1990年。アメリカ・ニューヨークの4人組。MCが3人、DJが1人で、MCのQ・ティップが中心人物。デビュー当時の邦題は「ヒップ・ホッパーズQ軍団の大冒険」。サウンド面では、サンプリングやリズムにジャズを取り入れたグループ。歌詞の面では、アフリカに対する帰依が大きく、多文化主義的になる世界の思潮を反映している。このグループとジャングル・ブラザーズ、デ・ラ・ソウルがこの方向のヒップホップとして重視されている。
1991年。邦題「ロウ・エンド・セオリー・理論をブチ壊せ!」。MCが1人抜け3人編成。ドラムとベースは通常の音だが、キーボード等のメロディー楽器はかなり抑えられており、結果的にドラムとベースが強調されている。ジャズ・ピアノのセロニアス・モンクがドラム、ベース、ピアノのジャズ・トリオを一般化させたのと同じように、ドラム、ベース、MCの3つでヒップホップを作っている。ア・トライブ・コールド・クエストを含む新しいヒップホップ・アーティスト集団、ズールー・ネイションを称える曲が多い。「ショウ・ビジネス」のギターはフェランテ&タイシャーの「真夜中のカーボーイ」だろう。「シナリオが大事」のバスタ・ライムスはいつも通りの迫力。
1992年。邦題「Qティップのこだわりミックス」。「ヒップ・ホッパーズQ軍団の大冒険」と「ロウ・エンド・セオリー」収録曲をリミックスまたは再録音した企画盤。
1993年。邦題「ミッドナイト・マローダーズ・暗闇の御尋ね者」。バランスの取れたアルバム。「アワード・ツアー」「エレクトリック・リラクゼーション」「オー・マイ・ゴッド」収録。
1996年。ア・トライブ・コールド・クエストは「ロウ・エンド・セオリー」が代表作で、その次が「ミッドナイト・マローダー」とされているので、このアルバムはそれほど評価されていない。しかし、サウンド上の表現可能領域を広げたという点では貢献度が大きい。ヒップホップのサウンドが多様化した2000年代に聞くと、このアルバムの意義があまり理解されないが、リズムやビートのシンコペーションよりも音自体の面白さに腐心しているようだ。その音が今ではごく普通に使われるため、当時の驚きが再現されない。シングルになった「ワンス・アゲイン」と「ストレスド・アウト」の両方にソウル歌手が参加している。
1998年。アルバムとしては15曲だが、通常のCDでもボーナストラックが6曲付いている。過去のアルバムのような革新性はなく、意外性に期待するファンからはごく普通のアルバムという評価になった。ジャケットも大きくイメージを変えているので、アルバムの性格自体がこれまでと異なると解釈できる。「バスタズ・ラメント」はバスタ・ライムスが参加していないが、別の曲で参加している。