ARCTIC MONKEYS

  • イギリスのロックンロール・バンド。4人編成。
  • グランジ、オルタナティブ・ロックはもちろん、ブリット・ポップも未体験だが、それらを含んだロックを聞いて育った世代を代表するバンドと認識されている。
  • エレクトロニクスやサウンドとしてのノイズなど、2000年代風の装飾はなく、60年近く続くロックンロールの自己再生産とも言える。

 
I BET YOU LOOK GOOD ON THE DANCEFLOOR

2006年。シングル盤。ボーカル兼ギター、ギター、ベース、ドラムの4人編成。アップテンポで切れのいいギターで、勢いがある。デビュー曲としてのインパクトは十分。アルバム未収録曲2曲収録。「ビガー・ボーイズ・アンド・ストールン・スイートハーツ」はストロークスのようなサウンド。3曲目はインスト曲。

 
WHEN THE SUN GOES DOWN

2006年。シングル盤。3曲で7分弱なので、アナログ盤シングルをそのままCDにしていると思われる。

1
WHATEVER PEOPLE SAY I AM,THAT'S WHAT I'M NOT

2006年。とても若い風貌の4人組。ストロークスをハードにしたサウンドで、ハードコアやラウドロックなどに踏み込まないところでとどまる。音を詰め込むというような雰囲気ではなく、4人ですべての音を再現できるような演奏になっている。キーボードは使われない。13曲で41分。

 
WHO THE FUCK ARE ARCTIC MONKEYS

2006年。シングル盤。5曲入り19分。

 
LEAVE BEFORE THE LIGHTS COME ON

2006年。シングル盤。「プット・ユア・デュークス・アップ・ジョン」はリトル・フレイムス、「ベイビー・アイム・ユアーズ」はバーバラ・ルイスのカバー。

 
BRAINSTORM

2007年。シングル盤。4曲入り。どの曲もロックン・ロールの勢いやダイナミックスさをよく出せている。

2
FAVORITE WORST NIGHTMARE

2007年。オープニング曲は豪快なロックン・ロール。2曲目はサビでキーボードを使い、聞きどころが続く。覚えやすいギターのメロディーが次々出てくるので、それぞれが逆に埋没するくらいだ。サウンドにもう少し幅があってもいいような気がする。

 
FLUORESCENT ADOLESCENT

2007年。シングル盤。アルバム未収録曲3曲収録。

 
TEDDY PICKER

2007年。シングル盤。タイトル曲はキーボードが使われる曲。「ザ・デス・ランプス」は3分強のインスト曲。「ネトルズ」は2分弱。

3
HUMBUG

2009年。サウンドが若干厚くなり、キーボードも使われる。派手ではないが暗さやひねくれた感覚もなく、淡々と演奏しているような印象だ。若い割には大人びた落ち着きがある一方、メロディーには以前よりも多彩さが出てきている。ベースが主導する曲もあり、これから音楽の幅がどんどん広がっていくことを期待させる。ボーカルにもう少し表現力が欲しい。若いゆえに大目に見てもらえる時期はこの辺が最後かもしれない。10曲で40分弱。

4
SUCK IT AND SEE

2011年。これまで展開されてきたギター中心のロックを、アークティック・モンキーズがいくつか試してみたような曲がある。解説によるとスタジオライブのような録音なので、聞こえてくるサウンドがほぼバンドの実力を示していると言える。演奏に余裕が出てきた。ドゥーワップのようなコーラスやバッドフィンガーのようなポップさがあり、一方で90年代以降のシューゲイザー風背景音も取り入れる。サウンド面ではもう少し大胆でも否定はされないだろう。

5
AM

2013年。ボーカルの音域の狭さはこのバンドの個性であり難点でもあったが、ベースとドラムがつける高い音域のコーラスによって難点を減らし、個性の部分を押し出している。「ナンバー・ワン・パーティー・アンセム」「マッド・サウンズ」はキーボードとギターが曲を主導し、少しずつサウンドの幅を広げている。「アラベラ」はブラック・サバスの「ウォー・ピッグス」を参照したサウンド。「ナンバー・ワン・パーティー・アンセム」はジョン・レノン風の曲。「ワン・フォー・ザ・ロード」「ニー・ソックス」はクイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジのジョシュ・オムが参加している。「AM」とはアークティック・モンキーズの頭文字であり、AMラジオで一般的な中波を表す。ジャケットの波長は中波を表す。

6
TRANQUILITY BASE HOTEL&CASINO

2018年。曲調、サウンドを大きく転換し、キーボード、ストリングスを多用したヨーロッパ風ポピュラー音楽に近くなっている。フランスを中心とするラテン文化圏の室内音楽を思わせる。これまでのアルバムからの音楽的継続性はギター、ベース、ドラムがあるバンド編成だけで、ギターを中心とするロックンロールのバンドであったことは断ち切られている。全曲をボーカル兼ギターのアレックス・ターナーが作曲しており、アークティック・モンキーズがアレックス・ターナーの個人バンドであることを強く確認させる。このサウンドを今後も継続する可能性は低いだろうが、このアルバムを出したことで、何をやってもよいという自由さを獲得できたことは大きい。「ワン・ポイント・パースペクティヴ」「アメリカン・スポーツ」「ゴールデン・トランクス」「シー・ルックス・ライク・ファン」はギターと言えなくもない。

 
THE AGE OF THE UNDERSTATEMENT/THE LAST SHADOW PUPPETS

2008年。アークティック・モンキーズのボーカル兼ギターが結成した2人組のグループ。全曲でストリングス、キーボード等が使われ、12曲のうち10曲はストリングスを使う。アークティック・モンキーズでもできないことはないだろうが、別のバンドでやった方がアーティスト側にも聞き手にも都合がいいだろう。アークティック・モンキーズのボーカルがそのままこのグループでボーカルをとっているので、バックの演奏からストリングスを取り除けばアークティック・モンキーズのサウンドに近くなる。声や歌い方の個性は大きい。ストリングスはクラシック調というよりは映画音楽風で、ポール・モーリアやカラベリ、マントヴァーニが活躍した50、60年代の雰囲気がある。メロディーの抑揚も大きく取れるので、曲が印象に残りやすい。