1991年。カナダで発売。
1992年。カナダで発売。
1995年。高音で裏声を使い、ソウルやポップスとは異なる歌い方が80年代までの女性アーティストの伝統的歌い方と決別しているという印象を与える。また、サンプリングとドラムマシーンとノイズを活用した粗いバンドサウンドがベックやニルヴァーナ、ナイン・インチ・ネイルズのようなアーティスト群と同質であると見なされる。この2点が80年代と90年代の断絶を示す音として、この時期に10代半ばを迎えた世代に感受されている。したがって、バンドサウンドを決定したプロデューサーもアラニス・モリセットと同様に評価するべきだろう。「アイロニック」「ユー・オウタ・ノウ」「ヘッド・オーヴァー・フィート」「ハンド・イン・マイ・ポケット」収録。全米1位、1500万枚、世界3300万枚。
1995年。アルバムと同時に出た日本デビューシングル。ベースはレッド・ホット・チリ・ペッパーズのフリーが演奏し、ギターより目立つ。ジェーンズ・アディクション、レッド・ホット・チリ・ペッパーズのデイヴ・ナヴァロがギターで参加。「ユー・オウタ・ノウ」のバージョン違い収録。
1995年。シングル盤。「ユー・ラーン」のアコースティックバージョンと「ユー・オウタ・ノウ」のバージョン違いを収録。
1995年。邦題「スペース・ケークス~アンプラグドEP」。「ジャグド・リトル・ピル」収録の6曲をアコースティックギターとパーカッションで歌う。日本のみの発売。
1996年。シングル盤。「ノット・ザ・ドクター」は7分を超える日本公演のライブ。ドラムはフー・ファイターズ加入前のテイラー・ホーキンス。
1996年。シングル盤。「フォーギヴン」は日本公演のライブで、「ハンド・イン・マイ・ポケット」に収録されている「ノット・ザ・ドクター」と同じ公演から。「ノット・ザ・ドクター」「ウェイク・アップ」はアメリカ・ロサンゼルスでのライブ。ドラムはテイラー・ホーキンス。
1996年。シングル盤。「ユー・オウタ・ノウ」のグラミー賞受賞ライブを収録。「ユー・ラーン」「ハンド・イン・マイ・ポケット」「ライト・スルー・ユー」はライブで、3曲とも同一の公演で録音されている。
1998年。前作のヒットを受けて、前作よりも作り込まれたサウンドとなっている。ボーカルは自然さよりも歌おうとする意思が感じられ、キーボードやドラムマシーン、ギターの音にはオルタナティブロックのような粗さとともに音やタイミングの整合感がある。多数の若い女性シンガー・ソングライターと同様、歌詞は恋愛に関するテーマが多く、このアルバムでは自らの恋愛感情を別の視点で理解しようとする曲が目立つ。ジャケットの文字は仏教の十戒のうち6項目を示しているので、認識の多様性も獲得しているとみられる。バンドサウンドは90年代半ばのグランジ、オルタナティブロックの影響を受け、抑鬱的だ。「ザット・アイ・ウッド・ビー・グッド」のフルートはアラニス・モリセット。全米1位、260万枚。
1999年。ライブ盤。未発表曲3曲、ポリスの「キング・オブ・ペイン」のカバーを含む。「ザット・アイ・ウッド・ビー・グッド」はアルバム収録曲どおりフルートを使う。「ヘッド・アーヴァー・フィート」でハーモニカを使う。弦楽器奏者も参加しているが小編成なのでオーケストラ風にはならない。全米63位。
2002年。オープニング曲の「恋人に求める21の条件」とその次の「ナルシサス」「ハンズ・クリーン」は曲調が前向きで、ジャケットの清冽なイメージはそのままサウンドだ。裏声はあまり使わず、高音でも通常の発声で歌う。ギターもキーボードも複数の演奏者を使っているが、アラニス・モリセットもギター、キーボードを使い、単独でプロデューサーも務めている。サウンドの全てを指揮したわけではないだろうが、裁量の大きさはこれまでで最も大きいだろう。音の傾向とジャケットの鮮やかさは、重苦しさや暗さに傾いた90年代を振り払い、2000年代を新たに進んでいこうとする内面を表しているかのようだ。全米1位、100万枚、世界400万枚。
2004年。2000年代に入ってからデビューした若手女性歌手のような快活さがあり、前作の路線を引き継ぐ。前半はロック調、アルバムタイトル曲以降はミドルテンポの曲が多い。「エイト・イージー・ステップス」「エヴリシング」収録。全米5位。
2005年。アコースティックギターとハーモニカ、ストリングスによる「ジャグド・リトル・ピル」の再録音盤。「ユー・オウタ・ノウ」「ハンド・イン・マイ・ポケット」などは原曲よりもテンポが遅くなっている。2000年以降は少なくなっている裏声は原曲に合わせて適宜使っている。アコースティックギターやストリングスが使われると、ボーカルは情感を込めるような歌い方にならざるを得ない。全米50位。
2005年。ベスト盤。4枚のアルバムのほか、「MTVアンプラグド」から1曲、サウンドトラック盤から3曲、DVDから2曲、ゲスト参加曲から1曲、シールの「クレイジー」のカバーを収録。通常盤はジャケットの背景が紫色、DVD付きは黄色。全米51位。
2008年。世界デビューした「ジャグド・リトル・ピル」以降では初めて、アラニス・モリセットがプロデュースに関わらず、新規にプロデューサーを立てている。それがサウンドの変化につながっており、エレクトロニクスを大幅に取り入れ、バンドサウンドが大きく後退している。アラニス・モリセットはボーカルのみで楽器を演奏しない。「ストレート・ジャケット」「ヴァージョンズ・オブ・ヴァイオレンス」「モラトリアム」はエレクトロニクスを前面に出し、ボーカルもこれまでとやや異なる手法で加えられている。「ノット・アズ・ウィー」はピアノのみ、「トーチ」はピアノ中心、「ギグリング・アゲイン・フォー・ノー・リーズン」はシンセサイザー中心で、ギターが目立つ曲は少ない。ボーナストラックの「20/20」はビョークのようなサウンド。「アンダー・ラグ・スウェプト」と「ソー・コールド・カオス」の前向きなバンドサウンドは、「ジャグド・リトル・ピル」で共感を得た抑鬱的な若い女性のイメージから離れており、聞き手が求めるアラニス・モリセットの像と実際のアラニス・モリセットにずれがあった。アルバムを出すたびに販売数は下降し、このアルバムで変化を求めたとも解釈できる。全米8位、世界60万枚。
2012年。ギターとキーボードを中心とするバンドサウンドに戻り、年齢とともにサウンドも角が取れてきている。「ナム」のような従来のオルタナティヴロックもあるが、「ティル・ユー」「ハヴォック」はミドルテンポ、「エンパシー」「スパイラル」は明るめのロックで、曲調に広がりがある。90年代には若者の共感を過剰に背負わされた面があったが、このアルバムでは解放されたような自由さがある。一般的にシンガー・ソングライターは年齢が上がると曲も歌詞も穏やかで寛容になり、アラニス・モリセットもそのように推移している。聞き手がいつまでも「ジャグド・リトル・ピル」の残像を求める、あるいはそれを基準にするのは、人格の無視と言わざるを得ない。