アマランスはスウェーデンのヘビーメタルバンド。女性ボーカル、男性ボーカル、男性デス声ボーカルを含む6人編成。ギター兼キーボードが作曲し、キーボードはエレクトロニクスの要素が大きい。
2011年。女性ボーカル、男性ボーカル、男性デス声ボーカルを擁する。ギターとキーボードは同時に演奏されることがほとんどなので、ライブでは演奏者が増えるとみられる。曲はハードさを優先しており、ゴシックやクラシック調にはならない。ギター、キーボードの輪郭は明確で、80、90年代のヘビーメタルを踏襲している。男女ともボーカルは特に上手いというわけではないが、女性ボーカルのメロディーは一般的なポップスにも通じ、高速回転するリズムが高揚感を増幅している。
2013年。キーボードがエレクトロニクスの度合いを増し、エンター・シカリのメロディック・ヘビーメタル版のようなサウンドになっている。作曲段階ではベースもドラムもエレクトロニクスで作っているだろうが、録音に際してベースとドラムをバンド演奏で入れるのはヘビーメタルの伝統的なサウンドに近づけるためだろう。キーボードあるいはシンセサイザーの音の軽さが女性ボーカルのポップさと合っている。
2014年。男性ボーカルの一人が交代。「ドロップ・デッド・シニカル」はダンス音楽を意識した曲調で、エレクトロニクスを活用することの目的を最も端的に示した曲と言える。アルバムタイトル曲はエヴァネッセンスをハードにしたような曲。「オーヴァー・アンド・ダン」「アン・オーディナリー・アブノーマリティ」「エクスヘイル」などはメロディアスなヘビーメタルにこだわりたい意志が透けて見える。突き抜けない限り、ヘビーメタルのバンドのまま終わるだろう。
2016年。同時代のロックバンドに追いつこうとする意欲が感じられ、参照するロックバンドがヘビーメタルではなくロックであることも分かる。「ザット・ソング」はクイーンの「ウィ・ウィル・ロック・ユー」というよりもイマジン・ドラゴンズを意識した可能性が高い。「スーパーソニック」での女性ボーカルの歌い方は若手のアフリカ系女性歌手に近い。アルバムを出すごとに新しい試みをしているが、足を引っ張っているのはヘビーメタル由来のデス声とギターソロだ。ヘビーメタル的であろうとする志向はジャンルへの傾倒というよりも規範への恭順と捉えられるからだ。
2018年。ボーカルの一人が交代。デビュー当時の欧米のエレクトロ音楽とこのアルバムが出たころのエレクトロ音楽は変化しており、アマランスが取り入れているエレクトロ音楽、シンセサイザーの音はやや古くなっている。多くのヘビーメタルバンドは、キーボードの代用としてのシンセサイザーを取り入れても、エレクトロ音楽を思わせるシンセサイザーの導入には抵抗があるため、3人ボーカルと音楽性はしばらくバンドの個性として続いていくだろう。ギター兼キーボードのキーボードは、鍵盤楽器ではなくプログラミングと解釈すべきで、ラウドロックにプログラミングを導入したエンター・シカリと同じだ。