1996年。ギター2人の5人編成。スウェーデン出身。5曲入りのミニ・アルバム。北欧神話を題材にしたメロディック・デスメタルで、ほとんどの曲にオーディンが出てくる。エインヘリヤル、ティール、ミッドガルドなども出てくる。サウンドは一般的なメロディック・デス・メタル。
1998年。ギターが1人抜け、ドラムが交代。4人編成。全曲をギターが作曲し、ボーカルが作詞する。メロディック・デスメタルとしては質が高く、特にボーカルとギターの音、メロディーが大きく飛躍している。ギターは1人だがジャケットには5人いるので、ギター2人での演奏であることはサウンド上でも明らかだ。「アモン・アマース」では刀がきしむ戦闘の音が入っている。
1999年。ギターが加入し、ドラムが交代。5人編成。前作と同路線。ジャケットもジャケットの中もバイキング時代の古美術品がたくさん出てくる。「メタルレイス」は珍しくヘビーメタルそのものについて歌っているが、歌詞の後半には北欧神話に結びつけている。この曲だけがやや曲調が異なり、パワフルなヘビーメタル。その他はメロディック・デスメタル。
2001年。これまでのアルバムでは、6分から8分の長い曲が2、3曲、それ以外の5、6曲が4、5分台で構成されていたが、今回は全曲が5分前後。サウンドは変わらない。ジャケットの内部はミョルニールが6点写っており、「アナイアレーション・オブ・ハンマーフェスト」はそれに関する歌詞になっている。ジャケットの人物もミョルニールを持っているので、人間ではなく北欧神話のトール神であることが分かる。「リリーシング・サーターズ・ファイア」はワーグナーのワルキューレの騎行が出てくる。「アイズ・オブ・ホラー」はポゼストのカバー。
2002年。勢いを抑え、スピードも平均的に遅くなっている。メロディック・デスメタルよりも通常のデスメタルに近くなった。かつてのスラッシュ・メタルのバンドが90年ごろからスピードや激しさよりも重量感を重視したのに似ている。遅くなったといってもバスドラムは鳴り続けている。ボーナスCDはデモCD2種類と「ソロウ・スルーアウト・ザ・ナイン・ワールズ」を収録している。
2004年。前作に続き激しさを抑えた路線。ゴシック・ロックに寄ったとも言える。このアルバムで日本デビュー。
2006年。ジャケットに火が出てこない初めてのアルバムで、サウンドが変わることを推測させるが、従来のメロディック・デスメタルに戻っただけだ。戻っただけといっても、元々のサウンドの質が高かったので、好意的評価が大多数になるだろう。「ジ・アヴェンジャー」のころのイメージ。メロディック・デスメタルのメロディックの方向が、アーク・エネミーのようなツインリードギターではなく、ファルコナーのような民謡メロディーだ。演奏も安定している。ただ、内容はすばらしくても理解されるのはヘビーメタル・ファンの中だけであって、一般の洋楽ファンには広がらない。日本盤にもボーナスCDがついており、ライブ2曲、デモ2曲、アルバムデビュー前のスタジオ録音2曲で計6曲。
2008年。チルドレン・オブ・ボドムやイン・フレイムスほどギターが前に出ないメロディック・デスメタル。哀愁を帯びたメロディーが続き、ほどよい間隔でメロディーの展開がある。テーマの設定、すなわち北欧神話がなくても十分質の高いメロディック・デスメタルをやっているが、通常の歌詞ではどうなるのか聞いてみたいところだ。チルドレン・オブ・ボドムのギター、エントゥームドのボーカル、アポカリプティカのチェロ奏者が参加している。「リヴ・フォー・ザ・キル」でストリングスが使われる。最後の曲だけが7分近くあり、他の9曲は3、4分。
2011年。邦題「焔の巨人スルト襲来」。印象的なメロディーを2本のギターで重ねて演奏することが多い。一つの音階を弾くとき、1回の撥弦で長く持続させるよりも同一の音階を繰り返し撥弦するすることが多い。繰り返し弦を弾く時はバスドラムが連打されている。「ウォー・オブ・ザ・ゴッズ」「ライヴ・ウィズアウト・リグレッツ」で顕著だ。「フォー・ヴィクトリー・オア・デス」「ドゥーム・オーヴァー・デッド・マン」はストリングスを使う。
2013年。これまでと同様に、北欧神話を題材とするメロディック・デスメタル。新しい題材に全く踏み込まない作風は、ヘビーメタルに特有の硬直性を示している。「ヘル」はキャンドルマスのボーカル、メサイア・マルコリンが参加している。日本盤はEP盤とDVDが付き、EP盤はジューダス・プリースト風、ブラック・サバス風、モーターヘッド風、AC/DC風の曲を収録している。モーターヘッド風とAC/DC風の曲は曲調の選択に再考の余地がある。
2016年。ドラムが交代。ジャケットのイメージを変えた。北欧神話自体を題材とせず、メンバーが創作した物語に沿った曲になっているという。バイキングを主人公とする自己中心的な男の物語で、それを勇壮に描くところに無邪気な社会性の低さが現れている。女性が出てくる唯一の曲にはドロ・ペッシュがあてがわれている。物語の創作に踏み込んだという点では、方向がどうなるにしろ、可能性を広げた。
2019年。80年代から90年前後のヘビーメタルの特徴をなぞることによって、90年代から2010年代のヘビーメタルがほとんど進歩がなかったことを、皮肉のように示す。ジャケットも同様だ。むしろ、その点を露悪的に強調していけば、バンドの個性の確立というよりもヘビーメタルの保守性への疑問という形で存在意義を提起できるのではないか。日本盤はライブ盤が付いてくる。ドロ・ペッシュが参加している。