アヴリル・ラヴィーンは2000年代に最も成功したカナダ出身の女性ロック・ボーカリスト。1984年生まれ。デビュー作はスクラッチが入った先進的なポップスだったが、2作目以降は健康的な若者のイメージとなっている。2010年代は内省的で感傷的な曲が中心だった。
2002年。シングル盤。タイトル曲はアルバムとはバージョンが異なる。もう1曲はアルバム未収録曲。
2002年。カナダ出身のボーカル兼ギター。バックの演奏はギター、ベース、ドラム。ヒップホップのスクラッチが多少入ったロック。カントリー・ポップやオーソドックスなポップスでは大きな人気の女性歌手がいたが、ロックでは空白ができていたところに登場して人気を集めた。曲はメロディアスで、ボーカルも気持ちよく歌い上げる。「コンプリケイテッド」「スケーター・ボーイ」「アイム・ウィズ・ユー」「ルージング・グリップ」収録。日本で200万枚売れたのは驚異的だ。
2002年。シングル盤。「ノーバディーズ・フール」はライブ。日本盤は出ていない。
2003年。シングル盤。タイトル曲と「アンウォンテッド」のライブを収録。日本盤は出ていない。
2004年。シングル盤。2曲入り。両方ともアルバム収録曲と同じ。
2004年。前作のような、時代の流行を少しずつ取り入れたサウンドではない。バンドサウンドを基本とし、ヒップホップのスクラッチやラウドロックのような音の太いギターを減らしている。「ヒー・ワズント」は軽快な曲だ。全体的にメロディーを歌い上げる曲が多い。覚えやすいメロディーは前作そのまま。
2004年。シングル盤。タイトル曲のバージョン違いが入っているが、両方とも曲の時間は同じ。ラジオ・エディット・バージョンの方が深いエコーでメリハリがある。「ドント・テル・ミー」のアコースティックのライブ収録。
2004年。シングル盤。アコースティック・ライブ2曲収録。
2005年。シングル盤。同一曲のライブバージョンとアコースティックライブを収録。
2007年。シングル盤。とてもノリのいい曲。終始手拍子が入る。インスト・バージョンはコーラスも入らないが、後半にアヴリル・ラヴィーンらしき人の笑い声が入る。アヴリル・ラヴィーンのシングル盤では世界で最も売れた。
2007年。ヒップホップを思わせるスクラッチは一切出てこず、オープニング曲からとても健康的な曲が続く。デビュー時に鋭角的なサウンドで若者の注目を集めておき、徐々にオーソドックスなサウンド、あるいはポップなメロディーになっていく過程は、男性アーティストと男性ファンの関係ならば否定的評価が多くなるだろうが、女性アーティストと女性ファンの間では好意的に見られるのではないか。前半は一緒に歌える曲が多い。「アイ・ドント・ハフ・トゥ・トライ」「ワン・オブ・ゾーズ・ガールズ」はSUM41に通じるメロディー。最後の曲は映画の主題歌なのでストリングスが入った大仰なバラード。多くを詰め込まず、12曲で40分。
2007年。シングル盤。「ガールフレンド」の日本語バージョン収録。サビだけ日本語で歌うが、日本語のなめらかさはまったくなく、訳詞もとても稚拙。
2007年。シングル盤。「ガールフレンド」はサビ以外をヒップホップのリル・ママがボーカルを取っている。後半はアヴリル・ラヴィーンもラップで歌う。
2011年。シングル盤。60年代風のキーボードで始まり、「ガールフレンド」のように健康的で前向きなメロディーにつながっていく。
2011年。前作のようなはつらつさ、前向きさは「ワット・ザ・ヘル」だけになり、メロディアスで哀感を漂わせる曲が多くなっている。アヴリル・ラヴィーンは若いのでまだまだ多感だというイメージがあり、曲調の揺れは受け入れられやすいだろう。「ワット・ザ・ヘル」や「ガールフレンド」のような曲があと2、3曲あれば前作並に歓迎されただろう。メロディーの抑揚や盛り上がりは大きいので、個々の曲はいい曲が多い。
2011年。過去の曲のリミックス等を集めた企画盤。10曲のうちアコースティック・ライブが5曲、アコースティック・バージョンが1曲、リミックスが4曲。
2011年。シングル盤。「ホワット・ザ・ヘル」のリミックス収録。日本盤は出ていない。
2013年。シングル盤。「ベスト・ダム・シング」のころのミドルテンポなロック。「グッバイ・ララバイ」で支配的だった哀感を吹き飛ばし、快活だったころのサウンドに戻った。
2013年。「ロックンロール」をオープニング曲とし、「セヴンティーン」まではロックの若さを出したサウンド。アコースティックギター中心の「ビッチン・サマー」から、ニッケルバックのチャド・クルーガーが参加する「レット・ミー・ゴー」、マリリン・マンソンが参加する「バッド・ガール」、日本語を入れるエレクトロ曲の「ハロー・キティ」までは、ロックとしては特徴的な曲を並べている。「ハロー・ハートエイク」以降は「グッバイ・ララバイ」の路線。若さの勢いでロックをやる女性というデビュー当初のイメージから、シンガー・ソングライターとしての女性になりつつある。その要因は、人生経験が豊かになったということだろう。
2019年。前作に続くシンガー・ソングライター路線で、アコースティックギターとピアノもよく使う。アヴリル・ラヴィーンはもはや若い女性の代表となるようなアーティストではなくなり、2000年代に得た女性支持者と同時進行で歩むアーティストとなっている。したがって、悲哀を含むメロディーが一定数ある方が説得力がある。「ヘッド・アバヴ・ウォーター」「バーディー」は哀感があっても力強い。「ダム・ブロンド」はロック。
2022年。デビュー当時のポップなロックに戻った。「バイト・ミー」やアルバムタイトル曲は「アンダー・マイ・スキン」「ベスト・ダム・シング」に収録されている曲と変わらない。「デジャヴ」がパロディーに聞こえるほどだ。バンドサウンドが基本だが、エレクトロサウンド、キーボードも使う。前半の6曲は全て2分台、7曲の「アバランチ」、11曲目の「デア・トゥ・ラヴ・ミー」は「グッバイ・ララバイ」収録曲のような情緒的なメロディーで3分を超える。このアルバムは復活というよりも2020年代以降の変化に向けたリセットだろう。