AC/DC

  • オーストラリアのロックンロールバンド。5人編成。ギターのアンガス・ヤングが中心で、小学生の制服ファッションで演奏する。
  • ロックンロールが持つ退廃性よりも楽しさが強調される。ローリング・ストーンズやジミ・ヘンドリクス、グラムロックの逸脱傾向、ザ・フーやパンク、ハードコアの破壊・破滅傾向と異なるハードさを持った新しいロックンロール像を提示し、幅広いファンを獲得している。
  • 当初のボーカルはボン・スコット(故人)で、80年からはブライアン・ジョンソンがボーカルを取る。
  • 「バック・イン・ブラック」は世界で最も売れたロックのアルバムのひとつ。

1
HIGH VOLTAGE

1976年。AC/DCはギター2人の5人編成。オーストラリアのロックンロール・バンド。ギターはアンガス・ヤング、マルコム・ヤングの兄弟で、アンガス・ヤングがリード・ギターとなっている。ボーカルはボン・スコット。70年代後半に入ってデビューし、ハードロック時代のロックン・ロール・サウンドを提示して人気を得た。アメリカやイギリスのロックン・ロール・バンドが退廃的で近寄りがたい雰囲気を漂わせていたのに比べ、AC/DCは切れのいいギター、のりやすいリズムでロックン・ロールそのものの楽しさを伝えた。英米ではこのアルバムがデビュー盤。オーストラリアでは「ハイ・ヴォルテージ」がデビュー盤、「TNT」が2枚目のアルバムで、英米盤はこの2枚からの抜粋。「ロング・ウェイ・トゥ・ザ・トップ」「ジャック」「T.N.T.」収録。

2
DIRTY DEEDS DONE DIRT CHEAP

1976年。邦題「悪事と地獄」。オープニング曲は単語の語頭をDに合わせた名曲、ライブでの観客との掛け合いを想定したかのようなサビメロディーだ。「俺らはロッカー」はハード。当時、アメリカでは発売されなかったが81年に発売。

3
LET THERE BE ROCK

1977年。邦題「ロック魂」。アルバムタイトル曲と「ホール・ロッタ・ロージー」のかっこよさはどの世代でも分かる有名曲。

4
POWERAGE

1978年。ベースが交代。ボーカルのボン・スコットは1980年に亡くなるが、ボン・スコット在籍時のアルバムではやや地味なアルバムだ。ロックンロールでは地味であることが必ずしも否定的な意味にはならないが、スタジオ録音盤としては「地獄のハイウェイ」の前なのでやや影が薄くなっている。「リフ・ラフ」収録。

 
IF YOU WANT BLOOD YOU'VE GOT IT

1978年。邦題「ギター殺人事件・AC/DC流血ライヴ」。ライブ盤。日本ではラジオでスタジオ録音の「ジャック」がかかることは少ないが、このライブ盤を聞けば重要な曲であることが分かる。ボン・スコットのボーカルはライブでもロックン・ロールの勢いや衝動性を発揮している。

5
HIGHWAY TO HELL

1979年。邦題「地獄のハイウェイ」。アルバムタイトルのオープニング曲はフリーの「オール・ライト・ナウ」並みに耳に残りやすい。もともと覚えやすい曲が多いバンドだったが、ギターフレーズの単純さ、明快さとともに「地獄のハイウェイ」で頂点に達した。ローリング・ストーンズ、エアロスミス、グラムロックに代表される退廃性、ザ・フー、セックス・ピストルズ、ハードコアに代表される破滅型のロックンロールとは異なる新しいロックンロールを提示しているが、それは健全な若者像から大きく逸脱しないロックンロールと言える。従来のロックンロールを聞くことに躊躇する理由をAC/DCは大きく減らし、誰もが後ろめたさを感じずに聞けるハードなロックンロールとなったことで、ファンの数を大きく拡大した。ロバート・ジョン・マット・ランジがプロデューサーとなっている。

6
BACK IN BLACK

1980年。ボーカルのボン・スコットが死亡し、イギリスのロックンロールバンド、ジョーディーに在籍していたブライアン・ジョンソンが加入。前作に続き、アルバムタイトル曲が高い評価を受け、バンドの代表曲になった。その次の「狂った夜」もファンにはなじみが深い。ブライアン・ジョンソンはボン・スコットと同じく高い声で、粘度のあるパワフルな声だ。「地獄の鐘の音」収録。

