1995年。エレクトロニクスによるハードなビート、ヘビーメタル並みに歪んだギター、音質お構いなしのようなノイズ、煽るようなボーカルが、デジタル・ハードコアのイメージを納得がいく形で提示している。12曲のうち2曲はライブ。当初のアルバムタイトルは「1995」。「アタリ・ティーンアイジ・ライオット」収録。
1997年。前作よりやや音質がよくなった。といっても、雑音が多少混じっていた方がグループの雰囲気を正しく表しているだろう。歌詞は主張がはっきりしており、表現も直接的だ。言葉は荒くても、求める世界像は平和的だ。アメリカ人ならサウンドにヒップホップやテクノを選んでいただろう。このアルバムで日本デビュー。
1999年。ノイズ担当の日系ドイツ人メンバーが加入し4人編成。女性ボーカルの量が増え、曲がハードかつ統制されている。デビュー以来の、無軌道さを感じさせるサウンドは維持されている。同時代のラウドロック、ヘビーロック、ヘビーメタルよりはよほど聞き手をねじ伏せる力がある。日本盤はアメリカでのライブ盤がついている。
2000年。邦題「ノイズ・ライブ1999」。ライブ盤。わずかに音楽の片鱗が聞こえるが、全体としてはノイズの多い即興音楽。制御不能の音がずっと鳴っているわけではなく、カオスもしくはサイケデリックと呼びうるリズムやサンプリングが確認できる。ボーカルはほとんど入っていない。この年に解散。
2001年。EP盤。アタリ・ティーンエイジ・ライオットの中心人物、アレック・エンパイアのソロ。
2001年。アタリ・ティーンエイジ・ライオットと大きく変わってはいないが、ロックのリズム感に近づき、バンド編成でも再現可能なサウンドだ。バンドならスラッシュメタル、ハードコアになるだろうが、仮にそれとして聞いた場合、特段の革新性があるわけではない。2枚目は9曲73分のインストで、1曲目は30分ある。「ニュー・ワールド・オーダー」の後半は「ノイズ・ライブ1999」のようなノイズによる即興演奏。
2005年。かつてアタリ・ティーンエイジ・ライオットでやっていたデジタル・ハードコアの面影はなくなり、一般的に知られる騒々しいロックンロールのサウンドになっている。エレクトロニクスが使われるものの、ロックあるいはポピュラー音楽としての形式はむしろ古典的で、アルバムタイトルはあまのじゃく的な感性や皮肉でつけられたと思われる。グリーン・デイやブリトニー・スピアーズをバカにする日本盤の外国人解説者は、アタリ・ティーンエイジ・ライオットのファンよりもはるかに幼稚だ。
2006年。ベスト盤。
2007年。エレクトロニクスを大きく取り入れたロックとなり、前作までとは方向が変わっている。エレクトロニクス由来の不協和音は使われるが、ガレージロックとしての雑音、ノイズは含まれない。ニューウェーブ風のサウンド。ソロ作が当初からこのサウンドであれば、ソロ作を出す意味もわかりやすかったが、出すのが遅すぎた。
2011年。再結成。アレック・エンパイアとノイズ担当のニック・エンドウ、新MCの3人編成。女性ボーカルはニック・エンドウが担当している。ロックのリズム感を明確に残しながら、分厚いキーボード、エレクトロニクスとギターでメロディーをつくる。以前あったノイズ、不協和音は少なくなり、音全体の猥雑さよりも、音楽や曲での新しさを追求する姿勢がみられる。以前のサウンドに戻したようなサウンドではない点は評価できる。