ディラン、エリック・クラプトン、ニール・ヤング、ジョニ・ミッチェル、ヴァン・モリソン、ドクター・ジョン、エミルー・ハリス、リンゴ・スター、マディ・ウォーターズ等が参加。ニール・ヤングは「ヘルプレス」、マディ・ウォーターズは「マニッシュ・ボーイ」、ジョニ・ミッチェルは「コヨーテ」を歌う。ホーンセクションはアラン・トゥーサンが編曲している。ボブ・ディランは後半に5曲連続で参加。「アイ・シャル・ビー・リリースト」はボブ・ディランの他、リンゴ・スター、ロン・ウッドも参加する。ライブを編集したアルバムとしては全てのロックの中で1、2を争う名作とされる。ゲストの豪華さもさることながら、各アーティストが次々と名演を繰り広げる。全米16位。
1978年。ベスト盤。
1989年。ベスト盤。2枚組。
1993年。邦題「ジェリコ~新たなる伝説」。ギターのロビー・ロバートソン、ボーカルのリチャード・マニュエルを除く3人と、ギター、ドラム、キーボードで再結成。キーボードとドラムは2人ずついることになる。「ブラインド・ウィリー・マクテル」はボブ・ディラン、「アトランティック・シティ」はブルース・スプリングスティーンのカバー。マディ・ウォーターズ、ウィリー・ディクソン等のカバーもある。かつてのメンバーで作曲に関わっているのはリヴォン・ヘルムだけで、12曲のうち2曲だけ。ザ・バンドの名前で発売するには曲の内容において物足りなさがあるのは否めない。「カントリー・ボーイ」のボーカルはリチャード・マニュエル。ジャケットは「ミュージック・フロム・ビッグ・ピンク」の「ビッグ・ピンク」を描いている。全米166位。
1996年。
1998年。日本盤は出なかった。