7
FOR THOSE ABOUT TO ROCK(WE SALUTE YOU)

1981年。邦題「悪魔の招待状」。オープニング曲は大砲の音が入った迫力のある曲。「フィンガー・オン・ユー」はこのころのAC/DCにしてはポップなギターメロディーだ。「地獄のハイウェイ」や「バック・イン・ブラック」でも取れなかった全米1位をこのアルバムで取っている。

8
FLICK OF THE SWITCH

1983年。邦題「征服者」。ヒットした前3作に比べればインパクトのある曲がなく、ジャケットも地味だ。ハードロックがアメリカで流行し始めたが、チャート成績はあまりふるわなかった。それでも全米15位。サウンドは従来通り。

 
'74 JAILBREAK

1984年。オーストラリアでデビューしてから10年になるのを記念して、アメリカで未発表だった曲を5曲収録して発売したミニアルバム。ボーカルはボン・スコット。古風なブルース、ロックンロールをやっている。時代と場所は異なるが、60年代イギリスのヤードバーズや初期のビートルズもブルースやロックンロールに衝撃を受け、自分たちで演奏しながら個性を付けていった。AC/DCも同じ道を歩んだことが分かる。

9
FLY ON THE WALL

1985年。ドラムが交代。サビがメンバーによるコーラスで歌われることが多い。曲がアップテンポで、ハードロック全盛の雰囲気を感じさせる。

 
WHO MADE WHO

1986年。アメリカの有名作家スティーヴン・キングが監督する映画のサウンドトラック。9曲のうち3曲が新曲で、このうち2曲はインスト曲。アルバムタイトル曲は後の「サンダーストラック」に出てくるギターフレーズが出てくる。「チェイス・ザ・エイス」はこのころよく出てきた速弾きギタリストのような演奏だ。

10
BLOW UP YOUR VIDEO

1988年。ブライアン・ジョンソンの声が濁ってきた。雰囲気もメロディーも健康的だ。「ニック・オブ・タイム」「トゥーズ・アップ」はメロディアス。

11
THE RAZORS EDGE

1990年。ハードロックがアメリカで流行し、ギターの切れ味を思わせるタイトルとジャケット、オープニング曲のポップさでヒットした。2曲目も勢いを持続させ、3曲目はメロディアスなロックとなっている。

 
LIVE

ライブ盤。2枚組と1枚の2種類ある。2枚組は23曲収録されている。「レット・ゼア・ビー・ロック」はギターソロを含んで12分。2枚目はヒット曲が連続して並ぶ。ただ、曲ごとにフェードアウト、フェードインが繰り返され、ライブの熱気がややそがれてしまう。最後の「T.N.T.」は大砲の音が何度も響き渡る。

12
BALLBREAKER

1995年。ドラムが交代し、デビュー時のメンバーが復帰した。全体的にミドルテンポで、前作の「サンダーストラック」のようなヒット性のある曲が少ない。ロックンロールなので、曲調が大きく変わることはないが、曲を聞いたときの高揚感はそれほど大きくならない。プロデューサーはリック・ルービン。

13
STIFF UPPER LIP

2000年。80年代のような勢いのあるロックンロールではないが、ミドルテンポでも覚えやすいメロディーを次々と繰り出してくる。爆発力よりも安定感が感じられる。「セイフ・イン・ニューヨーク・シティ」はアップテンポ。「ホールド・ミー・バック」「カム・アンド・ゲット・イット」「スティッフ・アッパー・リップ」は親しみやすい。

14
BLACK ICE

2009年。邦題「悪魔の氷」。ロックンロールの基本を忠実に守り、これまでとは違う何かを出したりしない。どの曲もサビは覚えやすい。「暴走/列車」はタイトルとサビの言葉を合わせた方がよかったか。各曲の邦題はギターウルフのメンバーがつけている。「地獄の回転花火」はアリス・クーパーの「俺の回転花火」になぞらえたと思われる。「金にはあきたぜ」は「バック・イン・ブラック」、「ロックで決めろ!!」は「地獄のハイウェイ」を思い出す。「イナズマの五月」はブルースの有名曲「ストーミー・マンデイ」とはあまり関係ないようだ。

15
ROCK OR BUST

2014年。ギターが決まったフレーズを繰り返し、ボーカルはそのメロディーと関係ないメロディーで歌う「バック・イン・ブラック」の手法をアルバムの最初と最後に置き、「ロック・ザ・ブルース・アウェイ」のようなポップな曲とレッド・ツェッペリンの「胸いっぱいの愛を」のような曲を挟む。ローリング・ストーンズ、キンクス、レッド・ツェッペリンが