ASIAN DUB FOUNDATION

  • イギリスのインド人、バングラデシュ人で結成されたダブ・バンド。
  • 世界規模の多文化主義を象徴するようなバンドで、歌詞も社会性が強い。
  • アップテンポで勢いがあり、メッセージを聞かせることよりも踊らせることに主眼を置いたことが奏功している。

1
FACTS AND FICTIONS

1995年。ギター、ベース、ボーカル、DJ、シークエンサー兼ダンスの5人編成。イギリス出身。メンバーは全員南アジア系2世。基本となるサウンドはテクノ、ハウス、クラブ・ミュージックで、使われる楽器やメロディー、ボーカルの発音が南アジア由来になっている。シタールやパーカッションが入るだけで、他のテクノ、クラブ・ミュージックのアーティストと異なるサウンドが作り出されるのに加え、南アジアがポピュラー音楽でも社会でも劣位であるというイメージが反体制性を増幅させる。日本盤は1998年発売。

FACTS AND FICTIONS

1995年。2000年に発売されたフランス盤のジャケット。

2
R.A.F.I.

1997年。日本盤は2009年発売。これまでイギリスでは、ジャマイカ音楽のレゲエを取り入れたアーティストが成功することはあったが、インド、南アジアの音楽をルーツとしたアーティストが成功することはほとんどなかった。ジャマイカ、インド、南アジアはともにイギリスの旧植民地で、インドの紅茶をイギリスに輸入し、ジャマイカから砂糖を輸入して「午後の紅茶」の風習が広まった。ポピュラー音楽での文化相対主義、多文化共生の象徴となったアーティスト。日本盤はボーナストラック3曲収録。

3
RAFI'S REVENGE

1998年。「RAFI」の収録曲の一部を再録音。新曲も含む。「ファクツ・アンド・フィクションズ」よりもギターが目立ち、リズムもロックのドラムに近くなった。ボーカルもラップを多用しながら、メロディアスな部分を増やしており、ポピュラー音楽としての一般性を大きく獲得している。歌詞はとても攻撃的で、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン並みに直接的だ。「ナクサライト」「カルチャー・ムーヴ」収録。このアルバムのヒットをきっかけにヨーロッパと日本で知られるようになった。

 
BUZZIN

1998年。邦題「ADFツアー・エディション」。「バジン」ほか7曲の日本企画盤。「バジン」は3種類入っている。「チャージ」「NAXALITE」はライブ。

 
NAXALITE/CULTURE MOVE EP

1998年。EP盤。「フリー・サトバル・ラム」と「ヒポクリット」は98年のフジロックフェスティバルでのライブ。

CONSCIOUS PARTY

1998年。ライブ盤。15曲のうち前半の9曲がライブ、後半の6曲のうち4曲はリミックス、2曲は「RAFIリヴェンジ」収録曲。ライブはロックバンドと同じように曲が終わると歓声が上がり、MCで曲紹介をして次の曲に移る。ライブの9曲は8曲が「RAFIリヴェンジ」収録曲、「ター・ディーム」のみ「コミュニティー・ミュージック」収録曲。

4
COMMUNITY MUSIC

2000年。前作よりもメロディーのわかりやすさが増し、メロディーの跳躍も派手になっている。ホーン・セクションも入れて楽器が多くなり、サウンドの幅を広げた。歌詞の攻撃性は変わらない。「クラッシュ」は日経が出てくる。「リアル・グレイト・ブリテン」収録。

5
ENEMY OF THE ENEMY

2003年。ボーカルが抜け、ボーカルが2人加入し6人編成。歌詞の一部にはコメントがついており、アルバムタイトル曲はアメリカ同時多発テロについて書かれている。前作はメッセージ性と音楽の楽しさが両立し、タイトルも同胞意識が強かったが、このアルバムではまた政治性の方が目立つようになった。ポップさや親しみやすさが後退したわけではない。プロデューサーがエイドリアン・シャーウッドで、イギリスのレゲエ、ダブの代表的な人。サウンドもダブに近寄っている。「トゥー・フェイス」はヒップホップ。「サウザンド・ミラーズ」はシンニード・オコーナー(シネイド・オコーナー)がボーカルをとる。アルバムタイトル曲はレディオヘッドのエド・オブライエンが参加。

1000MIRRORS

2003年。EP 盤。「エネミー・オブ・ジ・エネミー」の38分のDJミックスを収録。

KEEP BANGIN' ON THE WALLS

2003年。ライブ盤。

6
TANK

2005年。オープニング曲の「フライオーヴァー」は古風なシンセサイザーの音から始まり、勢いがある。アルバムの後半になると曲調が落ち着くが、歌詞の攻撃性は保っている。

 
TIME FREEZE 1995/2007:THE BEST OF

2007年。ベスト盤。2枚組。曲ごとに簡単な解説がある。1枚目は概ね年代順に曲が並ぶ。1枚目に2曲、2枚目に1曲の新曲を収録。

7
PUNKARA

2008年。エレキ・ギター、ドラム、パーカッションを中心に使い、ロックに近いサウンド。「ノー・ファン」はストゥージズのカバーで、イギー・ポップが参加している。アジア風の音階、メロディー、パーカッションを多用したサウンドは、バングラデッシュ系イギリス人がやっているからこそ説得力が出てくる。ジャンルも国も異なるが、アルメニア系アメリカ人が結成したシステム・オブ・ア・ダウンと共通の求心力がある。もともとダンス音楽のグループから出発しているが、このアルバムではエレクトロニクスの雰囲気はあまり出てこない。これまでで最もロック寄りで、アンサンブルを重視したアルバムだ。

8
A HISTORY OF NOW

2011年。前作を踏襲するサウンド。ドラムとパーカッションとリズム・マシーンでビートを作り、ギターでメロディーを構成する。オープニング曲はメロトロンのように聞こえるストリングスが70年代のプログレッシブ・ロックの雰囲気を出す。この曲やアルバムタイトル曲、「スピリット・イン・ザ・マシーン」「ホェアズ・オール・ザ・マネー・ゴーン?」はロックに大きく寄っている。